tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

観光地奈良の勝ち残り戦略(7)RYOKANへの期待

2007年11月03日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
「週刊 観光経済新聞」という業界紙があるそうだ。同僚にバックナンバーを見せてもらって、初めて知った。

《旅館・ホテル、旅行会社など観光業界のプロ達が購読している週刊の専門紙。創刊は1950年。旅行のプロが選んだ温泉ランキング「にっぽんの温泉100選」を年に1度発表》という新聞だ。webサイトも充実している。
http://www.kankokeizai.com/

ざっと見た感じでは、ホテルより旅館に関する記事が多い。それも「真・旅館が変わる、赤字が消える」「旅館経営再生塾」などという特集記事に象徴されるように、旅館の経営改善が大きなテーマになっている。

実際、旅館経営はとても厳しい。同紙でも《倒産、民事再生法の動きも打ち止めかとみられたが、まだ観光・温泉地の大型施設の倒産ニュースが連日のように飛び込んでくる》(07.10.20付 以下同様)として、外資に売却された老舗の「東光園」(皆生温泉)や廃業した「八景園」(大津市)などの名前が登場する。

なかでも注目したいのが国際観光旅館連盟会長・佐藤義正氏の講話だ(「ホスピタリティ・マネジメント講座」立教大学観光研究所)。

佐藤氏は《団体旅行の全盛期に送客を旅行会社に依存しきった結果、「旅館は消費者に対するマーケティングを怠り、営業力を失った。流通におけるサプライヤーとしての発言力を弱めてしまった」と反省点を挙げた》。

今の価格競争については《「安売りによる需要の掘り起こしはすでに限界に来ている。それは商品そのものが客に見放される限界であり、供給する側が利益を得られないために疲弊する限界でもある」》《経営破たんした旅館を安く買い取った新規参入者が、短期間の利益を目的に価格競争を仕掛け、地域全体の衰退を招くといった事例も問題視》。

旅館は《景況の悪化に伴い、旅行会社に支払う手数料の負担感が重くなり、旅行会社に提供した客室の販売が伸び悩む》というダブルパンチ状態だ。県内旅館のご主人によれば、ある中堅旅行会社の手数料は20%を超えたそうだ。佐藤氏は《打開策の1つとして、複数の旅館が共同で客室を管理し、消費者や旅行会社に販売する新たなシステムの必要性などを挙げた》。

佐藤氏は最後に、《訪日外国人観光客の受け皿として、伝統文化とおもてなしの心を提供する日本旅館の重要性を強調した。「RYOKANを『寿司』や『交番』、『改善』のように世界語にしたい」と語り、海外富裕層市場の開拓などにも意欲を示した》。確かに、国交省の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の波にうまく乗れば、海外富裕層は有望な市場だ。

さて県内に目を向けると、10/17の定例記者会見で荒井知事は次のように述べた。《上野は、昔の修学旅行の旅館街で、昔のままの旅館はつぶれたところが多いのです。19室や20室ぐらいで家族経営されているところは、世界中から客が来たりして、はやっているんですね。奈良のまちでも、そういう小さなところで、はやっているところがあります。旧態のところが生き方が難しい》。

知事のいう上野の旅館は、谷中の「澤の屋」のことだろう。私もテレビで見たことがあるが、これは逆転の発想だ(素泊まり=4700円)。
※旅館「澤の屋」はなぜ外国人から選ばれるのか
http://www.net-ric.com/square/sawanoya/index.htm

奈良町にも、部屋数わずか9室ながら、バックパッカーなどの外国人を引きつける「静観荘」という旅館がある。元は遊郭だったという建物は、とても風格がある(素泊まり=4000円)。奈良県を訪れる観光客数は全国でも最下位レベルだが、外国人に限ると11位にハネ上がるので、これをターゲットにしない手はない。
※「静観荘」の紹介サイト
http://homepage2.nifty.com/K-Ohno/a-map/Nara/3653-SK-hotel/03-SK.htm

知事は続いて《やる気がないならそれまでというのは、そのとおりだと思います。繰り返しになりますが、やる気のないところは、世の中で生き残れない》。

《猿沢池や奈良公園の周辺に、昔ながらの旅館がありますが、そこへ行きやすいように、宿泊しやすいような環境整備をするのは、むしろ公共の役目ですので、それはできると思います。それに呼応して、その波(=繁閑の差)を埋めるとか、プロモーション(=県が行う販促活動)のきっかけをつくっていただきたいと強く要望します》。つまり県も協力するから、旅館側もそれに応えて自助努力をしてほしいということだ。

県下の旅館には、逆風ばかりが吹いているわけではない。最近も「観光客2%増 宿泊も5.5%増 県動態調査」(07.11.1付 奈良新聞)というニュースが報じられた。

増えた中身を見ると、観光客全体では「奈良市」が燈花会や正倉院展のおかげで+3.2%。明日香村も「白虎」公開などで+13.9%。逆に十津川村は国道崩壊で△9.3%となった。

宿泊客は、修学旅行客が△3.7%だったものの、「一般旅行客」が+6.5%と、大幅に伸びた(少子化と旅行先の多様化が進む修学旅行に期待をかけるのは、やはり間違いだ)。宿泊客の出発地は、東京都(16.0%)、大阪府(12.8%)、愛知県(9.2%)の順。東京で奈良をPRするのは、正しい戦略だ。使ったお金では、日帰り客は約4千円、宿泊客は約3万円と、1:8の開きがある。
http://www.pref.nara.jp/kanko/toukei/

欧米人は和風旅館を好むが、奈良を訪れる外国人観光客には欧米人が多い。県下には、約100点もの美術工芸品をさりげなく飾る「魚佐旅館」(奈良市)や、名庭の宿「竹林院群芳園」(吉野山)など、文化の香りを感じさせる旅館が多い。

「伝統文化とおもてなしの心を提供する和風旅館」が自らの魅力に気づいて磨き上げれば、「RYOKAN」が世界語になるのも、夢ではない。

※写真は、純和風数寄屋造りの料理旅館「百楽荘」(奈良市百楽園)。10/27撮影。

※参考:観光地奈良の勝ち残り戦略(6)登大路に高級ホテルを
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/8f0e3329518833b6ec3fef0171fdcbde
コメント (11)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする