「ヒマラヤ 生と死の物語 奇跡の生還と遭難の悲劇」池田常道
池田常道さんは前作で「現代ヒマラヤ登攀史」を上梓されている。
「現代ヒマラヤ登攀史」は、盛りだくさんに情報が詰まっている。資料としての価値あり。
一方本作は、ヒマラヤにおける印象的なエピソードを掘り下げて詳細に書いてある。
読んで面白いのはこちらのほうである。
P4-5
生死の境目は、とくにヒマラヤのような極限の環境の下では、文字どおり紙一重に過ぎない。落ち度はなかったのに悲惨な結果に終わったもの、失敗を重ねてなお幸運な生還を果たしたもの、ふたつが混在している。どちらがいいのか悪いのか、そんな判定はしていない。
ただ、そこに至ったプロセスを、資料に基づいて、できるだけ忠実に再現しようと考えた。
P19
前回最高到達点まで登ったフィンチは呼ばれなかった。彼が英国本土ではなく、植民地(オーストラリア)の出身地だったからだといわれる。(登山とナショナリズムの関係は興味深いテーマだ。なんだかんだ言って、登頂者は国旗を立て、あるいは持って、写真を撮る)
P43
しかし万一、二人が初登頂して帰還したとしても、当時のドイツ社会はドイツ人以外の成功を、もろ手を挙げて喜んだかどうか。後年のブールやメスナーの例を思うとはなはだ疑問である。(メスナーはイタリア・南チロル出身だが、そこはドイツ語圏なのでドイツ登山隊に呼ばれる。ご存じのように、ナンガ・パルバットで弟を失い、その時の対処で十数年のマラソン裁判となる。91年ヘルンリヒコッファーが75で死去したのち遺族と和解。メスナーの名誉は回復され「赤い信号弾」も復刊。さらに「裸の山」も刊行。P109を読んでみて)
【おまけの感想】
本書が興味深いのは、内容もさることながら、面識ある方が登場すること。
Mさんとは、柏木で一緒に酒を飲んだし、エピソードも直接聞いた。
Eさんには、城ヶ崎で会った時、伊豆の観光図書をいただいた。「観光好きでしょう」、と。
【参考図書】
![クリックして画像を拡大](http://www1.e-hon.ne.jp/images/syoseki/ac/03/33234003.jpg)
「現代ヒマラヤ登攀史8000メートル峰の歴史と未来」
【誤植】
P231
アンデスヤカフカスなど
↓
アンデスやカフカスなど
(校正者見逃した?)
【ネット上の紹介】
登山史に刻まれた命の軌跡。
マロリー、アーヴィンの謎―エヴェレスト 1924
ジルバーザッテルの敗走―ナンガ・パルバット 1934
人類初の栄光の陰に―アンナプルナ 1950
高所キャンプからの脱出―K2 1953
メスナー兄弟の下降―ナンガ・パルバット 1970
人食い鬼からの脱出―バインター・ブラック 1977
見捨てられた攻撃隊―ミニヤコンカ 1982
日本人無酸素登頂の葛藤―エヴェレスト 1983
ブラックサマーの生還者―K2 1986
六千メートルの宙吊り救出作戦―トランゴ・タワー 1990
公募登山隊の破綻―エヴェレスト 1996
北壁からの生還―ギャチュン・カン 2002
七四〇〇メートルの国際救助隊―アンナプルナ 2008
読んで面白いのはこちらのほうである。
P4-5
生死の境目は、とくにヒマラヤのような極限の環境の下では、文字どおり紙一重に過ぎない。落ち度はなかったのに悲惨な結果に終わったもの、失敗を重ねてなお幸運な生還を果たしたもの、ふたつが混在している。どちらがいいのか悪いのか、そんな判定はしていない。
ただ、そこに至ったプロセスを、資料に基づいて、できるだけ忠実に再現しようと考えた。
P19
前回最高到達点まで登ったフィンチは呼ばれなかった。彼が英国本土ではなく、植民地(オーストラリア)の出身地だったからだといわれる。(登山とナショナリズムの関係は興味深いテーマだ。なんだかんだ言って、登頂者は国旗を立て、あるいは持って、写真を撮る)
P43
しかし万一、二人が初登頂して帰還したとしても、当時のドイツ社会はドイツ人以外の成功を、もろ手を挙げて喜んだかどうか。後年のブールやメスナーの例を思うとはなはだ疑問である。(メスナーはイタリア・南チロル出身だが、そこはドイツ語圏なのでドイツ登山隊に呼ばれる。ご存じのように、ナンガ・パルバットで弟を失い、その時の対処で十数年のマラソン裁判となる。91年ヘルンリヒコッファーが75で死去したのち遺族と和解。メスナーの名誉は回復され「赤い信号弾」も復刊。さらに「裸の山」も刊行。P109を読んでみて)
【おまけの感想】
本書が興味深いのは、内容もさることながら、面識ある方が登場すること。
Mさんとは、柏木で一緒に酒を飲んだし、エピソードも直接聞いた。
Eさんには、城ヶ崎で会った時、伊豆の観光図書をいただいた。「観光好きでしょう」、と。
【参考図書】
![クリックして画像を拡大](http://www1.e-hon.ne.jp/images/syoseki/ac/03/33234003.jpg)
「現代ヒマラヤ登攀史8000メートル峰の歴史と未来」
【誤植】
P231
アンデスヤカフカスなど
↓
アンデスやカフカスなど
(校正者見逃した?)
【ネット上の紹介】
登山史に刻まれた命の軌跡。
マロリー、アーヴィンの謎―エヴェレスト 1924
ジルバーザッテルの敗走―ナンガ・パルバット 1934
人類初の栄光の陰に―アンナプルナ 1950
高所キャンプからの脱出―K2 1953
メスナー兄弟の下降―ナンガ・パルバット 1970
人食い鬼からの脱出―バインター・ブラック 1977
見捨てられた攻撃隊―ミニヤコンカ 1982
日本人無酸素登頂の葛藤―エヴェレスト 1983
ブラックサマーの生還者―K2 1986
六千メートルの宙吊り救出作戦―トランゴ・タワー 1990
公募登山隊の破綻―エヴェレスト 1996
北壁からの生還―ギャチュン・カン 2002
七四〇〇メートルの国際救助隊―アンナプルナ 2008