「戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇 」堀川惠子
広島で全滅した「桜隊」の悲劇について書かれているが、
そこに至る経緯、戦時下の演劇人たちの青春群像を描いている。
当局の執拗な検閲、拷問も詳細に書かれているが、
それだけ演劇の力を恐れていたのかもしれない。
P142
たとえば「共謀罪」や「扇動罪」では複数の人間が集まって謀議することが必要だ。だが「目的遂行罪」では、党の信条や教義に協力的であるというだけで、個人を検挙することができた。それを判断するのは当局である。
P210
昭和19年以降、映画界は撮影のための原材料不足にも悩まされた。
(中略)
各社が制作できる映画は年4本までに減らされた。検閲を通るのは戦場の兵隊が主役の戦争映画ばかりとなり、女優たちの出番はなくなっていく。
本書を著した動機を次のように書かれている。
P358
夢を抱くこと、これぞと思う仕事に没頭すること、理想を追い求めること、人を愛すること、生きること、そんな当たり前のことすべてを戦争は奪い去った。言葉には言い尽くせぬ彼らの無念を胸に、八田元夫という演出家の目を借りて本書の執筆にかかった。
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【ネット上の紹介】
演劇界を襲った検閲、蹂躙、拷問の時代。被爆直後の広島へ圧倒的な描写で迫る。舞台で輝きつづけた魂の交錯。
【目次】
ある演出家の遺品
青春の築地小劇場
弾圧が始まった
イデオロギーの嵐
拷問、放浪、亡命
新劇壊滅
「苦楽座」結成
彰子と禾門
眠れる獅子
戦禍の東京で
広島
終わらない戦争
骨肉に食い込む広島
そして手紙が遺された