原題:『First Reformed』
監督:ポール・シュレイダー
脚本:ポール・シュレイダー
撮影:アレクサンダー・ダイナン
出演:イーサン・ホーク/アマンダ・サイフリッド/セドリック・カイルズ/ヴィクトリア・ヒル
2017年/アメリカ
痛快娯楽作にならない主人公の老いについて
主人公のエルンスト・トラー牧師はトーマス・マートン(Thomas Merton)を信奉しており、ニューヨーク州北部にある「ファースト・リフォームド」と呼ばれる小さな教会に務めている。その教会は設立250周年を祝う祝典の準備をしているくらい歴史のある教会なのだが、トラーの仕事はわずかな信者たちに対する典礼儀式と観光客に対するガイド役くらいで、教会の維持費などは「アバンダント・ライフ教会」と呼ばれる大きな教会に頼らざるを得ないのである。
ある日、メアリー・メンサナがトラーを訪ねてきて、彼女の夫であるマイケルが極端な環境保護論者で将来に絶望しているために妊娠しているメアリーに中絶を勧めていることを打ち明け、トラーはマイケルの説得を試みた。さらにマイケルが爆弾や銃を所持していることを知ったのだが、その矢先にマイケルはショットガンで自殺してしまうのである。
その後、トラーは環境汚染の原因を作っている「バルク」と呼ばれる大企業の経営者であるエドワード・バルクが「アバンダント・ライフ教会」に献金していることを知り、自身が胃がんで余命いくばくもないことも分かったことで、マイケルが作っていた爆弾が付いたベストを着て祝典に臨もうとしていたのだが、そこにメアリーが来ていることを知ったトラーは自身がマイケルと同じ過ちを犯そうとしていたことを思い知り、ベストを脱いで有刺鉄線を体に巻くのである。
本来ならば『タクシードライバー』(マーティン・スコセッシ監督 1976年)の主人公であるトラヴィス・ビックルのように、トラーが自爆すれば娯楽映画として痛快だったはずなのだが、「若気の至り」を演じられるほどもはやトラーは、そしてポール・シュレイダーも若くはないのである。
余談であるが、トラーの刺身の食べ方が気になった。醤油のつけすぎだし、箸置きもなかった。