「風俗という病い」山本晋也
P13
歌舞伎町の標語に「清く正しくいやらしく」というのがあるのですけど、今はそれを政府が公然とやっているのだから、全く、いやらしいったらない。
P15
正規の届け出店だけに限ると、デリヘルが圧倒的なのです。なにしろ、セブンーイレブンの約1万8572店舗(2015年度)をも凌駕しているのだから、凄い。(風俗って、コンビニより需要があるの?!・・・風俗産業の市場規模は6兆円、とNHKで言ってたからなぁ)
P78
パンパンとは、日本人の片言英語のことを米兵たちがパングリッシュと言っていたことにちなみ、パングリッシュを話すことからそう呼ばれるようになったとか。
昭和32年4月1日、売春防止法が施行
P86
なぜ買春禁止法ではなく、防止法となったのかというと、ここにまだまだ貧しく、悲しき世情が関係している。昭和30年の厚生省の「売春白書」によると、この当時、全国に公娼が約50万人いたことが分かります。冷害などによる不漁で、食うや食わずの家族が続出した北海道では、やむをえずの人身売買があふれ、その数は全国で1万5000人を上回ったとか。そのため人身売買事件対策要綱が救済策として、定められたりしていた。
防止法には「何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない」と書かれ、違法な行為であることを明確にしている一方、違反しても処罰を伴わない訓示規定止まりになっています。そこにはやむを得ず、売春という職業に就いている女たちへの配慮があるのです。高度経済成長がはじまる頃とはいえ、日本はまだまだ貧しかった。そういうことを市川(房枝)さんの弟子でもあった青島幸男から、私は聞いています。
昭和39年、東京オリンピック、「夜も五輪」が繰り広げられていた
P94
「銀座のクラブが面白いってんで、夜ごとアフリカの選手がぞろぞろ通っているんですって。店の計らいで、全部タダなんだとか」と、隣で、潜入取材についてきたマスコミの仲間が言います。
「なんとも粋な計らいじゃないか」
「粋な計らいといえば、コンドームですよ。日本製のがそこら中に置いてあり、使い放題で、そこら中でやっているらしいです」
P165
ハワイの真珠湾に行ったときは、日本軍の奇襲で犠牲になった米兵の遺族たちが墓参りしている場面に遭遇しました。
師匠(立川談志)はといえば麦わら帽子に短パン、サンダルという出で立ち、鋭い視線が突き刺さり、「観光気分で来るんじゃねえ」「ジャップが」「イエロー・モンキーが」といった言葉が浴びせられているのが分かりました。
「晋也、こいつらに何か言い返せ!」
しばし逡巡の後、私は一歩前に出てこう叫んだ。
「ノーモア、ヒロシマ!」
沈黙。そして遺族たちの顔つきが変わっていく。やがて、深いしわを震わせた老女が集団から近づいてきて、言いました。
「嗚呼、お互い不幸だったのよね。全く戦争ってやつは」
【ネット上の紹介】
人間の性欲ほど多様で面白いものはない。約半世紀、夜の街を歩き続けた著者が「風俗大国」ニッポンのエロを丹念にリポート。そこには、ハプニングバーで暮らす若い女性やキレイになりたがる中年男性、浮気防止のために妻に「貞操帯」をつける夫もいれば、愛撫され身悶えする妻を見て興奮する夫もいた。まさに「死ぬまでセックス」、性に対する男女の欲情は尽きることがない。「風俗」にまつわる病いをとことんまで覗き見た一冊。
第1章 2020年への『トゥナイト』(昼下がりの情事
酔狂の求道者たち ほか)
第2章 苦渋に満ちた青春の性(最初の風俗嬢
マッチ売りのおばさんと、スケッチ屋のお姐さん ほか)
第3章 狂乱と泡沫の性(パンティを脱いだ女子大生たち
援交少女たちのDNA ほか)
第4章 変革と混沌の性(熱海芸者の秘技
満たされぬ青春の「ホン水」 ほか)
第5章 老齢社会の性と生(鴬谷
バイブバーの女たち ほか)