「観光地奈良の勝ち残り戦略」シリーズは、早くも89回目を迎えた。私は「奈良のうまいもの部会」(県農林部)メンバーになった2003年頃から、奈良の観光振興について考えるようになった。ブログを始めた2005年以降は、奈良観光について感じたこと・考えたことを、勉強のためにと当ブログに書き連ねてきた。このタイトルは、藻谷浩介氏が奈良市で行った名講演「観光地奈良の生き残り戦略」からいただいたものだ。
※写真はすべて、Mくん(南都銀行の社内報編集者)の撮影。いつも上手に撮ってくれる
延々と12年もの間、奈良観光について考えてきた訳だが、「何となく見えてきたな」と感じたのは2010年の「平城遷都1300年祭」で、平城宮跡探訪ツアーの「ボランティアガイド」を担当した頃だ。観光について内側(提供側)から見る良い機会になった。私はこの年に「奈良まほろばソムリエ」の資格も取得した。
前置きが長くなった。2015年4月8日(水)、南都銀行本店6階大ホールにおいて、「これで分かる!ハラール対応セミナー」を開催した(主催:南都銀行 協力:南都経済研究所)。奈良を訪れる外国人観光客の増加に伴い、ムスリム(イスラム教徒)の来訪も増えている。これらの方々をもてなすには「ハラール」(イスラム教の戒律で許されたもの)に関する正しい知識が必要と考え、このセミナーを企画したものだ。式次第は
第Ⅰ部
講演「ハラール対応入門」
講師 一般社団法人ハラルジャパン協会 代表理事 佐久間朋宏氏
第Ⅱ部
講演「ハラール食の実際」
講師 株式会社 梅守本店 代表取締役 梅守康之氏/新規事業部 梅守志歩氏
開会挨拶に立つ和田悟部長(南都銀行 公務・地域活力創造部)
当日は、ホテル・旅館、レストラン・料理店、自治体関係者など、110名の方にご来場いただいた。手元のメモに基づいて、当日の様子をざっと紹介する。なお、正式な講演録は、南都経済研究所の「ナント経済月報」2015年5月号に掲載される予定である。
講演では冒頭、南都銀行公務・地域活力創造部の和田悟部長が「インドネシア、マレーシア、インドなど、奈良にも多くのイスラム教徒のお客さまが来られています。今日の話をヒントに、多くの方々を奈良観光に引きつけてください」と挨拶。引き続き講演がスタートした。
第Ⅰ部 講演(佐久間朋宏氏=トップ写真)
「ハラール」を知っているか否かで今後大きな差ができるが、まだ緒についたばかり。今日、ここに来られている皆さんは、トップランナーだ。ハラールは一過性のブームではなく時代の潮流(トレンド)であり、今後ますます重要になる。ハラールは「イスラムの聖典で許されたもの」。食べ物だけでなく、ライフスタイル全般にわたる。時間を守る、人を傷つけない、戦争をしないなど。
イスラム教徒は親日家でアジアに半数。熱帯の砂漠に多く住むので、甘いもの・辛いものを好む。肥満体や糖尿病が多く、我々より寿命が短い。だから健康・長寿でスリムな日本人を尊敬している。食べ物については豚および豚由来のものはダメ(ノンハラール)。ゼラチン、ショートニングや乳化剤に豚由来のものが入っていてもダメ。
牛・鶏・羊・鹿肉は食べるが、イスラムの法に則って殺処分したものが望ましい。基本的に土・川・海由来のものはハラール。だからお茶や焼海苔や鯨肉はハラール。生きた動物から獲れたもの(鶏卵、牛乳など)もハラール。酒(飲むアルコール)はダメ。アルコール添加した味噌・醤油もダメ。アルコール消毒は、他に消毒用の代替品がなければ、ハラールになる。
「ハラール認証」は約40年前、多民族国家であるマレーシアで生まれた。多種多様な輸入品の中から、ハラール商品を即座に見分けられるよう、マークを付けたのが始まり。ハラール認証はISO同様、「施設の認証」。
①材料がハラールか
②工場全体がハラールか(または専用ラインがあるか)
③製品を管理(分別)しているか
④イスラム教徒を雇用しているか(またはチームを作って管理をしているか)。
