先月（3/1）上京の機会があり、雑誌でも買おうかと京都駅の新幹線乗り場にあるキヨスクの本屋に立ち寄ると、増田悦佐（ますだ・えつすけ）氏の最新刊『日本文明 世界最強の秘密』（PHP研究所刊 1600円）が平積みしてあった。「おおっ、もう新刊を出されたのか」と嬉しくなって、１冊買い求めた。
増田氏は2/9に奈良に来られ、私たちの勉強会に講師としてご参加いただいた。氏は、飛躍的な成長期を迎えている大阪（関西）経済の状況を分析・解説され、これを加速させるための提言を熱く語られた。
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/f15a0a2dc635a466695e06719969b8f5
その時紹介されたご著書が『大阪経済 大復活』（PHP研究所刊・1400円）だった。今回の『日本文明…』は、都市論・鉄道論・自動車論という氏がこれまで取り組んでこられた論考の一環である。氏によれば、本書は６部作の第２巻という位置づけだそうだ（第１巻は『国家破綻はありえない』PHP研究所）。
版元による本書の解説には《エネルギーコストが高まってゆく世界にあって、経済システムとしての都市のネットワークとして、また、輸送や移動の手段として、鉄道網が発達し、都市が機能を高めている日本は、完全にクルマ社会化してしまっている他の先進国より、エネルギー効率よく、経済活動を行なうことができる》。
《よって、日本こそが、現在も、そしてこれからもの世界の中で最も優れた文明形態であることを、本書では証明する。「世界で最も効率よくエネルギーを使う体制が整っている日本が、最後まで生き残る」ことを、鉄道、都市という視点を中心にわかりやすく説き明かす、未来が明るく見えてくる異色の文明論であり、未来予測本である》とある。
http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-69631-7
氏は、東京や大阪の発達した鉄道が日本経済を救い、発展させるという。《日本経済が世界最強である秘密は何かというと、世界中の先進国でいちばん人口密度の高い大都市圏と、この大都市圏をおおう世界中でいちばん利便性の高い鉄道網を持っていることだ》。
《どんなに大都市圏の人口密度が高まっても、利便性の高い鉄道網による高頻度大量輸送で混乱なく通勤ができる。また、どんなに鉄道網の利便性を高める投資が巨額になっても、利用人口が大きいから鉄道事業者は運賃収入でちゃんと利益の出る経営を続けられる》。
本書には「電車・鉄道型文明と自動車・道路型文明」というユニークな比較表が掲載されている。そのポイントは３点あって、
《一 鉄道は省エネ、低公害、省スペースの人間と環境にやさしい交通機関である》《二 鉄道は電車に乗りあわせた人々によって形成と消滅をくり返す行きずり共同体（弱い紐帯の共同体）を作り出している》《三 クルマがなければ日常の交通手段に支障をきたす社会は、本質的に貧乏人、高齢者、ハンディキャップを持った人間を排除する社会だ》。
本書の章タイトルや小見出しをいくつかピックアップしてみる。著者の論点がよく見えてくるだろう。
インフラが経済効率を決める/都市の巨大化と鉄道依存度の高い交通ネットワーク形成は車の両輪/環境と経済効率を両立させる都市再生こそが日本経済最良の成長戦略/圧倒的なエネルギー効率格差の源泉は、鉄道依存の大都市圏旅客交通/エネルギー優位の源泉は産業ではなく、交通/ネットワーク型鉄道網は日本にしか存在しない/欧米の鉄道は、補助がなければ絶対にやってはいけない事業に成り下がっている/鉄道は省エネ、低公害、省スペースの人間と環境にやさしい交通機関/陸上交通のベストミックス、旅客は鉄道、貨物は自動車
時間が正確で使いやすい都市鉄道ネットワークを持っているのは日本だけだと氏はいうが、この本が新幹線駅の売店に平積みされていたというのは、偶然とは思えない。目からウロコ、そして元気が湧き出てくる増田理論の真骨頂、ぜひご一読いただきたい。
※写真は阪急電車の淀川鉄橋（梅田と十三の間 3/23撮影）。向かって左から京都線・宝塚線・神戸線の３複線が走り、眺めは壮観である。京都線（1959年完成）が１段高いのは、ジェーン台風（1950年）の時、河水が鉄橋の高さまで増水したからだという。
※本書の「なか見！検索」ができるamazonのサイト
http://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%96%87%E6%98%8E%E3%83%BB%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%9C%80%E5%BC%B7%E3%81%AE%E7%A7%98%E5%AF%86-%E5%A2%97%E7%94%B0-%E6%82%A6%E4%BD%90/dp/4569696317
