【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「暗礁」(上下)黒川博行

2014年07月22日 20時20分18秒 | 読書(小説/日本)


「暗礁」(上下)黒川博行

先日、直木賞を受賞した黒川氏。
受賞作は、本作品と同様、「疫病神」シリーズ。

賭け麻雀の代打ちを務めたことが、事件の発端。
大手運送会社の利権。警察、ヤクザとの癒着。
佐川急便の事件が元になっている、と思われる。
途中で、舞台が沖縄に移動したり、楽しませてくれる。

このシリーズの面白さは、
ヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮の軽快な掛け合いにある。
ほとんど、漫才のような、当意即妙な応対だ。
大阪の馴染みのある地名が多数登場するのも魅力。
守口、門真、城北公園通り、都島・・・地図なしでも、位置関係が分かる。

P381
「おまえ、共依存いう言葉知ってるか。心理学の用語や」
「共依存・・・」
「酒食ろうて、博打して、あちこちに借金こしらえながら、女に食わしてもろてるクズがおるやろ。どうにもならん寄生虫と分かってても、女は男から離れようとせん。金の工面から身のまわりの世話まで献身的に尽くすことで、女は自分の存在価値を確かめることができる。殴られても蹴られても金をむしりとられても、女はクズ男についていくんや」
「男は女の稼ぎに依存してるけど、女も精神的に男に依存してる。そういうことですか」

まさか、ヤクザの桑原が心理学を語るとは思わなかった。
著者は、信田さよ子さんのファンか?→「共依存・からめとる愛」信田さよ子

面白さの割に、あまり知られていない作品のように思う。
もっと、読まれても良いシリーズ、と思う。

【ネット上の紹介】
警察組織と暴力団の利権の草刈場と化していた奈良東西急便。その社屋放火事件の容疑者に仕立て上げられた二宮に、捜査の手が伸びる。起死回生を狙う桑原は、裏金を管理する男を追って二宮とともに沖縄へ飛ぶが、二人を追い込む網はそこでも四方八方に張り巡らされていた―。超弩級のエンターテインメント大作。想定外の興奮と結末。