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お茶の鉄人!和束町の上嶋伯協(のりやす)さん 化学肥料を使わない有機栽培茶を生産/奈良日日新聞「奈良ものろーぐ」第27回

2018年07月20日 | 奈良ものろーぐ(奈良日日新聞)
毎月1回(第4金曜日)、奈良日日新聞「奈良ものろーぐ」欄に寄稿している。先月(6/22付)寄稿したのは「お茶の鉄人・上嶋伯協さん ほんまもんの和束茶を提供」だった。奈良から県境をまたいだ和束町(京都府相楽郡)の話だ。

和束町はてん茶(碾茶=抹茶の原料となる茶葉)の生産で日本一だ。てん茶は国内で「抹茶ソフト」「抹茶ポッキー」などに使われるほか、輸出もされる。この輸出が過去最高を更新したというから驚きだ。昨日(7/19付)の日本経済新聞には「緑茶輸出、最高ペース 抹茶ラテやスイーツに 単価も高値圏」という記事が出ていた。一部を抜粋すると、

緑茶の輸出量が拡大している。今年は5月までで約2千トンとなり、1~5月として統計を遡れる過去30年で最大となった。抹茶を飲料や食品に使うなど米国やアジアの需要が伸びており、年間でも最多輸出を更新しそうだ。輸出単価も高値圏で推移している。

貿易統計によると2018年1~5月の緑茶輸出量は1978トンと前年同期比で4%増。17年の年間輸出量は4642トンと過去最高を記録しており、輸出が順調に伸びれば今年も年間ベースで最高を更新する見込みだ。

輸出をけん引するのが専用の緑茶を粉末状にした抹茶需要の伸び。「抹茶ラテ」をメニューに取り入れる大手カフェチェーンが相次いでいるほか、スイーツに抹茶を使う動きも広がっている。輸出量の3割を占める米国向けは1~5月が前年同期比2%増の569トンとなり、全体を押し上げている。

JA京都やましろ(京都府京田辺市)は4月に抹茶の加工機械を導入した。すでにイスラム教の戒律にのっとったハラールの認証を取得。将来はイスラム圏の国への輸出をめざす。

日本からEU諸国への緑茶輸出は3.2%の関税(3キロ以下)がEPA発効後に即時撤廃となるため、現地での利用増に期待がかかっている。欧州は農薬や化学肥料を使わない有機栽培での抹茶を求めるケースが多く「対応可能な農家の原料によって輸出を検討したい」(JAかごしま茶業)という。


やはり「欧州は農薬や化学肥料を使わない有機栽培での抹茶を求める」ケースが多いのだ。この流れに乗り遅れると、今後の展開が苦しくなる。では有機栽培のお茶を生産している上嶋さんを紹介する。



先月に引き続き、今月もお茶の話を。舞台は和束町(京都府相楽郡)。木津川市の北東に隣接し、奈良市の市街地からは車で30分ほどのところにある。「和束茶カフェ35」(同町白栖大狭間)で上嶋伯協(うえじま・のりやす)さん(62)にお話をうかがった。

上嶋さんに初めてお目にかかったのは本年2月、和束町商工会の会合の席だった。お話が面白く「これはスゴい人では」と直感し、アポイントを入れさせていただいた。彼は約90年の歴史のある「京都府茶審査技術競技会」(業者が茶の鑑識眼を競う大会)でこれまででただ1人、満点で優勝した「お茶の鉄人」だ。化学肥料を使わず有機栽培のお茶を生産・販売されている。

和束町の茶栽培の歴史は古い。鎌倉時代前期、海住山寺(加茂町)の覚真が明恵上人から茶の種子を分けてもらい、鷲峰山麓に栽培したのが始まりとされる。和束茶は宇治茶の約5割を占め、てん茶(抹茶の原料となる茶葉)では、日本一の生産量を誇る。

「上嶋爽禄園(そうろくえん)は江戸時代の創業で、私で5代目です。耕作地を広げたかったので22~32歳までの10年間、茶業の傍ら国鉄でアルバイトをしました。深夜労働でしたのでキツかったです。稼いだおカネで耕作地を買い増し、今は当初の3.7倍の5.5ヘクタールになりました」

「お茶の小売りもしました。24歳のとき元興寺の境内に模擬店を出しました。隣りに出店していた泉原(大和郡山市)の奥さんたちにいろんなお茶を試飲してもらい、率直な感想をいただきました。茶作りに一番大切なのはお客さんの声だと思っています」。

こんな話も聞いた。お茶の新葉の裏には毛茸(もうじ)といううぶ毛のようなものがある。幼い葉を保護するために生え、成長して葉が硬くなるとなくなる。「上等な新葉がたくさん入っている証拠なのに『ホコリが入っている』というクレームの電話をいただき、一生懸命説明したことがありました」。

ザ・リッツ・カールトン京都では、上嶋さんがブレンドした煎茶「山紫水明」が販売されているほか、ラウンジで行われる古儀藪内流(こぎやぶのうちりゅう)のお点前でも、爽禄園の抹茶がふるまわれている。

「平成27年、日本がホスト国となって開いた『国際女性会議WAW!』の会場で、オリジナルの『和美茶美』を安倍首相夫妻やケネディ前駐日大使にお飲みいただきました。皆さん『今まで飲んだお茶とは全然違う』と驚かれていました」。

「今、残念なのは、日本の家庭から急須がなくなってきていること。かつては各家庭のちゃぶ台の上には急須と茶葉があって、一家団らんを楽しみながらお茶を飲んでいました。今はそんな習慣もすたれ『ティーバッグやペットボトル茶しか飲んだことがない』という人が増えています」。

上嶋さんは「おもてなし煎茶師」という制度を考案された。「カリスマ伝道師」「師範代」などのランクがある。日本のお茶文化を守ることが目標だ。上嶋さんの名刺の裏には「土に命を 茶に愛を 人に幸せを」とある。お茶を通じて日本文化を守り伝えていただきたいものである。


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