tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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吉野の桜と権現信仰 by 田中利典師

2016年12月30日 | 奈良にこだわる
クリスマスイブの12/24(土)、「桜とともに生きる~吉野・生命と再生の聖地~ in 奈良」という素晴らしいシンポジウムを拝聴した。その模様はまた日を改めて紹介したいが、蔵王権現と吉野山のシロヤマザクラのことを考えているうち、田中利典師(金峯山寺長臈、修験者)が最近になってブログに書かれた文章を思い出した。2014年11月22日、東京日本橋三越前の「奈良まほろぼ館」での講話である。
※写真はいずれも、利典師のFacebookから拝借

それは連続講演「伝えたい世界遺産『吉野』の魅力」の第6回だ。思い起こせば第1回はこの私が「入門!古事記・吉野・神武東征」というお話をした。紀州九度山に生まれ、母が吉野郡大淀町、父方の祖母が五條市の出身なので、吉野には子どもの頃から思い入れが深い。なのでこんなお役目を引き受けたのだが、お歴々の中で、よくまあこんな無謀なことをしたものである。それはともかく、以下、利典師の全文を引用する。

 体を使って心をおさめる 修験道入門 (集英社新書)
 田中利典
 集英社

※名著『体を使って心をおさめる 修験道入門』。これまで2回、当ブログで紹介!(1回め2回め)。

「権現とご神木の山桜」
日本では仏教が伝来してきて、最初少し蘇我氏と物部氏との争いがありますが、基本的に神様と仏さまは仲良くやって参りました。日本人は元々仏さまを神様として受け入れたんです。それは『日本書紀』を読むと、外来から来た仏さまのことを「アダシクニノカミ」、「蕃神(ばんしん)」と書いています。元々、仏さまと神様を分けていなかった。仏ではなく新しく外国から来た神様なのです。そして元々いる神様と外国から来た神様で仲良くなっていくわけであります。

で、仲良くなっていって「本地垂迹」という日本独特の考え方が、ここで生まれてくるわけであります。月の光が湖や沼や水たまりに映るさまような、この場合本体の月が「本地」=仏さんであるとすると、その池に映った月というのは「垂迹」つまり神様。神様と仏さまは、実はそういう関係にあって、同じものである、そういう考え方です。

吉野には釈迦・観音・弥勒の権化である蔵王権現、熊野には熊野三所権現。本宮の家都御子神(けつみこのかみ)様が阿弥陀如来。ですから本宮は阿弥陀浄土ということで、時宗の一遍上人がそこでお悟りを開かれたといわれます。それから、新宮速玉の神様は薬師如来。那智の夫須美の神様は千手観音、というような権現といいますか、神様と仏さまを融合させた信仰が生まれた。



羽黒は、羽黒権現は、これは観音さんの本地。白山は、白山妙理権現、これは十一面観音尊が本地。富士山は浅間(せんげん)大菩薩、これは大日如来が本地。京都には愛宕神社、愛宕権現というのは、これは地蔵菩薩の権化。江戸は徳川家康が死んで、東照大権現になった。これは薬師如来の権化というような、神様と仏さまを融合させたそういう信仰。それが権現信仰です。

ですから権現というのは、神でもあり仏でもある。その権現様を役行者は祈りだした時に山桜の木に刻んでお祀りしたところから、吉野では山桜は蔵王権現の御神木として、千年単位に人々が大切に守ってきまして。

そして、山を埋め、谷を埋め、千本桜ー花の名所になっていったわけでありますが、先ほど申し上げましたように、江戸の八代将軍吉宗の時に始まった庶民の花見より、はるかに以前に信仰の形で吉野では花がたくさん植えられてきて、それを人々が見るようになってきた。権現信仰あるいは金峯山寺というお寺の関係と、この山桜、吉野の桜というのは、大変深い関係があるわけであります。

連続講演「伝えたい世界遺産『吉野』の魅力」(第6回)平成26年11月22日
奈良まほろぼ館講座「吉野と嵐山の縁(えにし)~後嵯峨/亀山上皇と吉野と嵐山~」より


 奈良大和路の桜 (奈良を愉しむ)
 田中利典/桑原英文
 淡交社

このように吉野山の桜(主にシロヤマザクラ)は「権現信仰」のたまものである。吉野町のHPにも、

日本全国の多くの桜の名所では、近代になってから桜並木を整備したり、古くからある古木を大切に 保護したり、いわゆる「花見」のために桜を植栽・管理しています。しかし、吉野の桜はそれらのものと は異なり、「花見」のためではなく、山岳宗教と密接に結びついた信仰の桜として現在まで大切に保護されてきました。

その起源は今から約1300年前にさかのぼります。その当時は、山々には神が宿るとされ、吉野は神仙の住む理想郷として認識されていました。のちに修験道の開祖と呼ばれる役小角(役行者)は、山上ヶ岳に深く分け入り、一千日の難行苦行の果てに憤怒の形相もおそろしい蔵王権現を感得し、その尊像こそ濁世の民衆を救うものだとして桜の木に刻み、これを山上ヶ岳と吉野山に祀ったとされています。

その後、役行者の神秘的な伝承と修験道が盛行するにつれて、本尊を刻んだ「桜」こそ「御神木」としてふさわしいとされ、またそれと同時に蔵王権現を本尊とする金峯山寺への参詣もさかんになり、御神木の献木という行為によって植え続けられました。また、吉野にはその桜に惹かれて、多くの文人墨客が訪れています。


吉野山の桜は、これまで何度も見てきたが、何度見てもまた見たくなる。人が多くて大変なのだが、山上で1泊して、早朝にじっくり桜を見るのがいい。来年も平日をねらって出かけたい。





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