東京五輪では訪日外国人は約2,000万人と予想、するとイスラム教徒は100~150万人となり、これは昨年来日した韓国人や台湾人のレベルだ。「ハラール」だけにとらわれず、「ベジタリアン料理」や「英語表記」などの外国人対応と一緒に進めればよい。ハラール食品は、日本人向けには「ヘルシーな食品」として売れる。
在日イスラム教徒は約20万人。彼らは輸入したハラール食品を食べている。まずは彼らに奈良に来てもらい、奈良のハラール食を食べてもらおう。ハラールのお土産もいい。岡山のきびだんごや沖縄の黒糖菓子には、ハラール認証を受けたものがある。食べ物以外ではホテルなどでの「お祈りスペース」の確保も大切だ。
単にハラールだけでなく「ハラールで、しかもおいしい」を考えなければならない。精進料理では「味がない」といわれるだろう。ムスリムが好むのは1にラーメン、2に和牛(しゃぶしゃぶ、すき焼き、焼肉など)、3に天ぷらなどの揚げ物。寿司は食べるが、刺身はほとんど食べない。
食に関しては、4つの質問をすれば失敗しない。
①どこの国から来たか
②刺身が食べられるか(食べられれば、レパートリーがグッと広がる)
③来日は何度目か(回数が多ければ、新たな食にチャレンジしてもらう)
④酒(アルコール)は飲むか
イスラム教徒にも個人差がある。これらの情報を料理長に知らせれば良い対応ができる。(「豚肉は食べるか」は聞いてはダメ。)日本でもハラールの和牛が手に入るし(業務スーパーなど)、たいていの大学の近辺では、ハラール食品が充実している。
日本で「完全ハラール」はムリで、そんなことをすれば、逆に日本人客を失ってしまう。「ノーポーク・ノーアルコール」とか「ムスリムフレンドリー」(食材はハラールだが、アルコールは出す 等)などの「寛容なハラール」もある。美濃吉やホテルグランヴィアも、ムスリムフレンドリーだ。
大切なのは、取り組みの「情報開示」で、これを少なくとも英語でやるのが望ましい。最後に。ハラール対応はあわてず、まずは勉強し、参入に備えて準備を。取り組んだら旗を上げる(Webなどで公開)。すると国内外から注目される。皆さんはトップランナーだ。ぜひ頑張っていただきたい。
梅守康之氏(梅守本店 代表取締役)
第Ⅱ部 講演
[梅守康之氏]寿司の製造・販売をしている。かつて重病で入院している子供たちにクリスマスイブの夜、こっそり寿司を持ち込んで食べてもらった。そのときの笑顔が忘れられない。平成25年に寿司づくり体験「うめもり寿司学校」を始めた。香港などからの外国人観光客に人気で、これまで約2万人が来られた。「イスラムの人が食べ物に困っている」と聞き、ハラール認証に取り組んだ。今後「オール奈良県」で、一丸となってインバウンドやハラールに取り組めないかと考えている。
梅守志歩氏(梅守本店 新規事業部)
[梅守志歩氏]ハラール認証への取り組みは、昨年8月にスタート。プレ監査で認証取得が可能か見てもらい10月に本監査、11月に認証を取得。3ヵ月の短期間だったが、熱が冷めないうちにタイムスケジュールを決めて取り組むことが大切。当社は和食なので、野菜(土のもの)や魚(海のもの)が多く、認証が取りやすかった。
全ての原材料の「商品企画書」を取り寄せ、チェックした。疑わしいものはそのモトにまで遡り、ハラールであるかどうか確認した。社内スタッフへの教育・周知徹底が大切。イスラム教の教えを正確に知り、理解して取り組むことが必要だ。
このあと質疑応答と、南都銀行バリュー開発部・大田直樹部長の閉会挨拶で終了。県下では珍しいハラールのセミナーだったので「ハラールの基本的な考え方が分かった」「目からウロコが落ちた」「当社でも対応を進めていく」とご好評いただいた。
このセミナーに参加された金田充史さん(魚佐旅館専務)が、Facebookで当日の様子を紹介して下さった。
