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「春の嵐~剣客商売」(10)池波正太郎

2016年07月08日 22時06分36秒 | 読書(歴史/時代)


「春の嵐~剣客商売」(10)池波正太郎

10巻目を読んだ。

P55-56
 人間の生と死は、
「紙一重のところで、いつも、腹合わせになっているのじゃ」
 いつであったか秋山小兵衛が、杉本又太郎にそういったことがある。
 ゆえに、死にたいという気持ちと、生きたいという気持ちも腹合わせになっている。
 また、理性と本能も腹合わせだし、善と悪も、それこそ紙一重の差によって区別されていると、いえなくもないのだ。
(中略)
 人間という生きものは、このように矛盾をきわめている。
 なまじ、他の動物生物より頭脳が発達してしまったがために、生きものとしての本能や肉体と、ともすれば理性と感情との均衡がとれなくなってしまう。
 それが矛盾の原因であって、矛盾だらけの人間がつくりあげている世の中というものも、また当然、矛盾をきわめているのだ。