「「身体を売る彼女たち」の事情」坂爪真吾
P82
絵美さんは二十代の時、過干渉の親から逃げ出す形で家を飛び出し、性風俗の仕事で生計を立てるようになった。(中略)
今のデリヘルの仕事は、絵美さんにとって身体的・精神的にかなりつらいという。それでも実家で親の言いなりの生活をするより、デリヘルで働きながらひとり暮らしをする生活の方がマシだと考えて、どうにかこれまで頑張ってこれた。
P96
坂口成美さん(37歳)は、二十代後半で離婚して以来、性風俗の仕事で生計を立ててきた。しかし加齢に伴ってデリヘルで思うように稼げなくなり、家賃を滞納するようになった。
P98
鈴木良子さん(41歳)は、住んでいたアパートを家賃滞納で追い出され、ネットカフェのナイトパックを利用しながらデリヘルで働いていたが、いよいよ手持ちのお金が底をつき、役所で生活保護を申請することにした。
P103
日本の社会保障制度は、終身雇用の正規雇用者とその家族を基準にして設計されているため、非正規や派遣などの断続的な雇用や職業移動を長年続けている人、および未婚や離婚などの理由で1人暮らしをしている人は、社会保障の恩恵を十分に受けることができない。
待機部屋のドアの張り紙
P137
・鏡で自分の姿を見ましたか?
・女性にとって、一番のメイクは笑顔です。
P224
生活保護を申請すると、資力調査や扶養照会が行われ、個人の収入や預貯金、資産、家族関係、就労能力まで全てが丸裸にされる。(中略)
社会的に丸裸にされるよりも、性風俗の仕事で物理的に裸になり続ける方がマシだと考える人がいても不思議ではない。
P232
自殺の背景には、平均4つの危機要因が重なり合っていると言われている。失業という1つの困難には耐える事ができたとしても、その上に多重債務や家庭不和、病気やうつ状態などが重なり、困難の合計が4つを超えると、自殺のリスクが高まるという。
【ネット上の紹介】
なぜ彼女たちは、JKリフレやデリヘルで働くのだろうか?風俗で働く女性のための生活・法律相談窓口「風テラス」に寄せられる彼女たちの悩みは背景には、若者の貧困、DVや虐待などの家庭問題、ワーキングプア、見えづらい障害や病気など、複雑な社会課題が絡み合っている。そうした課題を解決するために彼女たちが選んだJKリフレやデリヘルの世界には、一度足を踏み入れると抜け出しにくい構造がある。自助と公助の狭間に落ち込んでしまった彼女たちが集う「いびつな共助」としての性風俗の世界を描き出し、自己責任論と感情論に満ちた社会に風穴をあける一冊。
第1章 「JKリフレ」という駆け引きの世界(「いくらで」「どこまで」やるかは、私が決める
「少女」と「大人」の狭間にある金脈 ほか)
第2章 「風俗嬢」はこうして生まれる(生活保護はデリヘルに勝てない?
家族から逃れるために ほか)
第3章 デリヘルの居心地がよい理由(彼女たちを守る「見えない」事務所
「助け合い」の果てに)
第4章 性風俗で働くことの本当の怖さ(共助の中で生みだされる落とし穴
自分も外の世界も透明になる
「すべて現金化できる」という魔力
消えない過去から逃げられない ほか)
第5章 ライ麦畑のサバイバル・ガイド