昨日なんですが、ハラールの研修会に参加。南都銀行の公務・地域活力創造部さんの企画で、こんな研修会をして貰えた事に感謝せねばなるまい。今、日本に来られている外国人さんがも急増している昨今、このハラールも、避けて通れない案件となった。しかし、このハラール程、私たち日本人になじまないものは無いって感じがする。しかしながら、このハラールの問題、今の私たちが、普段、ナニを喰っているかを、再検証し、また、そんなので良いか悪いか、と云う事を考え直す機会にもなりそうだ。
豚がアウトって云うのは、これは有名だが、それだけではない。豚を使用している、全てのものがアウトなのだ、だから、ショートニングや乳化剤に、豚を原料としているものを、少しでも使えばアウトになる。だから、シーズニングなどに、少しでも混じればアウト。今の私たちの食材は、加工食品が多く、その原材料は様々で、これが、ハラールの対応を難しくしている。だから、通常に売っているパンもアウトなので、食パンとコーヒーって云う、単純な朝食でも、ハラールにならない。
生活習慣と宗教が絡んで、また、この基準がたくさんある、と来ているから、少しの理解は出来たが、まだまだハードルは高い。今、ネットでハラール対応の食材も出て、環境的には少し進んだ感もあるが、まだまだ高価だ。業務用食材としての価格での流通は少ない。それだけ、日本での市場が小さいのだが、今、ちょっと考えている事にも、これが引っかかってしまう。時間の取れる時にできるだけ沢山の知識を仕入れないと、この問題、一筋縄ではいかないぞ。
閉会挨拶する大田直樹部長(南都銀行 バリュー開発部)
この書き込みに対し、興味深いコメントが入っていた。奈良町にお住まいのMさん。《大学のときイスラム教の人がいて、カップ麺ひとつにも原材料を確かめていました。そのようすを見て、自分が食べているものに、ふだんどれだけ無頓着か、はっとさせられました》。
旅行業のTさん《イスラム教徒は豚関係がタブーなんですよね。去年行ったインドでは牛がタブーでした。理由は牛は神の使いで水を泳ぐのが上手くて、己が死んだ時に牛のしっぽにつかまって三途の川を渡らなければならないので生前に牛を食べると三途の川を渡る手助けしてもらえないからだそうです》。だからインドに「ビーフカレー」がない、という有名な話である。
金田さん《全世界での人口で、イスラムは、ほぼ1/3だそうで、この市場を見過ごすのは、もったいないって事なんですが、日本は、この点が遅れているのと、まだまだ、イスラム系の人たちが少ないので、商業として成立しないのが、難点だと仰ってました。しかし、いずれは、メジャーになるんでしょうねぇ》。
奈良観光では今、「インバウンド」が今後の成長分野として注目を集めている。県観光局は「今年はインバウンド元年」という。奈良県ビジターズビューローでは、インバウンドの促進に向け、ずらりと人材を揃えた。ハラールも、インバウンド促進の重要な要素である。
先日(4/16)は日本経済新聞が「イスラム客、和食に誘う 関西でハラル対応広がる 」という記事を載せていた。《関西の和食店でイスラム教の戒律に沿う「ハラル」メニューの提供が広がっている。がんこフードサービス(大阪市)は味や調理法を変えた天ぷらやすしを扱う店舗を増やす。グルメ杵屋は機内食向けの食材を増産する。和食人気に加え、関西を訪れる外国人客が増えていることが背景にある。がんこフードは京都ハラール評議会から認証を受け、がんこ寿司の京都三条本店(京都市)に続き、大阪法善寺店(大阪市)でも提供を始めた》とある。
梅守社長は「今後、オール奈良県でインバウンドやハラールに取り組もう」とお話になった。「奈良へ行くと、ハラール食に不自由しない」となれば、ASEANなどから多くのムスリム客が来られることだろう。ぜひ我々も手を携えて進めていきたい。
小雨の中、足をお運びいただいた皆さん、有難うございました! 参加されなかった皆さん、概要は上記の通りです。ぜひ、それぞれの持ち場で「ハラール対応」をお進めください。これを機会に、奈良を「ハラールの聖地」にしましょう!
