
「おれたちの青空」佐川光晴
先日読んだ「おれのおばさん」の続編。
次の3編が収録されている。
「小石のように」
「あたしのいい人」
「おれたちの青空」
「おれのおばさん」の主人公は、父親が服役したため、北海道の養護施設にやって来た陽介だった。
今回は、それぞれ語り手が異なる。
①「小石のように」・・・陽介のやって来た養護施設のルームメイト・卓也。
②「あたしのいい人」・・・養護施設を運営する陽介のおばさん・後藤恵子。
③「おれたちの青空」・・・陽介
どの作品も甲乙つけがたい面白さ。
P126(おばさんの略歴が語られる)
かあちゃんと令子に見送られて敦賀港から乗ったフェリーが小樽港に着き、北海道におりたったのが十九歳。芝居に夢中になって、あんなに苦労して入った北大を中退して、善男と一緒になったのが二十三歳。それから劇団魴鮄舎(ほうぼうしゃ)を旗揚げして、花が生まれて、善男と別れたのが二十七歳のとき。中学生ばかりを集めた児童養護施設をひらいたのが四十一歳で、それから七年がたったことになる。
P154
大人になってみてわかったのは、こんなにも子どもが気にかかるのかってことだ。自分が子供だったときは、とうちゃんやかあちゃんがあたしをどんなに心配してるのかなんていちいち考えていなかった。逆に言えば、それだけ安心していたってことで、その安心に乗って北海道まで飛び出せたんだと、今にしてあたしは思う。
【ネット上の紹介】
父親が服役中の陽介、虐待の記憶に苦しむスポーツ万能の卓也。札幌の児童養護施設「魴鮄舎(ほうぼうしゃ)」に暮らす仲間も高校受験を控え、悩める時期を迎えている。ある大雪の朝、卓也は「家出」を敢行するが…(「小石のように」)他全3篇。高校進学への迷いと未来への希望―陽介と卓也に旅立ちの時が来た。第26回坪田譲治文学賞受賞作『おれのおばさん』に続く感動の青春小説。
[出版社商品紹介]
『おれのおばさん』待望の続編。札幌の児童養護施設に暮す中学生たちも受験の時期。悩み迷い、新たな人生に踏み出してゆく。爽やかな感動が胸を打つ青春小説3篇収録。