「人名の世界地図」21世紀研究会/編
面白くて、役に立つ。
小説を読んだり、ドラマを観たときに、人物のルーツを推測できる。
P4
すぐにユダヤ人だとわかるように、植物、金属名しか使わせなかったのだ。
(ゴールドマン、ゴールドバーグ、リリエンタールなど。金属・植物以外にも、フリードマン、グリーンバーグ、ホフマン、レヴィ、ネイサン、ロス、ロスチャイルド、ルービンスタイン)
P52
ピューリタンたちは、とりわけこの罪(ダヴィデ王の不倫)を忌み嫌ったため、アメリカの初期の移民などはディヴィッドという名前を子供たちにほとんどつかなかった。
P60
マイケルという名前がアイルランド人に多かったことから、その愛称のミックやミッキーはアイルランド人をさす俗称、ときに蔑称となった。(中略)
アイルランドを代表するもうひとつの名前、パトリックの愛称も、侮辱的にもちいられることが多かった。
パトリックの愛称パディやパットは、ミッキーがアイルランド人の貧しさをあげつらう名前であれば、かんしゃくもちというイメージと結びついている。また警官や消防士となったアイルランド系移民が多かったため、パディは警官をさす俗語となった。
P61
ジョンは、オランダではヤンとなる。ニューイングランドに入植したオランダ人をイギリス人がからかってよんだヤンキー(オランダ野郎)は、転じてアメリカ北部の住民を、さらにアメリカ人全体をさす俗称となった。
P142
アメリカのブリジットはさっぱり人気がない。理由は、19世紀半ばにアイルランドを襲った空前のジャガイモ飢饉にある。困窮した農民百万人が移住したアメリカでは、ブリジットという名前がアイルランド人のお手伝いさんの代名詞のようになってしまったのだ。
P150
ミッキーは、大天使ミカエルに由来するマイケルという名前の愛称だ。マイケルはパトリックとともに、アイルランドの男性名の典型とされる。
そして、このミッキーという愛称は、移住先のアメリカでも、実はアイルランド人への蔑称だったのだ。
ミッキーという名を思いついたのはディズニーの妻だが、映画でもミッキー・マウスの声優をつとめたディズニーは、チビのネズミ、ミッキーに自分の姿を重ね合わせていたのかもしれない。
P191
キリスト教が国教となったローマ帝国では、ユダヤ人の生活はしだいに制限されていく。ローマ帝国滅亡後の中世でも、ユダヤ人はキリスト教徒から蔑まれ、教会がキリスト教徒に禁止していた金融業を強制されたり、ペストはユダヤ人が井戸に投げ込んだ毒が原因だというような偏見に苦しめられた。
タイではお互い愛称で呼ぶ
P247
女性の愛称プン(ミツバチ)ちゃん、クン(エビ)ちゃん、メーオ(猫)ちゃんや、男の子チャーン(象)君、タオ(カメ)君、ケン(上手)君などは、愛称としてさほど違和感はない。
ネット上の紹介】
バーンスタイン、カラヤン、ニュートン―私たちがふだん何気なく聞きながしている人名のなかには、民族、宗教、英雄伝説の長い歴史が眠っている。またときには、「醜い頭」「曲った鼻」というあだ名が、なぜかそのままケネディ、キャメロンという姓になってしまうこともあった。音楽家のバッハはどうして「小川さん」なのか、シャガールという姓にこめられた秘密とは何か?三千年にわたる人名の謎を解き明かすタイムカプセルが、いま開かれる。
第1章 名前にこめられた意味
第2章 聖書がつくった人名の世界地図
第3章 ギリシア・ローマ―失われたものの伝説
第4章 花と宝石に彩られた女性名の反乱
第5章 コナー、ケヴィン―ケルト民族は生きている
第6章 ヴァイキングたちが運んだ名前
第7章 名前でも迫害されたユダヤ民族
第8章 姓氏でわかった中国三千年史
第9章 先祖の名とともに生きる朝鮮半島の人たち
第10章 アジア・アフリカの人名地図
第11章 黒人奴隷に押しつけられた名前
大索引 人名は「意味」の宝庫