六本木の国立新美術館で催されていた『ウィーン・モダン』と東京の丸の内の三菱一号館
美術館で催されていた『ラファエル前派の軌跡展』を踏まえて、フランスの「印象派」、
イギリスの「ラファエル前派」、ウィーンの「ウィーン分離派」という同時代的に起こった
芸術運動の違いを論じたことがある。フランスの印象派がさらに「新印象派」「ポスト印象派」
「フォービズム」「キュビズム」とテクニックを追求していくのに対して、「ラファエル前派」や
「ウィーン分離派」は「象徴主義」を経た後に「アール・ヌーヴォー」に流れてしまっており、
ここで言う「アール・ヌーヴォー」とは美術自体の向上ではなくてその装飾性が建築や工芸品や
グラフィックデザインに向かったということで、つまり実用品として扱われるようになったと
指摘したのであるが、三菱一号館美術館で催されていた『マリアノ・フォルチュニ 織りなす
デザイン展』を観た時、1871年生まれ、1949年に77歳で亡くなったスペインの
ファッションデザイナーも「アール・ヌーヴォー」に流れてしまっているように見える。
逆に言うならば、もしもマリアノ・フォルチュニ(Mariano Fortuny)が独特の油絵を
描けたならばフォルチュニは印象派に名を連ねていたように思うのであるが、「20世紀の
レオナルド・ダ・ヴィンチ」と呼ばれることはなかっただろうから微妙な話ではある。
(『アンリエット・フォルチュニ、画家の妻
(Portrait of Henriette Fortuny, Wife of the Artist)』)(1915年)