思った以上に面白かった。
時代背景は南北朝・足利義満の頃。
室町時代を舞台にした作品は少ない。
このややこしい時代を分かりやすく、しかも面白く表現している。
ヒロインは南朝の帝の妹宮・透子、相手役は少年猿楽師・世阿弥、そして足利義満。
さらに、楠木正儀、細川頼之、斯波義将も登場。
よく調べている。秀逸、と感じた。
この著者、今後要チェック。
P153
「確かに皇女とは本来ひと目をさけて暮らすもので、こうして姿をさらしたり宮を抜け出たりするわたしは、少しだけ皇女らしくないかもしれないわ。でも、考えてみてほしいのだけど、昔から今日までに、一体何人の皇女がいたと思って?その数えきれないほどの皇女の誰一人として、わたしのように志を持って外にとび出した者がいないと言えるかしら。そんなことは、ないはずよ。単に話が伝わっていないだけで、きっと一人か二人、いえ十人くらいは、絶対にいたと思うわ」
【疑問】
吉野から京都まで2日で来た、と書かれているが、速すぎないか?
約100キロとして、1日25キロとしても、4日掛かる。
荷車に乗せてもらったとあるが、それでも速いように思う。
【おまけ】
比較的最近読んだ室町時代を舞台にした作品といえば、「室町無頼」を思い出す。
【ネット上の紹介】
京と吉野に二人の帝が存在した、南北朝の時代。南朝の帝の妹宮・透子は、北朝に寝返った武士・楠木正儀を連れ戻すべく、乳母と二人きり、吉野から京へと乗り込む。京についたとたん人買いに攫われてしまった二人を救ってくれたのは、猿楽師の美少年・世阿弥と、透子たちの宿敵である足利義満で…。世間知らずの姫君が混迷する時代の中で見たものは。瑞々しい筆致で描く書き下ろし時代小説。