tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

目隠しの完成

2007年11月17日 | 奈良にこだわる
11/15付の朝日新聞奈良版に「大仏殿が見えなくなる? JR奈良駅前にホテル・保健所計画」という見出しの記事が載った。奈良新聞も、同日の1面トップで扱っていた。

11/14の奈良市議会建設委員会で、松石聖一議員(市民クラブ)は《ホテルや複合施設が完成すると、西ノ京大池から眺めた時に大仏殿の下層の屋根にあたる「裳階(もこし)」が隠れてしまい、上層の屋根しか見えなくなると指摘した。また、市によると、立ち位置によっては、エレベーター設備が大仏殿上にかかるという》(朝日)。
http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000000711150002

朝日・奈良新聞とも、記事には奈良市が提供したという写真(両紙とも同一)が掲載されていたが、これは私の実感とは違う。実態はすでに、もっとヒドくなっている。

このアングルは故入江泰吉氏が「発見」したもので、古代のロマンあふれる同氏の写真で有名になった。私も、ここは家から近いので時々訪ねてはいたのだが、いつも首をかしげて帰っていた。今回の報道を受け、もう一度自分の目で確かめようと撮り直したのが、冒頭の写真だ。

手前の雑木を避けるため、丘の上(奈良医療センターの敷地内)から同じ風景を撮ったのだが、大仏殿がすでに三方からジワジワと目隠しされているのがお分かりだろう。JR線高架工事のクレーンや、その向こうの近鉄奈良駅と思われるビルが、ま横に迫っている。新ホテルや保健所は、西塔右隣の白い建物(ホテル日航奈良)のま横にできる訳だから、これで目隠しが完成することになる。ホテルも保健所も、奈良市が起案した事業というのが情けない。
※やや広い構図で撮った写真はこちら
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/b6/75f22c81d6c24d0fe0433a084cf9acdd.jpg

新聞には、31mだった高さ制限を、昭和《62年にはJR奈良駅周辺開発に伴い、西ノ京大池をビューポイントに景観を検証した結果、翌年12月に高さ40mに引き上げている》(奈良新聞)とあるが、今回の報道を見る限りでは、本当は「景観の検証」など、していなかったのではないか。

市は《「遠望は今回の計画の中では配慮されていなかった」と不手際を認め、福井重忠副市長も「うかつだった」と答弁した》(同)。市都市計画課は《今後は景観に大きな影響が出ないようホテルについては業者を指導し、保健所施設は市都市景観審議会にかけたい》(朝日)と話しているそうだ。

それにしてもお粗末な話だ。以前、このブログに南都さんは

> 県庁や近鉄奈良ビルそれに新しくできた裁判所などまるで奈良を否定
> しているかのような「奈良嫌い」のモード丸出しです。地元民として
> これらの建造物が林立している奈良の玄関を恥ずかしく思います。
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/cddbe6112b39e6d8f0e71f24e44385b8

というコメントを下さったが、奈良の景観を破壊しようという「悪意」なくしてはできないような仕業であり、その結果がこの惨状だ。この際「高品質・高規格」の40mホテルの建設は、白紙に戻して再検討するのが良さそうだ。
コメント (19)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

浪花天丼 天喜

2007年11月16日 | グルメガイド
退社後に夜の会合があったので、腹ごしらえをすることにした。近鉄新大宮駅を降りてすぐのところ(天下一品の隣)に天丼屋が見つかり、「天丼 550円」という看板に引かれて入ってみた。入口の横には「お持ち帰りコーナー」もある。

店内はそう大きくはないが、明るくて清潔だ。カウンターにガラスの間仕切りがあり、料理人が2人で天ぷらを揚げている。メニューをざっと見渡し、550円の天丼(エビ2尾と野菜天)に魚(キス)とイカをプラスした「特盛り天丼」(620円)を注文した。

あつあつの天丼が、ほどなく出てきた。まず天ぷらをひと口かじると、これは美味しい。さっくり、からりと揚がっている。ネタも新しい。「早い、安い」だけを期待していたのでこんなに「うまい」と、不意打ちを食らった気分になる。

油はキャノーラ(菜種の一種)サラダ油を使用しているそうで、店内の貼り紙には「健康に良いオレイン酸をたっぷり含んでいます。ノンコレステロールだから安心です。油っぽくない、あっさり軽い風味です」とある。

メニューは他に、かき揚げ天丼(650円)、海老丼(エビ4尾と野菜天・800円)、天ぷら定食(エビ2尾、キス、野菜天、ご飯、味噌汁、漬物・700円)など。ランチタイムはご飯大盛りのサービスもある。お店は他にもう1店、西大寺・奈良ファミリーのフードコート内にあるという。

