「昭和史 戦後篇」半藤一利
読み返し。
P71・・・作家の高見順さんが次のように怒っている
「新聞は、今までの新聞の態度に対して、国民にいささかも謝罪するところがない。詫びる一片の記事も掲げない。手の裏を返すような記事をのせながら、態度は依然として訓戒的である。(後略)」
P158・・・戦争放棄
一説に、幣原(喜重郎)さんが「今後はこういう平和日本にしたい」ということをマッカーサーに言い、感動したマッカーサーが「それはすばらしい。原子爆弾などという殺人兵器でもって戦争を続けていれば人類は滅亡する。日本が率先して軍備を全部捨て、戦争をしないと世界中に宣言するのはすばらしいことだ」と賛同し、それを新しい憲法の中に盛り込んだ――とされてます。いや、逆に幣原さんではなくマッカーサーから言い出したのだという説もあります。
P199・・・GHQ案・新憲法について、国会でのやりとり
リベラル派だとか社会党には「GHQ案で日本の国はよくなる」と喜ぶ人もいました。面白いのは、共産党がなぜか「軍隊を持たない」「戦争放棄」の条項に猛反対をしたんです。これでは国民の権利である自衛戦争も認められないではないか、と。今の共産党とはずいぶん違いますね。
P220
ではどうやって、A級戦犯の28人を決めたのか?(中略)検事団にとって非常に役に立った人物が2人いて、1人が自身もA級戦犯である内大臣の木戸幸一さん、もう1人がかつての兵務局長の田中隆吉さんです。
P228
さて、被告席に並んだA級戦犯28人を見ますと、なんと陸軍軍人が15人もいます。それもほとんど軍政方面つまり陸軍省関係で、参謀本部関係はきれいに除外されています。
P245
東京裁判の意味
①日本人の現代史を裁くため、裏返せば、連合国のやってきたことが正義だったと再確認するためだ、と。
かつて植民地をさんざんつくってきた帝国主義は19世紀の話であって、それを20世紀においてやった日本の考え方は侵略的性格をもつ間違った戦争観であった、と。
②自国民を納得させるための一種の復讐の儀式
③何も知らされていなかった日本国民に事実を教え、侵略的軍閥の罪状を明らかにし、啓蒙すること。
P536
47年(1972)5月15日、沖縄の施政権が日本に完全に返還され、沖縄県が発足しました。戦後26年たって、ようやく1道1都2府42県が「43県」になったのです。
【ネット上の紹介】
授業形式の語り下ろしで「わかりやすい通史」として絶賛を博した「昭和史」シリーズ完結篇。焼け跡からの復興、講和条約、高度経済成長、そしてバブル崩壊の予兆を詳細にたどる。世界的な金融危機で先の見えない混沌のなか、現代日本のルーツを知り、世界の中の日本の役割、そして明日を考えるために。毎日出版文化賞特別賞受賞。講演録「昭和天皇・マッカーサー会談秘話」を増補。
[目次]
天皇・マッカーサー会談にはじまる戦後―敗戦と「一億総懺悔」
無策の政府に突きつけられる苛烈な占領政策―GHQによる軍国主義の解体
飢餓で“精神”を喪失した日本人―政党、ジャーナリズムの復活
憲法改正問題をめぐって右往左往―「松本委員会」の模索
人間宣言、公職追放そして戦争放棄―共産党人気、平和憲法の萌芽
「自分は象徴でいい」と第二の聖断―GHQ憲法草案を受け入れる
「東京裁判」の判決が下りるまで―冷戦のなか、徹底的に裁かれた現代日本史
恐るべきGHQの急旋回で…―改革より復興、ドッジ・ラインの功罪
朝鮮戦争は“神風”であったか―吹き荒れるレッド・パージと「特需」の嵐
新しい独立国日本への船出―講和条約への模索
混迷する世相・さまざまな事件―基地問題、核問題への抵抗
いわゆる「五五年体制」ができた日―吉田ドクトリンから保守合同へ
「もはや戦後ではない」―改憲・再軍備の強硬路線へ
六〇年安保闘争のあとにきたもの―ミッチーブーム、そして政治闘争の終幕
嵐のごとき高度経済成長―オリンピックと新幹線
昭和元禄の“ツケ”―団塊パワーの噴出と三島事件
日本はこれからどうなるのか―戦後史の教訓
昭和天皇・マッカーサー会談秘話