※写真はすべて、Mくん(南都銀行の社内報編集者)の撮影。いつも上手に撮ってくれる
延々と12年もの間、奈良観光について考えてきた訳だが、「何となく見えてきたな」と感じたのは2010年の「平城遷都1300年祭」で、平城宮跡探訪ツアーの「ボランティアガイド」を担当した頃だ。観光について内側(提供側)から見る良い機会になった。私はこの年に「奈良まほろばソムリエ」の資格も取得した。
前置きが長くなった。2015年4月8日(水)、南都銀行本店6階大ホールにおいて、「これで分かる!ハラール対応セミナー」を開催した(主催:南都銀行 協力:南都経済研究所)。奈良を訪れる外国人観光客の増加に伴い、ムスリム(イスラム教徒)の来訪も増えている。これらの方々をもてなすには「ハラール」(イスラム教の戒律で許されたもの)に関する正しい知識が必要と考え、このセミナーを企画したものだ。式次第は
第Ⅰ部
講演「ハラール対応入門」
講師 一般社団法人ハラルジャパン協会 代表理事 佐久間朋宏氏
第Ⅱ部
講演「ハラール食の実際」
講師 株式会社 梅守本店 代表取締役 梅守康之氏/新規事業部 梅守志歩氏
開会挨拶に立つ和田悟部長(南都銀行 公務・地域活力創造部)
当日は、ホテル・旅館、レストラン・料理店、自治体関係者など、110名の方にご来場いただいた。手元のメモに基づいて、当日の様子をざっと紹介する。なお、正式な講演録は、南都経済研究所の「ナント経済月報」2015年5月号に掲載される予定である。
講演では冒頭、南都銀行公務・地域活力創造部の和田悟部長が「インドネシア、マレーシア、インドなど、奈良にも多くのイスラム教徒のお客さまが来られています。今日の話をヒントに、多くの方々を奈良観光に引きつけてください」と挨拶。引き続き講演がスタートした。
第Ⅰ部 講演(佐久間朋宏氏=トップ写真)
「ハラール」を知っているか否かで今後大きな差ができるが、まだ緒についたばかり。今日、ここに来られている皆さんは、トップランナーだ。ハラールは一過性のブームではなく時代の潮流(トレンド)であり、今後ますます重要になる。ハラールは「イスラムの聖典で許されたもの」。食べ物だけでなく、ライフスタイル全般にわたる。時間を守る、人を傷つけない、戦争をしないなど。
イスラム教徒は親日家でアジアに半数。熱帯の砂漠に多く住むので、甘いもの・辛いものを好む。肥満体や糖尿病が多く、我々より寿命が短い。だから健康・長寿でスリムな日本人を尊敬している。食べ物については豚および豚由来のものはダメ(ノンハラール)。ゼラチン、ショートニングや乳化剤に豚由来のものが入っていてもダメ。
牛・鶏・羊・鹿肉は食べるが、イスラムの法に則って殺処分したものが望ましい。基本的に土・川・海由来のものはハラール。だからお茶や焼海苔や鯨肉はハラール。生きた動物から獲れたもの(鶏卵、牛乳など)もハラール。酒(飲むアルコール)はダメ。アルコール添加した味噌・醤油もダメ。アルコール消毒は、他に消毒用の代替品がなければ、ハラールになる。
「ハラール認証」は約40年前、多民族国家であるマレーシアで生まれた。多種多様な輸入品の中から、ハラール商品を即座に見分けられるよう、マークを付けたのが始まり。ハラール認証はISO同様、「施設の認証」。
①材料がハラールか
②工場全体がハラールか(または専用ラインがあるか)
③製品を管理(分別)しているか
④イスラム教徒を雇用しているか(またはチームを作って管理をしているか)。
東京五輪では訪日外国人は約2,000万人と予想、するとイスラム教徒は100~150万人となり、これは昨年来日した韓国人や台湾人のレベルだ。「ハラール」だけにとらわれず、「ベジタリアン料理」や「英語表記」などの外国人対応と一緒に進めればよい。ハラール食品は、日本人向けには「ヘルシーな食品」として売れる。