天ぷらとか天丼というと、やはり「高い」というイメージだし、そのわりに期待を裏切られることも多い。しかしここは、レベルの高い天ぷらを早く安く食べられる有り難い店だ。ぜひ、お訪ねいただきたい。
http://r.tabelog.com/nara/rstdtl/29000556/

※写真は、11/13撮影の特盛り天丼。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

酒肆春鹿 スタンディングバー

2007年11月14日 | グルメガイド
今年の4月にオープンした「酒肆(しゅし)春鹿 スタンディングバー」が「あまから手帖」10月号に紹介されていて、驚いた。

南市の元置屋街にある母店「酒肆春鹿」は、最近は観光客もたくさん訪れるグルメな店だが、こちらは気楽な立ち飲み屋なので、「あまから」の取材対象になるとは思っていなかった。

この店は「春鹿」ブランドでおなじみの造り酒屋「今西清兵衛商店」のアンテナショップなので、「超辛口」などの日本酒が美味しいのは当然なのだが、店に入ると、いつもたくさんの人がビールを飲んでいる。それもそのはずで、生ビールの大が600円、瓶ビール大が500円という安さなのだ。
http://www.nara-np.co.jp/n_eco/070517/eco070517b.shtml

食べ物メニューも、どて焼き(300円)、出し巻き卵(300円)、串カツ5種盛り合わせ(500円)と手頃だ(あまりボリュームはない)。新大宮駅近く(西南側)の線路沿いの角地にあるので、分かりやすいし入りやすい店だ。いちど、お試しを。
※写真は、開店直後の午後6時頃に撮影。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

観光の魅力は日々の暮らし

2007年11月13日 | 奈良にこだわる
観光のあり方を問い直すシンポジウムがあった。10/19開催の「国際シンポジウム 観光立国日本を目指すために」(主催:日本経済研究センター・日本経済新聞社)である。その模様が日経新聞に紹介された(11/5付朝刊)。
http://www.prime-intl.co.jp/jcer/program.html

全国版の半ページ(全7段)を割いての大特集である。見出しは《日々の暮らしこそ魅力》《「何でもない風景」大切》《自分の住む地域に磨き》…。これらの見出しが、シンポジウムの論点を端的に表現している。以下、概要をかいつまんで紹介する。
 … … …
1.基調講演:アレックス・カー氏(東洋文化研究家 著書に『美しき日本の残像』『犬と鬼』など)
・日本では神社仏閣など大きなものはきれいに保存されるのに何でもない風景は捨てられてしまいやすい。
・旧建設省のユートピアソングという歌が面白い。「山も谷間も/アスファルト/ランラン……/すてきなユートピア」
・観光客は美しく、心の安らぐ場所を求めてやってくる。景観は日本が観光立国を目指すうえで、国としての大課題といえる。
・残念ながら日本では「工場モード」が勝利を収め、日本文化が大切にしてきた感覚がまひしている。
・白川郷も景観の破壊が進んでおり、近々、世界遺産の危機リストに入りそうだ。
・私たちは「庵」という会社を作って、京都の古い町屋を壊してしまわずに、宿泊施設として再生して旅行客に提供する活動をしている。
・日本では京都でさえ、いかにも「私は京都の町が嫌い」とでも主張するかのような、奇抜な住宅を街中で見つけられる。
・日本が観光立国を目指すためには、日本の原点である古い知恵の秘められた文化にヒントを求めるべきだ。

2.シンポジウム
・白幡洋三郎氏(国際日本文化研究センター教授)
日本では美学として、奥ゆかしいほうが観光客も来てくれるなどと思ってしまいがちだが、やはりアピール力があるところに人は引かれる。(中略)パリの街並みはよその目を気にしてつくっているわけではない。ある種の住民エゴのうまい発動がきれいな街をつくるというのがある。

・舩山(ふなやま)龍二氏(JTB会長)
自分たちの住んでいる地域の景観を良くするという感覚が必要だ。特に農村は私たちの原風景。(中略)温泉や旅館といった日本独自のものも世界に向けてもっと発信していくべきだ。

・アレックス・カー氏
これからは場所とかものを見るだけではなくて、体験を取り込む必要がある。

・司会:小島明氏(日本経済研究センター会長)
日本に残された「本物」を確認するところから始めなくてはいけない。(中略)観光産業は将来的にも広がりのある分野。農村、漁村の復活に活用できるかもしれない。
… … …
カー氏のいう白川郷の惨状は、前日の日経朝刊の特集記事「国際フォーラム『世界遺産と文化交流』」(11/4付)でも、西村幸夫氏(東大教授)が言及していた。

