「島へ免許を取りに行く」星野博美
文庫化されたのを機に、再読した。
この作品は、一番最初に読んだ星野博美作品である。
これがきっかけとなり、星野博美作品を読み進めることになった。
星野博美作品の中で、最も読みやすく、親しみやすい内容、と思う。
それと言うのも、長崎の五島自動車学校で免許を取得するために奮闘する、いたってシンプルな内容だから。(まさに、タイトルどおり)
P204
私が旅の信条としていることだが、世界のどこにもおもしろくない場所など存在しない。自分が行先に選んだ場所をおもしろがれないとしたら、それは楽しむ努力が足りない自分の責任なのだ。想定と違うのなら、その想定をチューニングするべきだ。それでもどうしても楽しめないというなら、立ち去ればいい。通過者にはその自由があるが、選んだ場所を批判する権利はない。
他の作品を読んだ後で改めて読み直すと、見えてくるものがある。
この時期は、一人暮らしをやめて、戸塚銀座の実家に戻っていたんだな、とか。
この時既に、「みんな彗星を見ていた」の為に、資料を集めて、現地でも調べていたんだな、とか。
現地調査の時に、車があったら便利なのにな、と感じただろう、とか。
だからこそ、因縁のある長崎で取得しようと、強く決意したんだろう、とか。
改めて感慨深い作品である。
「島へ免許を取りに行く」星野博美
【ネット上の紹介】
愛する猫をなくしたうえに、人間関係はズタズタ。いやな流れを断ち切りたい。日常に小さな風穴を開けたくて向かったのは、島の小さな自動車学校。そこは、山羊や犬やにわとりがいて、馬にも乗れる牧場のような学校だった!人生の示唆に富む運転教習に悪戦苦闘しながらも過ごした数週間。人や動物や車とのふれ合いから見えてきた風景は?読めば、新しい何かに挑戦したくなる名作エッセイ。
[目次]
第1章(それはにわとりですか?
自動車学校で馬に乗る?? ほか)
第2章(新しい生活
初めて車を運転する ほか)
第3章(世界が逆転する
不思議な教科書 ほか)
第4章(車脳
逃避行 ほか)
第5章(仮免
路上デビュー ほか)
第6章(五島は「出る」
それぞれの旅立ち ほか)
第7章(免許取得
地獄篇 ほか)