増田氏は2/9に奈良に来られ、私たちの勉強会に講師としてご参加いただいた。氏は、飛躍的な成長期を迎えている大阪（関西）経済の状況を分析・解説され、これを加速させるための提言を熱く語られた。
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/f15a0a2dc635a466695e06719969b8f5
その時紹介されたご著書が『大阪経済 大復活』（PHP研究所刊・1400円）だった。今回の『日本文明…』は、都市論・鉄道論・自動車論という氏がこれまで取り組んでこられた論考の一環である。氏によれば、本書は６部作の第２巻という位置づけだそうだ（第１巻は『国家破綻はありえない』PHP研究所）。
版元による本書の解説には《エネルギーコストが高まってゆく世界にあって、経済システムとしての都市のネットワークとして、また、輸送や移動の手段として、鉄道網が発達し、都市が機能を高めている日本は、完全にクルマ社会化してしまっている他の先進国より、エネルギー効率よく、経済活動を行なうことができる》。
《よって、日本こそが、現在も、そしてこれからもの世界の中で最も優れた文明形態であることを、本書では証明する。「世界で最も効率よくエネルギーを使う体制が整っている日本が、最後まで生き残る」ことを、鉄道、都市という視点を中心にわかりやすく説き明かす、未来が明るく見えてくる異色の文明論であり、未来予測本である》とある。
http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-69631-7
氏は、東京や大阪の発達した鉄道が日本経済を救い、発展させるという。《日本経済が世界最強である秘密は何かというと、世界中の先進国でいちばん人口密度の高い大都市圏と、この大都市圏をおおう世界中でいちばん利便性の高い鉄道網を持っていることだ》。
《どんなに大都市圏の人口密度が高まっても、利便性の高い鉄道網による高頻度大量輸送で混乱なく通勤ができる。また、どんなに鉄道網の利便性を高める投資が巨額になっても、利用人口が大きいから鉄道事業者は運賃収入でちゃんと利益の出る経営を続けられる》。
本書には「電車・鉄道型文明と自動車・道路型文明」というユニークな比較表が掲載されている。そのポイントは３点あって、
《一 鉄道は省エネ、低公害、省スペースの人間と環境にやさしい交通機関である》《二 鉄道は電車に乗りあわせた人々によって形成と消滅をくり返す行きずり共同体（弱い紐帯の共同体）を作り出している》《三 クルマがなければ日常の交通手段に支障をきたす社会は、本質的に貧乏人、高齢者、ハンディキャップを持った人間を排除する社会だ》。
本書の章タイトルや小見出しをいくつかピックアップしてみる。著者の論点がよく見えてくるだろう。
インフラが経済効率を決める/都市の巨大化と鉄道依存度の高い交通ネットワーク形成は車の両輪/環境と経済効率を両立させる都市再生こそが日本経済最良の成長戦略/圧倒的なエネルギー効率格差の源泉は、鉄道依存の大都市圏旅客交通/エネルギー優位の源泉は産業ではなく、交通/ネットワーク型鉄道網は日本にしか存在しない/欧米の鉄道は、補助がなければ絶対にやってはいけない事業に成り下がっている/鉄道は省エネ、低公害、省スペースの人間と環境にやさしい交通機関/陸上交通のベストミックス、旅客は鉄道、貨物は自動車
時間が正確で使いやすい都市鉄道ネットワークを持っているのは日本だけだと氏はいうが、この本が新幹線駅の売店に平積みされていたというのは、偶然とは思えない。目からウロコ、そして元気が湧き出てくる増田理論の真骨頂、ぜひご一読いただきたい。
※写真は阪急電車の淀川鉄橋（梅田と十三の間 3/23撮影）。向かって左から京都線・宝塚線・神戸線の３複線が走り、眺めは壮観である。京都線（1959年完成）が１段高いのは、ジェーン台風（1950年）の時、河水が鉄橋の高さまで増水したからだという。
※本書の「なか見！検索」ができるamazonのサイト
http://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%96%87%E6%98%8E%E3%83%BB%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%9C%80%E5%BC%B7%E3%81%AE%E7%A7%98%E5%AF%86-%E5%A2%97%E7%94%B0-%E6%82%A6%E4%BD%90/dp/4569696317
