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「へぼ侍」坂上泉

2019年10月14日 17時28分56秒 | 読書(歴史/時代)
「へぼ侍」坂上泉

面白かった。
今年のベスト5に入る作品、と思う。
第26回松本清張賞受賞作。

錬一郎は士族の生まれ、17才。
しかし、明治維新で零落した為、幼い頃から商家に丁稚奉公している。
西南戦争が勃発し、元士族の「壮兵」徴募を知り、応ずる。
その軍隊は、元賊軍くずれのくせ者ばかり。
時代のうねりを背景に、少年の成長を描くエンタテイメント。

P36
「あの、ここの皆様は、士族なので・・・・・・?」
 先ほどの松岡も目の前の沢良木も、奥にいる男たちも、どれも皆、真っ当な士族というよりは、ある者は国定忠治や清水次郎長の同輩であるか、そうでなければどこぞの商売人や学校の教師のような、どう見ても戦働きという連中ではない。
「せやなあ。あては京の青侍(公家仕えの武士)でおましたえ」
「四条流、いうのんは?」
 てっきり、古式ゆかしい剣術流派なのかと思いきや、
「お公家はんにお仕えしとった頃に、四条流包丁道を習うたもんやから、それでおま」

【感想】
感心した点が3つ。
①詳細な時代背景が語られている。
相当、資料を読み込んでいると思う。
それもそのはず、東大日本史研究室で近代史を専攻されている。
②さらに、各地の方言が駆使されていてみごと。
関西弁も出身地により使い分けされている。
③注目すべき最後のポイントはサービス精神が旺盛なこと。
敢えて触れないが、有名人多数出演。
おっ!、と思うこと間違いなし。

【おまけ】
それぞれの登場人物が、兵士として活躍するが、戦闘そのものより、自分が生計を立ててきた料理や算術で役立つ。
その辺りのところが、読んでいて楽しいツボである。

【ネット上の紹介】
第26回松本清張賞受賞作魅力的なキャラクターを選考委員全員が絶賛!西南戦争を舞台に落ちこぼれ兵士の活躍を描く痛快歴史エンタテイメント開幕!!【内容紹介】大阪で与力の跡取りとして生まれながら、家が明治維新で没落したため幼いころより商家に丁稚奉公に出された錬一郎は、それでも士族の誇りを失わず、棒きれを使って剣術の真似事などをして周囲の人間から「へぼ侍」と揶揄された。1877年、西南戦争が勃発すると官軍は元士族を「壮兵」として徴募、武功をたてれば仕官の道も開けると考えた錬一郎は意気込んでそれに参加する。しかし、彼を待っていたのは、料理の達人、元銀行員、博打好きの荒くれなど、賊軍出身者や異色の経歴の持ち主ばかりの落ちこぼれ部隊だった――。綿密な時代考証のうえに大胆なストーリー展開を描き出す、時代小説の新鋭の誕生です。