青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

開発、中秋の名月

2019年10月19日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(夜、鎮まる@開発駅)

9月に富山に出掛けてから、三連休のたびに台風が来るものだからここ1ヶ月くらいまともにカメラを握っていない。そもそも撮影しに行きたかった路線が被災していて正直出掛ける気にもならないのだが。というわけでネタがないのですが、まだ富山で撮影したカットがいくつか残っているのでお付き合いいただきたく。寺田で暗くなるまで撮影し、市内で食事と家族へのいくばくかの土産を求めた後、上滝線の開発の駅へ立ち寄った。富山市の郊外、広い県道沿いの路地裏の奥まった場所にあって、入口を見つけるのに難儀する駅。ちなみにこの駅は「かいはつ」ではなく「かいほつ」なのであるが、北陸方面ではえちぜん鉄道にも「越前開発(えちぜんかいほつ)」なんて駅があります。新潟~福井にかけて開発(かいほつ)姓は多いそうだが、越中国小杉郷開発村がその起源なんだそうな。

岩峅寺行きの下り列車から、家路を急ぐ乗客がパラパラと降りて来た。上滝線は運転本数こそ多くはありませんが、富山市の郊外を南東方向に走っており、沿線住民の数はそれなりにおります。富山市の交通政策では、上滝線の活性化のために南富山から市内線に乗り入れ、中心部にダイレクトにアクセスするというLRT構想もありますが、そもそも市内線600V上滝線1500Vという複電圧問題があって、そう簡単な話ではないようです。

この日は十五夜の月が燦然と夜空に輝き、月の光に照らされて周りの景色にもほの明るさがあった。列車が去り、人っ子一人いなくなった駅で一人カメラを持って撮影していると、駅の周りに住んでいる夫婦から「今日は月がきれいですね」なんて声を掛けられてしまったが、今思えばあれは不審者対策の声掛け対応だったのかもしれないが(笑)。

月明かりの下を、開発の駅に飛び込んで来た14720形。この日は始発から電鉄富山~宇奈月温泉を2往復し、午後は上市ローカルに入り、夜は上滝線の機織り運用を深夜まで続けていた。12月に引退が決まっている車とは思えないハードワークであり、その頑張りには敬意を表したくなる。もとより、全線で100km近くの距離がある地鉄の鉄道線を賄う運用というものは、どうしてもハードにならざるを得ない。

夜の開発駅。街へ帰る娘を見送る母親が、ドアの前で何度も娘に手を振っていた。大きなトランクを持っていたので、連休で娘が実家に帰って来ていたのだろうか・・・。時刻は夜の9時過ぎ、東京までは帰れなくとも、金沢や長野までなら新幹線で十分に間に合う時間。若い子だったから、この時間なら富山駅前からリーズナブルに夜行バスだろうか。

車内の煌々とした灯りがホームに漏れて、ざらりとしたアスファルト引きのホームを照らす。
親子暫しの別れの挨拶を、古豪14720形が優しく見詰めていました。

 


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