青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

最後の冬 真昼の銀河 ~バナ釘リベンジツアーその2~

2006年03月05日 00時10分34秒 | 日常
(写真:長年のご愛顧に感謝して@上利別駅)

今年の4月20日を以って廃線となるちほく高原鉄道。
廃線寸前の最後の輝きか、多くのヲタで賑わっておりました。
ってか、益田競馬とか、こう言うシチュが好きなのね。我々。

今回の旅のテーマの一つに「北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線(長い)に乗ってみる」と言うのを提案したのは山小屋店主氏であった。何でも、仕事中に日経を読んでいて偶然記事を目撃したのだとか(仕事しろよ…笑)。
元よりそのような「去り行く物への憧憬」みたいなレトロ感覚?は、益田競馬の最後に立ち会ったりして来た我々にジャストフィットする出来事なのかもしれない。それがこと鉄道に関しては同じ「旅好き」として、同行のグッピー氏も私も一家言持っているくらいであるから、この話が出た段階で「乗る・乗らない」の議論も何もなく「乗るもの」として話は進んだ。まだ山小屋氏の持っている豚丼はホカホカだ(あっという間に着いちゃったからね)。そこまでして乗りたいのか、と言われたら返す言葉もないが、乗りたいw

足寄駅自体は画像で見ても分かる通り新しくとてもきれいな施設であるが、それは並行する国道241号線の道の駅「あしょろ銀河ホール21」として作られたもので、鉄道としての足寄の駅自体は完全に添え物扱いである。
銀河線の出札口は、沿線でも大きな街の一つであるこの足寄駅でも土日はカーテンをぴっちりと閉ざしていた。同じフロアのバスの改札は開いており、既に廃線→バス転換と言う流れは完全に出来上がっている。
駅前のロータリーには帯広駅前行きのバス(十勝バス)が止まっていた。鉄道よりも若干安い料金で運行されているらしく、地元の親子連れは先に出るバスに乗って行ってしまった。待合室にいるのは、我々のような「用事があって乗る訳ではない(=鉄ヲタ)」乗客しかいない。何だか去年の秋の鹿島鉄道を思い出すな…あの時もマニアしかいなかったw
まだ列車の到着まで小一時間あるので、我々もめいめいに分かれて気ままな散策タイムを楽しむ。この道の駅には2階に「松山千春資料館」と、ビルの10階程度の高さまで登って行ける展望塔が付いている。ちなみにこの展望塔の名前は「千春・ありが塔」だってwはいはいワロスワロス。

エレベーターもない螺旋階段を登り切った展望塔から見えるのは、ゆったりとした山並みに囲まれた大地に開けた足寄の街の風景
その街の中を、いじましいほど真っ直ぐに鉄路が、北へ北へと伸びている。
最後の冬、雪の積もった砂利の上を、黒い轍だけがすっきりと続いている。
来年の冬は、もうこの轍は現われず、雪に白く塗られて埋まるのだろう。
沿線は、冬場はマイナス30℃を下回るほどの酷寒の地。苛酷な気象条件の中で、たったこれだけの本数のために線路を維持する事は経営上難しいのは火を見るより明らかだ。

もうまもなく陸別行きの列車が来るので、展望台を降りる。ホームは入れ違い設備のある対向式のホームで、本当なら階段を登って通路を通り向かいのホーム(陸別・北見方面)に行く作りになっているのだが、まあこんなローカル線だし堂々と線路に降りて渡ってしまおう。
程なく「ピョ~!」と言う汽笛を鳴らして陸別行の気動車がやって来た。単行である。途中駅の陸別止まりにもかかわらず、車内は別れを惜しむ鉄道ファンの姿が目立つ。普通の乗客はいないwえてしてそう言うもんだ。
こう言う人たちの事をマニア用語では「葬式鉄(そうしきてつ)」と言うらしいw。まあ、意味は読んで字の如くだ。いろんな物がなくなるのを惜しむ姿がそう見えるのだろう。Jリーグではきっとジェフサポだと思うw

4人掛けのワンボックスに腰を下ろすと、ゆっくりと列車が動き始めた。発車時には、再び汽笛を高らかに一発長く鳴らす。運ちゃんも残り二ヶ月あまりのこの路線の最後の冬に、運ちゃんなりのサービス精神なんだろうか。
単行の車両は徐々にスピードを上げ始め、平屋建ての長屋が並ぶ足寄の街を後にする。国道と利別川に沿って、森の中を、雪に覆われた牧草地の中を、タタン、タタンと軽快なリズムを刻んで走る。窓に流れる風景と、決して都会では味わえない揺れが心地いいじゃないですか。

巨乳ファン垂涎の駅(あいかっぷ)・、西一線(にしいっせん)、塩幌(しおほろ)と荒野に板を渡しただけのような簡素な無人駅を綴り20分程度で列車は上利別(かみとしべつ)駅に到着した。この列車がこの先の陸別ですぐ折り返して来るので、それまでの間この駅で昼メシタイムにでも当てようと言う算段。
別に狙った訳でもないが、この駅には国鉄池北線時代の開通当時から残る木造駅舎がそのまま残っていてなかなかの雰囲気。昔は出札口であったろう窓ガラスには栄華を誇った国鉄時代の写真が貼られ、お別れコーナーが作られている。
高天井の広い待合室に置かれたベンチで豚丼の包みを広げ昼食タイム。冷え切った待合室に豚丼の匂いが充満したのは言うまでもないw

メシを食い終わり、再び各自思い思いに散策タイム。
ローカル線の駅にしては広い構内だ。長く伸びるレールと、駅に隣接する貯木場。昔は林業で栄えた集落だったらしい。山から切り出された木材と、広い牧草地を使った軍馬の輸送で賑わったこの上利別の駅も、今はただ青空の下で死んだように静まったままだ。
駅舎のカギのかかった窓からは、この駅にも駅員がいた時代の遺品(と言っては失礼か)がそのまま野晒しに放置されていた。それは時間の経過の中で思い切り色褪せてしまっており、文字も何が書いてあったのやらと言う代物であるが、その色の褪せた時間の長さだけが、妙にリアルに印象に残る。

静寂を破って激しく駅の中の遮断機の警報機が鳴り、陸別で折り返した下り列車がやって来る。これを逃すと2時間半はこの駅には列車はやって来ないのだw
乗り逃したらアウト。

(動画:上利別を出発!movファイル)

さあ、足寄に戻ろう。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 奴等が再び北の大地に降り立... | トップ | 雌阿寒かあちゃんの懐に抱か... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日常」カテゴリの最新記事