在日イスラム教徒は約20万人。彼らは輸入したハラール食品を食べている。まずは彼らに奈良に来てもらい、奈良のハラール食を食べてもらおう。ハラールのお土産もいい。岡山のきびだんごや沖縄の黒糖菓子には、ハラール認証を受けたものがある。食べ物以外ではホテルなどでの「お祈りスペース」の確保も大切だ。
単にハラールだけでなく「ハラールで、しかもおいしい」を考えなければならない。精進料理では「味がない」といわれるだろう。ムスリムが好むのは1にラーメン、2に和牛(しゃぶしゃぶ、すき焼き、焼肉など)、3に天ぷらなどの揚げ物。寿司は食べるが、刺身はほとんど食べない。
食に関しては、4つの質問をすれば失敗しない。
①どこの国から来たか
②刺身が食べられるか(食べられれば、レパートリーがグッと広がる)
③来日は何度目か(回数が多ければ、新たな食にチャレンジしてもらう)
④酒(アルコール)は飲むか
イスラム教徒にも個人差がある。これらの情報を料理長に知らせれば良い対応ができる。(「豚肉は食べるか」は聞いてはダメ。)日本でもハラールの和牛が手に入るし(業務スーパーなど)、たいていの大学の近辺では、ハラール食品が充実している。
日本で「完全ハラール」はムリで、そんなことをすれば、逆に日本人客を失ってしまう。「ノーポーク・ノーアルコール」とか「ムスリムフレンドリー」(食材はハラールだが、アルコールは出す 等)などの「寛容なハラール」もある。美濃吉やホテルグランヴィアも、ムスリムフレンドリーだ。
大切なのは、取り組みの「情報開示」で、これを少なくとも英語でやるのが望ましい。最後に。ハラール対応はあわてず、まずは勉強し、参入に備えて準備を。取り組んだら旗を上げる(Webなどで公開)。すると国内外から注目される。皆さんはトップランナーだ。ぜひ頑張っていただきたい。
梅守康之氏(梅守本店 代表取締役)
第Ⅱ部 講演
[梅守康之氏]寿司の製造・販売をしている。かつて重病で入院している子供たちにクリスマスイブの夜、こっそり寿司を持ち込んで食べてもらった。そのときの笑顔が忘れられない。平成25年に寿司づくり体験「うめもり寿司学校」を始めた。香港などからの外国人観光客に人気で、これまで約2万人が来られた。「イスラムの人が食べ物に困っている」と聞き、ハラール認証に取り組んだ。今後「オール奈良県」で、一丸となってインバウンドやハラールに取り組めないかと考えている。
梅守志歩氏(梅守本店 新規事業部)
[梅守志歩氏]ハラール認証への取り組みは、昨年8月にスタート。プレ監査で認証取得が可能か見てもらい10月に本監査、11月に認証を取得。3ヵ月の短期間だったが、熱が冷めないうちにタイムスケジュールを決めて取り組むことが大切。当社は和食なので、野菜(土のもの)や魚(海のもの)が多く、認証が取りやすかった。
全ての原材料の「商品企画書」を取り寄せ、チェックした。疑わしいものはそのモトにまで遡り、ハラールであるかどうか確認した。社内スタッフへの教育・周知徹底が大切。イスラム教の教えを正確に知り、理解して取り組むことが必要だ。
質疑応答の時間に梅守本店のハラール弁当を紹介。司会・進行は私が担当
このあと質疑応答と、南都銀行バリュー開発部・大田直樹部長の閉会挨拶で終了。県下では珍しいハラールのセミナーだったので「ハラールの基本的な考え方が分かった」「目からウロコが落ちた」「当社でも対応を進めていく」とご好評いただいた。
このセミナーに参加された金田充史さん(魚佐旅館専務)が、Facebookで当日の様子を紹介して下さった。
