【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「おれのおばさん」佐川光晴

2013年10月06日 21時01分38秒 | 読書(小説/日本)

「おれのおばさん」佐川光晴

主人公は東京の名門中学に通っている優等生・陽介。
父が愛人に貢ぐため会社の金を横領し、逮捕される。
家庭は崩壊し、陽介は北海道にある母の妹が運営する養護施設に預けられる。
(これがタイトルの「おばさん」である)
このおばさんがユニークな方で、北大医学部に入りながら、演劇をするために退学した過去がある。
環境の変化に戸惑いながらもたくましく順応していく。
そんな陽介と仲間達の成長を描いた物語。
第26回坪田譲治文学賞受賞作。

とても面白かった。
名門中学に通っていたので、転校先で7科目のテスト全てで満点を取る。
それまでトップの座を維持していた少年に反感を持たれて対立する。
そのあたりからどんどん面白くなる。
著者は児童養護施設や行政についてよく調べている。
とてもリアリティがあり、物語に奥行きが出ている。
(主人公が優等生過ぎるのが気になるけど)

なおこの作品はシリーズ化されていて、全部で3冊出版されている。(2013.10月現在)
おいおい読んでいこうと思う。

【ネット上の紹介】
ある日突然、父の逮捕を知らされた陽介。父が横領した金を返済するため、陽介は都内の名門中学を退学し、母の姉が運営する札幌の児童養護施設、魴〓(ぼう)舎に入ることになる。急激な暮しの変化に当惑しながらも、パワフルなおばさんと個性豊かな仲間に囲まれて、陽介は“生きる”ことの本質を学んでゆく。ときに繊細で、たくましい少年たちの成長を描いた青春小説。第26回坪田譲治文学賞受賞作。

「林檎の木を植える」志村志保子

2013年10月05日 21時34分59秒 | 読書(マンガ/アニメ)

「林檎の木を植える」志村志保子

志村志保子さんと言えば、「女の子の食卓」シリーズ。
料理がテーマのオムニバスで、レベルの高いシリーズだった。(全8巻)
その志村志保子さんが長編を描いた。
気になるのでさっそく読んでみた。

雑誌では隔月で6回連載、つまり1年がかり。
最後の方はページが足りなくなってあせったようで、
最終回はページを増やしてもらい、
さらに単行本化にあたり、3ページ追加、とのこと。

本作品のテーマは「友情」。
最初、このストーリーはどこへ流れていくのだろう、って感じで、
予想のつかない展開。
でも、最期は見事な着地。
伏線と技巧テクニックのレベルが高い。
ラストは泣かせるが、志村志保子作品なので、あざとさを感じさせない。
よく出来ている。

↑「クッキー」連載H24.11月号-H25.9月号

【ネット上の紹介】
高3の夏、みいの幼なじみ・真由果がバス事故で死んだ。普段乗らないバスになぜ乗ったのか、わからないまま…。大学生になったみいは、引っ越し先で隣人・槙に出会う。槙はなぜか真由果に関する秘密を知っていて…? みいと槙が出会ったことで、死んだ真由果を巡る、真実がめくれはじめる──。

「99%対1%アメリカ格差ウォーズ」町山智浩

2013年10月03日 21時11分54秒 | 読書(英・米)

「99%対1%アメリカ格差ウォーズ」町山智浩

著者はアメリカ在住の映画評論家。
映画だけでなく、政治ネタにも詳しい。
ニュースで伝わってくる裏にあるものを、素人にも分かりやすく説明。
これが出来る方は少ない。池上彰さんクラス。
さらに、矛盾をつっこんで笑いにしているのがすばらしい。

P13 
ニュー・ディールとは、トランプでのカードの配り直しのことで、富の再分配によって、開いてしまった貧富の格差を減らして、全員をスタート地点に並ばせようとするニュアンスがある。つまりニュー・ディールは資本主義と社会主義の折半のような「社会自由主義」である。リベラリズムとは本来、「自由主義」という意味だが、現在のアメリカでは、リベラルというとこの「社会自由主義」を意味するようになった。

P170
カク博士はサンノゼ生まれの日系人だ。「活断層のあるカリフォルニアになぜ原子力発電所を建設したのでしょう?」というウーピー・ゴールドバーグの素朴な疑問に博士は「ファウストの取引です」と答えた。
「ファウストが現世の夢をかなえるために悪魔に魂を売ったように、豊かな生活に必要なエネルギーを得るためにリスクを冒したのです」

P228
アメリカの上位わずか1%の富裕層が国全体の富の40%を独占しているというデータがあり、「我々は99%だ」は「国民の大半を占める“持たざる人々”である」という意味になる。

モルモン教の教祖はジョセフ・スミス。
なぜモルモン教徒は他のキリスト教徒から浮いているのか?
P260
モルモンと他のアメリカ人が対立した最大の理由は一夫多妻だ。もともとモルモンの教義には一夫多妻はなかったが、スミスが密かに女性を複数抱えていることが発覚してから教義を修正した。殺された時には少なくとも20人の妻がいて、そのうち2人は14歳の少女だったという。
(現在は、一夫一婦制)

【参考リンク】
町山智浩『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』 

【ネット上の紹介】
「貧乏人に医療保険を与える奴は殺せ!」巨大資本に操られるインチキ政治運動、デマだらけの中傷CMをぶつけ合う選挙戦、暴走する過激メディアまで、日本人が知らない「アメリカの内戦」を徹底レポート。
[目次]
序章 オバマ大統領就任式―「自由」と「平等」のハルマゲドン―2009年1月;第1章 医療保険改革とティーパーティーの誕生―2009年12月~2010年5月 オバマのお辞儀を批判するFOXと過激なデマゴーグたち;第2章 保守vs.リベラル壮絶メディア・バトル―2010年5月~12月 中間選挙で民主党敗北;第3章 オバマがイスラム教徒だと信じるアメリカ人―2011年1月~6月 ギフォーズ議員狙撃からビン・ラディン殺害まで;第4章 1%が動かす茶会と99%の占拠運動―2011年6月~11月 共和党大統領予備選から「ウォール街を占拠せよ」運動まで;第5章 「ハゲタカ」ロムニーと「ヘタレ」のオバマ―2012年2月~7月 ロムニーの大統領候補選出からオバマケアの最高裁判決まで