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清酒発祥地・奈良を日本遺産に!/奈良新聞「明風清音」第6回

2018年07月04日 | 奈良にこだわる
毎週水曜日に掲載される奈良新聞の「明風清音」、第3水曜日は私の当番である。先月(6/20付)紹介されたのは「清酒発祥で日本遺産」だった。兵庫県の伊丹市など5市は、「日本酒文化発祥の地」として、日本遺産の認定を得るため現在、準備作業を進めている。わが奈良県としてもこれに対抗すべく日本遺産認定をめざすべきだ、というのが今回の私の主張である。
※トップ画像は、奈良県酒造組合のホームページから拝借

奈良県下には、日本酒にまつわるさまざまな遺跡・遺物や伝承が残されている。桜井市にはお酒の神さまを祀る大神神社と活日(いくひ)神社がある。味酒(うまさけ)は三輪の枕詞だ。天理市の石上神宮には、『日本書紀』に登場する厳甕(いつべ=お神酒を醸す甕)が残る(県指定文化財)。戦勝を祝う酒宴で神武天皇軍が歌った久米歌は、宇陀市で歌われた(『古事記』に記載がある)。

奈良市の春日大社には国内最古といわれる酒殿(酒蔵)があり、今も使われている。酒造の神さま・壺神神社は、春日大社の境内末社である。奈良市の正暦寺では、嘉吉年間(室町時代)に清酒製造のルーツである諸白(もろはく)造りが創案された…。

すぐに思いつくものだけで、こんなにある。これらをうまくつなげて「ストーリー」とし、日本遺産認定を受けて奈良県の観光振興・地域活性化に役立てたいものである。では、以下に記事全文を紹介する。

清酒発祥で日本遺産
本年3月、伊丹市と周辺4市は「日本酒(清酒・酒)をテーマとした日本遺産の認定を目指す」と表明した。申請に要する業務は電通の神戸支社が受託し現在、準備作業を進めている。

同市の公式サイトによると「江戸時代から現代にいたるまで栄える酒どころである阪神間地域において、地域に根付く文化的資源や酒造りなどをもとに総合的なストーリーを構築」するという。

私は本欄で「奈良を日本酒の聖地に」と提案した(2月21日付既報)。奈良市の正暦寺(しょうりゃくじ)は清酒の発祥地だし、桜井市にはお酒の神さまをまつる大神神社や杜氏(とうじ)の祖神をまつる活日(いくひ)神社がある。春日大社には日本最古といわれる重文の酒殿(酒蔵)がある。「うま酒」は額田王の時代から「三輪」の枕詞だ。

伊丹市は今もサイトで「清酒発祥の地」を標榜(ひょうぼう)し、「清酒発祥の地」という碑まで建てているが、これは誤りだ。元奈良県工業技術センター所長で「なら泉勇斎」店主の山中信介さんは「『御酒之日記』『童豪酒造記』などに記されているとおり清酒発祥地は正暦寺で、この寺で醸された南都諸白(もろはく)が清酒のルーツです」と明言する。

さらに調べると「この寺の寺院酒造が軌道に乗り、ようやく隆盛のきざしを見せたのは嘉吉年間(1441~1444)であった」(『日本の酒の歴史』研成社刊)。この寺では「『多聞院日記』にみられるように、三段仕込みや上槽(もろみを漉すこと)、酒焚き(火入れ)の新しい醸法をもって、諸白造りが創製された。これはその後の清酒の原型となり、やがて南都諸白から伊丹諸白へと移動し、近世酒造業へ橋渡しされていった」(『国史大辞典』)。

一方、伊丹市のサイトには「山中鹿之助幸盛の子とされる新六幸元(しんろくゆきもと)が清酒の醸造法を確立したのは1600年(慶長5年)頃とされている。それまでの濁酒(にごりざけ)と違い、洗練された澄酒(すみざけ)はたちまち人気を博した」とある。つまり、伊丹諸白は南都諸白に遅れること160年にしてでき上がったのである。

伊丹市と奈良市は平成26年からイベントを持ち回りで開催している。一旦は「平和的に解決」していたのである。「清酒発祥の地を互いに標榜している奈良市と伊丹市が、競合するのではなく古くから清酒を製造販売していることを縁に、清酒の普及促進と日本酒文化の更なる発展を目指すため、『清酒発祥の地フェスタ』を奈良市で開催いたします」(平成26年11月21日付奈良市報道資料)。その後、ヤマタノオロチ退治の八塩折之酒(やしおりのさけ)の伝承で知られる出雲市が参加し、現在は3市の持ち回りとなっている。

3月の伊丹市などの行動を受け「奈良の食文化研究会」「奈良県菩提もとによる清酒製造研究会」「奈良まほろばソムリエの会」は協議を行った。結論は「阪神間の5市が日本酒をテーマに日本遺産を申請するのであれば、奈良市や桜井市は一致協力して日本酒・清酒の発祥地として日本遺産を申請すべきである」。

とはいえ日本遺産の申請者は「市町村」なので、行政が動いてくれないと話は始まらない。予算がつかなければ協力者を公募してでも、ぜひとも申請してもらいたい。我々も協力は惜しまない(てつだ・のりお=奈良まほろばソムリエの会専務理事)。


日本遺産は2020年度までに100件を認定する予定だ。2018年度までですでに67件認定されているから、今後認定されるのは、あと2年で33件だ。競争率は高いが、オール奈良県で「日本酒・清酒」の発祥をアピールし、日本遺産認定をめざしたいと思う。

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