昨日なんですが、ハラールの研修会に参加。南都銀行の公務・地域活力創造部さんの企画で、こんな研修会をして貰えた事に感謝せねばなるまい。今、日本に来られている外国人さんがも急増している昨今、このハラールも、避けて通れない案件となった。しかし、このハラール程、私たち日本人になじまないものは無いって感じがする。しかしながら、このハラールの問題、今の私たちが、普段、ナニを喰っているかを、再検証し、また、そんなので良いか悪いか、と云う事を考え直す機会にもなりそうだ。
豚がアウトって云うのは、これは有名だが、それだけではない。豚を使用している、全てのものがアウトなのだ、だから、ショートニングや乳化剤に、豚を原料としているものを、少しでも使えばアウトになる。だから、シーズニングなどに、少しでも混じればアウト。今の私たちの食材は、加工食品が多く、その原材料は様々で、これが、ハラールの対応を難しくしている。だから、通常に売っているパンもアウトなので、食パンとコーヒーって云う、単純な朝食でも、ハラールにならない。
生活習慣と宗教が絡んで、また、この基準がたくさんある、と来ているから、少しの理解は出来たが、まだまだハードルは高い。今、ネットでハラール対応の食材も出て、環境的には少し進んだ感もあるが、まだまだ高価だ。業務用食材としての価格での流通は少ない。それだけ、日本での市場が小さいのだが、今、ちょっと考えている事にも、これが引っかかってしまう。時間の取れる時にできるだけ沢山の知識を仕入れないと、この問題、一筋縄ではいかないぞ。
閉会挨拶する大田直樹部長(南都銀行 バリュー開発部)
この書き込みに対し、興味深いコメントが入っていた。奈良町にお住まいのMさん。《大学のときイスラム教の人がいて、カップ麺ひとつにも原材料を確かめていました。そのようすを見て、自分が食べているものに、ふだんどれだけ無頓着か、はっとさせられました》。
旅行業のTさん《イスラム教徒は豚関係がタブーなんですよね。去年行ったインドでは牛がタブーでした。理由は牛は神の使いで水を泳ぐのが上手くて、己が死んだ時に牛のしっぽにつかまって三途の川を渡らなければならないので生前に牛を食べると三途の川を渡る手助けしてもらえないからだそうです》。だからインドに「ビーフカレー」がない、という有名な話である。
金田さん《全世界での人口で、イスラムは、ほぼ1/3だそうで、この市場を見過ごすのは、もったいないって事なんですが、日本は、この点が遅れているのと、まだまだ、イスラム系の人たちが少ないので、商業として成立しないのが、難点だと仰ってました。しかし、いずれは、メジャーになるんでしょうねぇ》。
奈良観光では今、「インバウンド」が今後の成長分野として注目を集めている。県観光局は「今年はインバウンド元年」という。奈良県ビジターズビューローでは、インバウンドの促進に向け、ずらりと人材を揃えた。ハラールも、インバウンド促進の重要な要素である。
先日(4/16)は日本経済新聞が「イスラム客、和食に誘う 関西でハラル対応広がる 」という記事を載せていた。《関西の和食店でイスラム教の戒律に沿う「ハラル」メニューの提供が広がっている。がんこフードサービス(大阪市)は味や調理法を変えた天ぷらやすしを扱う店舗を増やす。グルメ杵屋は機内食向けの食材を増産する。和食人気に加え、関西を訪れる外国人客が増えていることが背景にある。がんこフードは京都ハラール評議会から認証を受け、がんこ寿司の京都三条本店(京都市)に続き、大阪法善寺店(大阪市)でも提供を始めた》とある。
梅守社長は「今後、オール奈良県でインバウンドやハラールに取り組もう」とお話になった。「奈良へ行くと、ハラール食に不自由しない」となれば、ASEANなどから多くのムスリム客が来られることだろう。ぜひ我々も手を携えて進めていきたい。
小雨の中、足をお運びいただいた皆さん、有難うございました! 参加されなかった皆さん、概要は上記の通りです。ぜひ、それぞれの持ち場で「ハラール対応」をお進めください。これを機会に、奈良を「ハラールの聖地」にしましょう!
