青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

潮風や 凪の船旅 興居島へ。

2021年12月20日 17時00分00秒 | 伊予鉄道

(島へ帰ろう@高浜駅)

郡中線を乗り潰し、ひとまず伊予鉄全線を完乗したのが16時前。19時過ぎの飛行機で松山から帰る予定なので、市駅に戻って松山市街をブラブラするかなあ・・・なんて気持ちもあったのだけど、郡中線からそのまま高浜線に乗り換え、終点の高浜駅まで再びやって来ました。西日の当たるホームから、電車を降りた学生が目指すのは高浜の船着き場。島の子が家路に就く風景、瀬戸内の暮らしがそのまま匂い立つような停車場の雰囲気を感じながらスナップ。

飛行機の時間まで、高浜港から対岸の興居島(ごごしま)へフェリーで行って帰ってくるくらいの時間は余っていました。前日は梅津寺の駅のホームで瀬戸内の夕暮れを拝みましたが、今日は船の上から瀬戸内海をサンセットクルージング。高浜港から興居島の泊(とまり)へは僅か10分足らずの船旅ですが、こういうプチ船旅が気軽に味わえるのも瀬戸内のいいところ。そして、何より旅先で船に乗るという非日常な感じがグッとくる。

高浜~泊航路に就航しているのは汽船「しとらす」。株式会社ごごしまという会社が船籍を持つ船です。一応民間の会社らしい。瀬戸内海には離島を結ぶ海運会社がたくさんありますが、どこも離島の人口減少や燃料高騰などであまり業績は芳しくないようです。離島の交通路が途絶えたら死活問題ですから、なんとか運営出来るように行政も補助金を出しながら何とか航路を維持しているのだろうと思います。船舶も零細海運会社が持つにはそんなに楽な金額のものではない、というのは聞いたことがありますからねえ・・・

汽船「しとらす」は、小さいながら甲板の上に乗用車も積み込めるカーフェリー。旅先の渡船というと富山新港で乗って以来ですが、自転車とバイクしか乗せらんなかった県営渡船に比べると随分本格的な船旅だ。デッキのオープンエアーから見渡す瀬戸内の海。ちょうど夕陽が西に傾き始めるお誂え向きの時間。特に出港の合図もなくタラップが巻き上げられると、船は四十島瀬戸と呼ばれる海峡に出て、穏やかな凪の海を島へ向かいます。

白波を蹴立てて小さな海峡を行くフェリー。みるみる近付いてくる興居島、小富士と言われる興居島の主峰に夕日が沈むささやかな船旅。瀬戸は日暮れての世界だ。基本的には鉄道を愛でている私の旅ではあるけれど、そんな中で、上手に船をスパイスとして絡めると、情緒的な気分がまたひとしお盛り上がって来るような気がする。

興居島、泊港周辺。フェリーが折り返して行くまでの僅かな時間、港の周辺をフラフラと散歩しただけだったのだけど、ひっそりとした路地の先には瓦屋根の立派な家屋が並んでいたりして・・・それでも、何となく島ってのは余所者を寄せ付けないような独特の雰囲気がそこはかとなく感じられる。人っ子一人いない路地の奥を興味本位だけで歩くのも気が引けるので、路地の無人販売所に売っていた青く小さな末生りのミカンを買って港に戻る事にする。この青ミカン、帰京後に焼酎のソーダ割りをする時に絞り入れると、酸味と柑橘系の爽やかな香りが立って美味かった事を申し添えておきます。


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