(バブルの残り香@梅津寺駅)
古町から電車に乗り高浜方面へ。三津の駅を出ると、車窓には瀬戸内の海が広がり、やがて電車は梅津寺の駅に着きます。「月9」という言葉を一般的な口語たらしめた感のあるドラマ「東京ラブストーリー」の最終回の舞台の一つ。瀬戸内の青空の下で、カンチを待つリカの姿が目に浮かびますわね。ってか、普通にカンチとリカとか言っても、40代以上のナイスミドルしか分からんさね。本放送が1991年、カンチ織田裕二23歳・リカ鈴木保奈美25歳の頃のトレンディドラマって事なんですが・・・あれから30年、鈴木保奈美は川井ちゃんと結婚して別れ、石橋貴明と再婚してつい先日二度目の離婚。織田裕二はなんかあったっけ?世界陸上とマキシ・プリーストくらい?(織田裕二情報に疎い40代男性)。
海を背にした梅津寺の駅。以前は、この駅に隣接して「梅津寺パーク」という伊予鉄直営の遊園地があったそうなんですが、今は取り壊されて影も形もありません。地方私鉄による遊園地経営というのは、富山地方鉄道の大川寺遊園、静岡鉄道の狐ヶ崎ヤングランドなんかが思い出されますが、そもそも地方鉄道を資本とする遊園地で現存してるもの自体があまりないですよね。唯一富士急ハイランドくらいじゃないのかな。あと遠鉄系列の浜名湖パルパルとかもそうか。
梅津寺の駅は、西に開けた海沿いの駅。そうなると、普通に考えれば夕焼けがきれいなのではないか・・・という見立てで、しばらくこの駅で日没までカメラを出してみようと思いまして。ただ、松山に到着した午後2時ごろはキレイに晴れていたんだけど、どうも夕方の松山沖の瀬戸内海上空は雲量多めでイマイチスッキリしません。それでもまあ、水平線と上空の雲の間には十分に隙間があるので、そこに太陽が飛び込んで来れば充分に勝負になるはずです。
それまでは、秋空の移ろい行く様を眺めつつ、駅のホームやその周りを宛もなく彷徨いながら、カシャリカシャリととりとめもなく散文的にシャッターを切って行く。夕陽の浜辺に降りて行く女子大生のグループを、暫しオレンジ色の電車が通せんぼ。太陽の高度が下がって来たのか、空を覆う雲の赤味がほんのり増してきたような・・・かそけき夕暮れのプロローグでしょうか。
そして予想通り、今日のこの日の最後の光が、低い雲を抜けて水平線の向こうから差し込んで来ました。瀬戸内の島並みの影を映して、キラキラと輝く光の波。赤い夕陽に染まる梅津寺の駅のホーム。やにわに構内踏切がカンカンカン・・・と電車の接近を告げて、みかん色のボディをより一層と熟した色に輝かせながら、高浜行きの電車がやって来ました。
纏っていた都会の香りは、潮の匂いにかき消され。吉祥寺の喧騒は、梅津寺の波音に変わり。あの頃のヒールの高さも、街を華やぐ若者の姿も、身動きの取れぬようなスーツだらけの混雑も、夜更けの車内を埋めた盛り場の酔客も・・・今は遠く離れてしまったけれど、それでもこの伊予の街を走って早や10年。虹色に輝いていた帝都の時代をちょっとだけ懐かしみながら、自らの務めに倦むことなく淡々と走る3000系です。
梅津寺のホームから、梅津寺海岸と暮れて行く瀬戸内の海をただ静かに眺めます。30年前、あのドラマの最終回で、鈴木保奈美演ずる赤名リカが、織田裕二演ずる永尾完治を待っていたのがこのホームのこの辺り。あの日あの時あの場所で君に会わなかったら・・・という主題歌のフレーズを口ずさみながら、たしかなことは、この日の梅津寺の夕焼けとキラキラした瀬戸内の海は、言葉に出来ないほどキレイだった・・・という事でしょうか。
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