「夏天の虹~みをつくし料理帖」高田郁
みをつくし料理帖、シリーズ最新刊。
過去様々な苦難が訪れたが、料理人として今回がシリーズ最大、と思う。
いかに乗り越えるかが見せ場となっている。
同時に、シリーズの結末が再度確認された、と思う。
「二年前のことだ。わしはその女に、あさひ太夫を身請けするよう、入れ知恵したのだ。天満一兆庵を再建し、料理でひとを呼んで四千両の身請け銭を用意せよ、と。太夫にとって、幼馴染みに身請けされるのが何よりの吉兆だとな」
(中略)
「あれから二年だ。二年経つのに、目途が付くどころか、事態は悪くなる一方ではないか」
(中略)
「戯作者なんてぇのは、荒唐無稽な話をするもんだ。ありえねぇよ、あんたが太夫を身請けする、なんざ・・・」
(中略)
「けど、もし・・・・・・もしも本当に」
言いかけて、又次は何かを払うように頭を振る。
微かに、遠雷が聞こえた。
シリーズをずっと読んでいる方は、とっくにお気づきと思う。
登場人物の1人、この辛口で口の悪い戯作者は滝沢馬琴がモデル。
なお滝沢馬琴をモデルにした小説は何冊かあるが、私が思い出すのは梓澤要さんの次の作品。
「恋戦恋勝」は現在絶版、文庫本「ゆすらうめ」として入手可能。
これを読んだとき、日本の文壇は奥が深い、と感じた。
【ネット上の紹介】
想いびとである小松原と添う道か、料理人として生きる道か…澪は、決して交わることのない道の上で悩み苦しんでいた。「つる家」で料理を旨そうに頬張るお客や、料理をつくり、供する自身の姿を思い浮かべる澪。天空に浮かぶ心星を見つめる澪の心には、決して譲れない辿り着きたい道が、はっきりと見えていた。そして澪は、自身の揺るがない決意を小松原に伝えることに―(第一話「冬の雲雀」)。その他、表題作「夏天の虹」を含む全四篇。大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、“悲涙”の第七弾。