「お迎えに上がりました。」竹林七草
失業中の朝霧夕霞。
ふと立ち寄った公園の掲示板で、国土交通省の貼紙を見つける。
それは、「幽冥推進課・臨時職員募集」であった。
開発の妨げになる地縛霊を説得し、穏便に立ち退いていただく、と。
こうして朝霧夕霞の活躍が始まる。
なんで高速道路のインターってのは、どこもかしこもこの手のホテルが並んでいるのか?
それは、国策だ、と。
かつて、道祖神はどこでも見かけたが、これは男女和合の姿をした神だ、と。
P201
「道というのは人と国にとってなくてはならぬ交通の要だが、同時に悪い風とともに穢れを運び込むのもまた道なのだ。故に毛細血管のごとくこの国の隅々まで高速道路が張り巡らされる計画をみたとき、インター付近にかのホテル群を誘致してみてはどうかと提案したのが、幽冥推進課の前身たる『幽冥課』なのだ。かつてはどこの村境にも置かれていた道祖神を生きた人間の営みで代用することで、都心で生じた穢れが日本全土を汚染することを防ごうという呪的装置なのだ」
P204-205
一級河川とは、国土交通大臣が指定したもの。対して二級河川とは、各都道府県知事が指定した河川のことを指している。
真面目なトリビアも交えながら物語は進行する。
軽い息抜きとして楽しめる。
【ネット上の紹介】
入社式当日に会社が倒産し、路頭に迷った朝霧夕霞。失意の中立ち寄った公園の掲示板で、国土交通省の臨時職員募集の貼紙を見つけ、藁をも掴む気持ちで応募する。不可思議な試験を経て採用が決まったが、そこは「幽冥推進課」。国土開発の妨げになる地縛霊などを立ち退かせる不思議な部署で、同僚は全員妖怪。しかし好待遇に心惹かれた夕霞は、働くことを決意し…。あやかしお仕事小説、開幕!