《世界遺産になった白川郷は駐車場や土産物店で農地がつぶされ、休日には交通渋滞も起きている。白川郷の住民たちによる改革も、遅々として進まない。例えば、車の進入を止めて外側の駐車場利用に限定すると人の流れが変わる。人の来なくなる土産物店が出てくる。小さな集落の内輪の話で利害が衝突し、話はなかなか進まない》。石見銀山はこれを反面教師にして「行動計画」をまとめたそうだ。

シンポジウムに参加した方のブログ記事によれば、冒頭の《カーさんのお話が強烈でした。会場はその余韻を引きずりっぱなしという雰囲気》だったそうだ。確かに、日本の文化の原点に立ち戻るべきだというカー氏の主張には、説得力がある(カー氏が外国人だからなおさらだ)。私も今『美しき日本の残像』を読んでいるところだ。
http://homepage1.nifty.com/kanen/sinpen722.htm

記事のまとめは《パネル討論では、参加者らが「日常の暮らしや文化、景観を守ることが、観光地としての魅力を高める」との認識で一致した》という言葉で締めくくられている。

観光というと、とかく新しい施設・ハコ物とか奇抜な仕掛けとか、はたまた芝居の書き割りのような人工的な外観を連想してしまうが、それは違う。観光客は、その土地の生活文化を体験するためにやって来るのだ。

今井町(橿原市)には、地元民が食べている茶粥(かまど炊き)を、ここの町屋で食べるために多くの人が訪れている。私が2年前に訪ねた天川村の民宿で最も印象に残っているのは、ご主人たちと眺めた星が降るような夜空と、裏山の猿も大好物だという甘いトウモロコシと、山登りに持たせてくれたおにぎりの味だ。

カー氏は《JR京都駅舎も、1200年の伝統をよくもここまで否定できたという建物》というが、JR奈良駅の旧駅舎はぎりぎりセーフとしても、近鉄奈良駅ビルや、最近できたばかりの奈良地方・家庭裁判所は「伝統をよくもここまで否定できた」という代物だ。

一見何でもない風景や日々の暮らし(=文化)を大切にし、自分の住む地域に磨きをかける。そこに「アピール力」を付加する。この方向性を愚直に貫くことが、観光立国・観光立県への王道なのだ。

※写真は明日香村稲渕の棚田(06.10.30撮影)。昔懐かしい農村風景が広がる。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

和 あすか

2007年11月11日 | グルメガイド
「あまから手帖」10月号に、「和 あすか」というお店が紹介されていた。私のブログをよく訪ねて下さるおぜんさんも、ご自身のブログでお昼ご飯を紹介されていた店だ。
http://blog.goo.ne.jp/ozen1_2006/e/79c2f424a13f28beefc2d296c4667c88

以前は同じ場所に「ふぐ源」という店があり、ウチからも近いので何度か訪ねたことがあった。今は平日の日替わりランチ(数量限定 @1500円=税抜き・以下同じ)が安くて美味しいと、ご近所でも評判になっていた。日曜日に家内とうまく時間調整できたので、夜の部に2人で訪ねてみることにした。

朝から電話で予約を入れると、うまい具合に4人掛けの座敷(掘りごたつ式の小上がり席)が空いていた。夜のおまかせコースは3コースあり、私たちは3500円の「なごみコース」にした。これに揚げ物がつくと5000円、和牛ステーキがつくと6500円になる。

予約の時間(開店時間の午後5時)に入店すると、店内は小座敷が2卓、椅子式のテーブル席が1卓、あとは数名が座れるカウンターだった。キャパは、ざっと20名程度で、15名以上だと貸切にもできるそうだ。お店はとても清潔だし、雰囲気も良い。最初は私たちだけだったが、どんどんお客が入ってきて、帰る頃にはカウンターに2、3席だけ残して満席になった。

小さな店だが、料理は本格派だ。3500円のコースは、先付、造り、煮物椀、合肴、焼物、酢の物、ご飯、留め椀、デザート。写真は先付と焼物だが、季節感をうまく演出していて、味は一流料亭を思わせる。一番驚いたのは吸い物で、澄んでいるのにダシがよく効いている。道場六三郎の「命のダシ」という言葉を思い出す。家内が「すっぽん雑炊」を食べたいというので追加したが、これもよくダシが出ていて、しみじみと美味しい(800円。ごく小さい椀だ)。

もちろん各種一品料理(300円~)もあるし、これからの季節は鍋料理もある(前日までの要予約)。寄せ鍋(あすか特製鍋)が5300円、しゃぶしゃぶ、かにちり、てっちりが各6800円だ。

手頃な値段で楽しめる本格的な料亭の味、ぜひお訪ねいただきたい。
※「和 あすか」奈良市三碓(みつがらす)6-10-3-101 
 阪奈道路・三碓インター降りてすぐ(電話0742-41-8282)
http://www.wa-asuka.com/
※写真は先付(食べずに取っておいた)と焼物。10/28撮影
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする