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ジョン・レノン「マザー」/John Lennon & Plastic Ono Band “Mother”

2018年03月08日 | 日々是雑感
1月6日(土)、鎌田東二氏(哲学者・宗教学者)の「和歌と宗教~日本文化の真髄」(放送大学面接授業)という講義を受けてきた(85分×4本)。冒頭、『古事記』において亡き母(イザナミノミコト)を思慕し啼(な)きいさちる(泣きわめく)スサノヲノミコトと対比されたのが、ジョン・レノンの「マザー」だったので、いきなりアッパーカットを食らったような衝撃だった。この歌について、Wikipedia「マザー (ジョン・レノンの曲)」から抜粋すると、

マザー(Mother)は、1970年に発表されたジョン・レノンの曲。ビートルズ解散後初のソロ・アルバムである『ジョンの魂』のオープニング曲で、シングルとしても発売された。この曲はジョンの幼いころの体験が原初療法という精神療法によって炙り出された作品である。

ジョンは、1940年10月9日にリバプールで船員として働いていた父アルフレッド・レノンと母ジュリアとの子として生を受けたが、すぐに父は蒸発してしまう。母は他の男と暮らし始め、ジョンはジュリアの姉のミミ夫婦に預けられた。



ジョン5歳の時、突然アルフレッドが姿を現しジョンを連れ出すが、ジュリアと親権を巡っていさかいとなる。結局ジョンは母ジュリアを選ぶのだが、ジュリアは再びジョンをミミ夫婦のもとへ預け、一緒に暮らさなかった。アルフレッドも、また行方がわからなくなってしまう。

この体験によって負わされたジョンの深い心の傷が、本曲の「母さん、いかないで!(Mama, don't go)父さん、戻ってきて!(Daddy, come home)」という叫びに現れている。また、「子供達よ、僕の過ちを繰り返すな。僕は歩けもしないのに走ろうとした。」というメッセージも添えられている。


反抗的で喧嘩騒ぎを起こすことも多かったジョン少年は、母からバンジョーを与えられ、次第に音楽に関心が向くようになる…というストーリーだが、5歳の時の心の傷は深く、のちにアーサー・ヤノフによるプライマル療法(原初療法)によりその痛み(スピリチュアル・ペイン)を解放し、歌に昇華する。それが「マザー」だ。もとの歌詞と日本語訳を載せておく。最後の「Mama, don't go.Daddy, come home.」は10回のリフレイン(くり返し)だ。

Mother - John Lennon/Plastic Ono Band

Mother, you had me but I never had you
I wanted you, you didn't want me
So I, I just got to tell you
Goodbye, goodbye

Father, you left me but I never left you
I needed you, you didn't need me
So I, I just got to tell you
Goodbye, goodbye

Children, don't do what I have done
I couldn't walk and I tried to run
So I, I just got to tell you
Goodbye, goodbye

Mama, don't go
Daddy, come home

お母さん 僕はあなたのものだったけど
あなたは僕のものではなかった
僕はあなたを求めたけれど
あなたは僕を求めなかった
お母さん さようなら

お父さん あなたは僕をすてたけれど
僕はあなたをすてられなかった
僕はあなたが必要だったけれど
あなたは僕を必要としなかった
お父さん さようなら

こどもたちよ
僕の失敗を繰り返さないで
僕は歩けないのに
走ろうとしたんだ
君たちに言うよ さようなら

お母さんいかないで
お父さん帰ってきて(×10回)


改めて歌詞を読むと、ジョンの魂の叫びが、あますところなく表現されている。鎌田氏は「詩人は彼個人の哀しみや歓びを、それが人間的普遍性をもつような形に凝固させなければならない。詩人の魂には、その民族、その宗教、いえ、全人類の集合的記憶が蓄えられている」(トマス・インモース著『深い泉の国「日本」』中公文庫 解説=鎌田東二)と語る。

「母の不在」を嘆き「根の国」を憧憬して啼きいさちるスサノヲは、こうしてジョン・レノンと根っこのところでつながるのである。
※参考=スピリチュアルケアと歌物語(鎌田東二著 PDF)
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