MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

「ばかじゃないの」の主語について

2019-10-06 00:57:31 | Weblog

(2019年10月5日付毎日新聞朝刊)
 
 かんぽ生命保険の不正販売問題を昨年4月に報じたNHKの「クローズアップ現代+」をめぐり、NHKが日本郵政グループの抗議を受けた問題で、鈴木康雄・日本郵政上級副社長(元総務事務次官)は3日、国会内での野党合同ヒアリング後、記者団に対し、NHK側から「取材を受けてくれるなら(情報提供を呼び掛ける)動画を消す」と言われたと説明し、「そんなことを言っているやつの話を聞けるか。それじゃ暴力団と一緒でしょ。殴っておいて、これ以上殴ってほしくないならもうやめてやる、俺の言うことを聞けって。ばかじゃないの」と不満を述べたらしい。
 この鈴木の物言いこそ「暴力団と一緒」と言ってしまうと話が終わってしまうのでここは見逃そうと思うが、個人的にはこの鈴木の例え話が正確なのかどうかということである。
 NHK側が言ったとされるロジックは、動画によって情報提供を求めていたのだが、それはあくまでの第三者からの情報でしかないので、当事者である鈴木が取材に応じるならば動画の意味がなくなるから消すというのは理解できる話である。
 さて、このロジックを鈴木は「殴っておいて、これ以上殴ってほしくないならもうやめてやる、俺の言うことを聞けって。」と例えている。「殴る」というのはNHKが「クローズアップ現代+」でかんぽ生命保険の不正販売問題を暴いたことを指しているのであろう。気持ちは分からなくはないとしよう。「これ以上殴ってほしくないならもうやめてやる」という文言を文脈の流れから勘案するならば、「さらに暴露されたくないならば」という話になるはずだが、NHKがそのような話を持ち掛ける訳がない。「俺」とはNHKを指し、「NHKの言うことを聞く」ということは「取材を受ける」という意味になり、そうなると取材を受ければ暴露はしないという話になるのだが、取材をしておいて暴露をしないということもないであろう。
 鈴木の意図を酌み取ろうと思ったのだが、よく分からない。誰か分かる人がいないのならば「ばかじゃないの」の主語は必然的に変わらざるを得ない。

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