tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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若草山モノレール計画に、ユネスコ諮問機関(ICOMOS)が懸念を表明

2014年01月19日 | 奈良にこだわる
奈良県が若草山に設置を検討している「モノレール」の建設について、ユネスコの諮問機関であるICOMOS(イコモス)が懸念を表明した。この組織は「国際記念物遺跡会議」(ICOMOS/ International Council on Monuments and Sites)といい、文化遺産保護に関わる国際的な非政府組織(NGO)である。YAHOO!ニュース(毎日新聞 1月15日(水)8時20分配信)「<モノレール>奈良県、若草山で計画 イコモス委が懸念」によると、

世界遺産候補地を調査するNGO・国際記念物遺跡会議(イコモス)の日本イコモス国内委員会(委員長、西村幸夫・東大教授)が、世界遺産の春日山原始林(奈良市)に近接する景勝地・若草山に奈良県がモノレールの設置を目指していることに対し、懸念を伝える文書を送っていたことが14日、同県への取材で分かった。建設ルートは、「古都奈良の文化財」が1998年に世界遺産登録された際、緩衝地帯(バッファーゾーン)に指定されている。

県によると、文書は10日付で、荒井正吾知事宛て。寺社と一体となって文化的な価値を形成してきた自然環境を改変することへの懸念を表明している。荒井知事が昨年の9月定例県議会で、基準の厳しい国内法に従って手続きを進めれば、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会への通知は不要と発言しており、保護を軽視していると批判している。世界遺産委員会が、危機遺産に認定する可能性も指摘している。

名勝・奈良公園に含まれる若草山へのモノレール構想は、観光客の集客増による地域活性化などを目的に浮上した。県は自然環境などへの影響調査を実施中で、実施の正式決定はしていないが、環境保護団体などからは反対の動きが出ている。県奈良公園室は取材に「強硬に進めるつもりはない。国内委員会には接触を持ち、2月に開く奈良公園の整備検討委員会にもオブザーバーとして参加してほしいと伝えたい」としている。【釣田祐喜】


この問題については、Facebookなどで激しい議論が巻き起こっている。かいつまんで紹介すると、

■Tさん 私は、奈良に生まれ奈良で育ちました。小さい頃から若草山が大好きです!モノレールについては、大反対です!
■Yさん 私は奈良出身ではないですが、この町の景観・歴史・人 が大好きになり住むようになりました。後世の方々に誇れる決断が必要ですよね。やっぱり、モノレールは不要かと…

■Kさん このまま強行すれば、危険遺産として認知され、取り消しになる方向です。
■Oさん 観光の活性化するには、他にもっとする事があるでしょう、奈良県民として恥ずかしいね。
■Wさん 儲けるために手段を選ばず? 文化遺産の本来持っている底力を昔の人はもっと知っていて、純粋に評価し、汗を流すのをいとわなかったけど、あまりにも安易に事を運ぼうとする知識人が多くなりすぎましたね 文明の利器に頼りすぎて大変なことにならなければいいけど、というしか我々はしょうがないんでしょうか?

■Kさん この施設が何故またゾンビの如く、と云うと「山麓の悲願」とでも云うモノで、これが日本の公共工事が止まらない1つの要因、とも思えます。(中略) 大正時代に計画されて当時のドライブウェイが出来るので、麓からも上がれる様に、との陳情はある意味理解出来る部分は有ります。麓を介さずに上まで上がられたら、堪ったモノではないでしょう。しかし、それからもう100年近く経ち、状況は変わっていて、このモノレールで、麓が活性化するとは、どう考えてもムリが有ります。
■Wさん 文化財が観光資源に短絡してしまう安易さが怖いです。しっかり根を下ろして一見の観光客で施設、環境を壊すことなどしないで、しっかりとした保存がなされている奈良県を見てもらえる来県者を増やす事に傾注できないのでしょうかね

■Kさん ユネスコからのストップが入ってしまったので、これは考えないとマズいでしょう。奈良だけで決める案件では無かったと云う事を知事だけではなく議会も、県民も、考えないといけないと思っています。
■Nさん 奈良だけのローカルの問題でなく日本にとって世界にとって問題だというのは自明の理です。
■Sさん 奈良県の200人に聞きました、で「反対」と「賛成+どちらでもない」が約半々には驚きました。


最後のSさんの発言は、県が実施したアンケートの結果である。関テレニュースによると《県が住民200人に対して去年9月に行ったアンケート調査では計画に「賛成」が52%、「反対」が26%、「どちらでもない」が18%だったということです》とある。「賛成」52%、「反対+どちらでもない」44%と、賛成が上回っていたのだ。

(3/9追記)中外日報(2/22付)が「観光客誘致に戸惑う宗教者」として詳しく報じた。
(1/20追記)モノレール計画につき、あをによし南都さんから当ブログ記事にコメントをいただいたので以下、青字で追記しておく。
奈良のあるべき姿について、ふたつの見方が根本にあり、今後も類似の問題、議論が生まれると思います。ひとつの考えが、奈良はあくまで利益誘導のための道具であり、目先の利益の為には何でもありき。もう一方は、奈良のあるべき姿は古都としての佇まいであり、これを守ってこそ、奈良の価値を維持できる、との考え方でしょうか。

奈良の希少性がどこにあるのか、奈良に憧れをもって訪ねてくる観光客の観点からすると、明らかに後者でしょう。今回、ユネスコの視点からも後者の視点を支持していることは明らかです。ユネスコからこんな指摘を受けることに恥ずかしささえ感じます。

前者については赤字経営で存続が難しいほどなら、モノレールでない別の救済方法があろうかと思います。平城宮跡の車両基地計画、春日神社参道のコンクリ舗装計画、大仏殿バス停近くの駐車場計画等常に危機はありました。馬鹿げた開発から守ってこれた奈良の歴史自然景観は先達の努力のお蔭ですが、こういった過去からの取組を無駄にしないよう、後世のためにも奈良を守っていかなければなりません。奈良憲章のようなものを策定し、古都奈良の歴史自然をしっかり守っていくことを共有の理念としてシェアすることが必要かもしれません。


すでに若草山頂へは奈良奥山ドライブウェイが通じている。「バリアフリー」をいうなら、今でも車で搬送するという手段が取れるので、あまり意味がない。「観光活性化」にしても、一時的な集客増は見込めても、それが長続きするかは不透明だ。すると「山麓の悲願」だけが理由なのか…。

モノレールと聞くと、私などの世代はどうしても「姫路市営モノレール」を連想してしまう。《兵庫県姫路市の姫路駅から同市の手柄山中央公園にあった手柄山駅までを結んでいた鉄道(モノレール)路線(廃線)。1966年に開業したが営業不振などにより1974年休止、1979年廃止となった》(Wikipedia)という代物である。

若草山モノレールについて、県(奈良公園室)は「強硬に進めるつもりはない」ということだ。県内外から幅広く意見を聞き、慎重に対応していただきたいものである。
コメント (6)
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