「中野京子と読み解く名画の謎 対決篇」中野京子
シリーズ4作目。
さっそく内容を紹介する。
上『ウルビーノのヴィーナス』ティツィアーノ
ウルビーノ公爵の依頼により描かれた。
寓意画では貞節を意味するイヌはすぐそばで眠ってしまっている。
下がマネの『オランピア Olympia』(1863年)。
P73
(前略)今の目で見ると両者に大した違いはないように思える。ところがこの二作品、発表時には片や絶賛され、画家は似たような絵の依頼を次々受けたのに対し、もう一つのほうは、醜いだの卑猥だのと物議をかもし、大スキャンダルとなって、画家はこれ以降、オールヌードを主題に選ぶことはなくなった。
P180
妻を描いた画家はさほど多くない。ましてや自分と妻がいっしょの画面におさまる夫婦像となると、これはもうよくよくの仲良しに限られる。さらにそらが優れた画家の優れた作品となれば、ルーベンスとレンブラントだけ、と言い切ってもいいのではないか。
『ルーベンスとイザベラ・ブラントの肖像』(1609年 - 1610年)
『すいかずらの木陰』結婚直後、ルーベンス32歳、妻イザベラ18歳
スイカズラの花言葉・・・「愛の絆」、蔦がからみあうことから恋人の象徴とされる。
『酒場のレンブラントとサスキア(放蕩息子)』、
P191
二枚の夫婦像を比べると、確かにルーベンスは破綻のない人生を歩みそうに見えるし、レンブラントの箍はゆるみすぎの気がする。しかし実際のところ、どちらがより幸福だったかはわからない。
三途の川について
P219
昔はその川を舟で渡るのに六文必要で、そのため棺に一文銭を六枚入れ、「地獄の沙汰も金次第」とはよく言ったものだなあと、しみじみしたらしい・・・ということも知っている(ちにみに真田家の家紋も六文銭)。(急に日本の話になるが、こういう雑学も嬉しい)
PS
ちなみに、表紙絵はオーストリア皇妃エリザベートとフランス皇妃ウージェニー
【関連図書】
【ネット上の紹介】
麗しの王妃が二人。壮絶な不幸伝説を残すのは…!?2枚の絵を比べることではじめて見えてくることがある!人気シリーズ第4弾。
[目次]
死んでもいい・ストレートvsゲイ―クリムト『接吻』/カラヴァッジョ『聖マタイの殉教』
パリのダンス場・昼の顔vs夜の顔―ルノワール『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』/ピカソ『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』
不肖の息子・金持ち父さんvs貧乏父さん―ゴッホ『画家の祖父の肖像』/セザンヌ『「レヴェヌマン」紙を読む画家の父』
飛翔する赤ん坊・神の御使いvs恋のいたずら者―ムリーリョ『無原罪の御宿り』/ヴィアン『キューピッド売り』
嫌われ老人・セクハラvs殺人―ジェンティレスキ『スザンナと長老たち』/ヴーエ『希望と愛と美に打ち負かされる時』
横たわる美女・絶讃ヌードvsスキャンダラス・ヌード―ティツィアーノ『ウルビーノのヴィーナス』/マネ『オランピア』
音楽家・天才vs無名―ドラクロワ『ヴァイオリンを奏でるパガニーニ』/ブリューゲル『農民の踊り』
映画を彩る絵・狂気vs打算―ブレイク『ネブカドネザル』/ミレイ『オフィーリア』
男の美貌・国王vs殉教者―リゴー『ルイ十五世の肖像』/レーニ『聖セバスティアヌスの殉教』
麗しの王妃・オーストリアvsフランス―ヴィンターハルター『オーストリア皇妃エリザベート』/ヴィンターハルター『フランス皇妃ウージェニー』〔ほか〕