また、私の、勝手な意見まで、書き込んでいただいて、これは恐縮です。しかし、このハラールの話を聞きながら、旅館時代の、アレルギーの問題が、オーバーラップ致しました。あれも、ナニが食べられない、これがダメだって云うのが有り、例えば、代表各は、「タマゴ」です。
タマゴは、タマゴ焼きなど、見ただけでわかるものだけではなく、ツナギなどにも使われていて、ひと目で、わからないものです。ただ、これにも、一切、受け入れられない人から、加熱したら大丈夫だとか、ツナギ程度なら大丈夫だとか、人それぞれ、千差万別でした。
この事も、いろんな加工食材が、もう既に、巷に溢れてしまっているって事の裏返しです。私たちが、普段、ナニも考えずに摂っていますが、その中には、こけだけの伏兵が潜んでいたのです。このハラールの問題は、逆に、私たちが、普段食べている食材が、どんなもので、ナニが使われているかを、知る意味でも、大切だと思います。
また、キャリーオーバーと云う指摘があり、これは、微量なら、原材料としての明記は不要と云う、日本国内の法令なのですが、これは、気づきませんでしたし、また、知らなかった。微量でも、このハラールの問題は、引っかかります。
国内法令も、見直さなければならない要因も、大きいかもしれませんが、これには、また、食材メーカーの反対も、覚悟しないといけないと思います。
しかし、食材に、ナニが使われているかを明示する、いい機会ではないでしょうか。
> 旅館時代のアレルギーの問題が、オーバーラップ致しました。あれも、ナニが
> 食べられない、これがダメだって云うのが有り、例えば、代表各は「タマゴ」です。
うーん、これは深刻です。アレルギーのない人には分からない悩みです。かつてこんな事件がありました。味の素です。
《2000年(平成12年)、インドネシアで、「味の素」の原料にイスラームで禁忌とされている豚肉が使用されている疑いがあるという噂が流れた。材料として豚の成分を使用してはいなかったが、発酵菌の栄養源を作る過程で触媒として豚の酵素を使用していたために、現地法人の社長が逮捕され、味の素製品は同国の食料品店から姿を消した。同社は2001年(平成13年)2月に商品の回収を終了、触媒を変更したことにより販売許可(Halal)が下り、社長も釈放され、製造販売を再開した》(Wikipedia)。
> キャリーオーバーと云う指摘があり、これは、微量なら、原材料としての
> 明記は不要と云う、日本国内の法令なのですが、これは、気づきませんでした
キャリーオーバー(法によって表示を免除される添加物)は、厳密にいえばアウトでしょう。まぁ、どこまでのレベルのハラールを求めるか、の問題ですが、味の素の事件からすれば、あとで発覚すると大変なことになります。やはり大切なのは「情報開示」ですね。
> 食材に、ナニが使われているかを明示する、いい機会ではないでしょうか。
はい、それは同感です。奈良町のMさんのご指摘のとおりです。今、マクドナルドが大変なことになっていますが、我々消費者も、もっと賢くならなければいけません。
1、留学生受け入れにイスラム教徒の禁忌事項が大きな障害になり、受け入れ先の決まるのがいつも遅いそうで、ハネダの場合もゆくところがないということから我が家に来た
2、受け入れ決定後も、事前打ち合わせで禁忌事項での会話はマイナス思考ばかりであった(特に食事とダマランで)
3、受け入れて1か月ほどは家内はかなり神経質に対応して、豚や禁忌食品は彼が学校に行ったり、外出しているときに食した
4、お祈りは滞在中にわたしたちには目に触れない早朝や自分のプライバシーエリアでやっていたようで1度も目にしなかった(これは1年間同じだった)逆に彼も気を使っていたのではないかと思う
5、解決策はどれだけ相手の立場を理解できるかに尽きる
彼は神社、仏閣も好きになってよく参拝に出かけていたし、イスラム教も忘れていずに、1か月間の断食も行ったが、家人には一切迷惑をかけなかった
6、翌年のインドネシア女学生も同様に対応できた
7、観光客相手でお金を落としてもらおうが最初にありきではハラールは問題かもしれませんが、イスラム教徒の来日者と仲良くなり、日本を理解してもらうことはそんなに難しくないので、あまりガチガチに考えない方が受け入れやすいように思います
そして「どうしましょう」と問いかけるのが最善だと思います
業者と立場が違うので参考までに
ただ、この企画、イスラム教徒の人たちを理解するうえでは有意義な取り組みだと思います
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/779af53a5550311a92fa73b1532ce747
ご多忙のところ、コメント有難うございました。講演でも話が出ましたが、要は「完全ハラールのイスラム教徒は、そもそも日本には来ない」「相手のニーズを聞きだして、ムスリムフレンドリーを心がければ良い」ということなのでしょう。
若林さんがお書きの「お金を落としてもらおうが最初にありきではハラールは問題」は、全くその通りで、梅守の社長さんもそのようにおっしゃっていました。
私のFacebookに、イスラムに媚びる必要があるのか、という極端な意見を書き込んだ人がいましたが、異文化を理解する1つの好機ととらえるのが良いと思いました。丁重なるアドバイス、深謝です。