(山峡の小駅にて@内山駅)
浦山で突如アタクシを背後から急襲したデキ12021の工臨。撮るものもとりあえず、ひとまずひっつかんだカメラで走り去る姿だけを抑えたのだが…さあどうする。おそらく旅客列車の通常ダイヤを縫って走るのなら交換なり退避なりをするだろうという事で、ひとまず宇奈月方面の最後の交換駅である内山まで先回りする事に。ホームに上がってカメラを構えて待っていると、ほどなく構内踏切がカンカンと鳴り始め、淡いサーモンピンクの古典電機が秋の陽射しの中をゆっくりと進入して来ました。
波打って草生すホームも味わい深い、黒部峡谷に続く山峡の駅。内山の駅は、トンガリ屋根の木造の古びた空色の駅舎が特徴。この駅には以前にも来たことがあるのですが、なかなかいい雰囲気の駅です。ゆっくりとポイントを分岐して駅舎側のホームに滑り込んだデキ工臨の何とも絵になる姿。鉄道模型好きな人にとってはたまらなさそうな、ローカル私鉄らしいモジュール感があります。
いかにも地方私鉄らしい凸型電機であるデキ12021型は、昭和33年東芝製の古豪。国鉄の黒部駅から黒部川第四発電所の建設のための資材運搬を主目的に製造された機関車で、製造当時は黒部ダムの施工主である関西電力のマークが付けられていたそうです。今ではこうやってたま~にホキを引っ張っての沿線のバラスト散布など、保線作業に駆り出されているのが主な仕事のご隠居さんですが、延べ一千万人の作業員を投入した昭和史に残る土木工事を、陰から支えた功労者でもあります。
そういう用途の機関車なので、最初はバラスト散布のための工臨なのかなと思ってたんですけど、どうも後ろのホキにはバラストどころか何も積まれていません。ほどなく乗務員氏が降りて来て、ブレーキ管を外してデキとホキを切り離してしまいました。バラしちゃうのか。どうやらこの駅で機回し(機関車の前後付け替え)を行うようです。
デキを追っ掛けて来た地元氏がいたので話を聞いてみると、「宇奈月温泉の駅の構造的に機回しが出来ないので、いずれにしろ宇奈月方面に行くには内山から後方にデキを付けて推進運転を行うのだが、今日はバラストも積んでないし宇奈月まで行くとは思えない」との話。最近はマニアの方々が有志を募ってこのデキ+ホキ編成を撮影用の列車(フォトラン)として走らせることもあるそうですが、今日はその一環なのかしら。
機回し作業の途中で、特急くろべと交換。うわー、このシーンは14760で撮りたかったぜ。しかし腑に落ちないのが、フォトランならフォトランらしく追っ掛けの撮影者でも居てもよさそうなものの、この光景を撮影していたのは私ともう一組の追っ掛けの方々のみ。その方々も、「さっき見たんで慌てて追っ掛けて来た」と言うばかりで、果たしてこれはフォトランでもなさそう…こんな三連休のど真ん中に、このようなハンドル訓練が施行されるものなのだろうか。
謎を残しつつ、内山の機回しは続くのであります。