“マイ箸運動”は、よくご存じだろう。加藤登紀子や坂本龍一が有名だが、歌手の中島美嘉や絢香、タレントの今田耕司などもマイ箸を持ち歩いている。熱帯雨林などの伐採による環境破壊に反対する、というのがその趣旨である。
日本国内では、毎年約250億膳が消費されている。国民1人が年間200膳も使っている計算になるから、これは相当の数だ。割り箸の98%は輸入箸(うち99%が中国製)で、国産は2%の5億膳だけ。国産割り箸の大半は吉野で作られている。
私も安っぽい輸入箸は嫌いである。真っ直ぐに折れないときがあるし、荒削りなので削(そ)げが出ているものもある。サイズも短い。食べ物ではないが、この辺りが微妙に味に影響するように思う。その点、ちゃんとした店では国産の杉箸が出てくる。
最近目立つのが、竹の割り箸である。竹の割り箸はほとんどすべてが中国製だが、かつて有毒の漂白剤が残留していたことがあったし、最近でも防腐剤や防かび剤が検出されたという報道があるので、できるだけ使いたくない。
http://specialnotes.blog77.fc2.com/blog-entry-675.html
タレントの伊東四朗もマイ箸派であるが、《森林伐採による環境破壊に反対する意思表示ではなく、中国などから輸入されている割箸に対する不信感(例えば漂白されているなど)によるものである》(Wikipedia)という。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E6%9D%B1%E5%9B%9B%E6%9C%97
しかし“マイ箸派”の「割り箸は熱帯雨林の破壊である」という批判は、見当外れである。 田中淳夫著『割り箸はもったいない?』(ちくま新書)に詳しい。
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/7f716fdca4be8bc08b677f2be4371650
《熱帯地域で割り箸を製造し日本に輸入していた国は、パプア・ニューギニアのほか、フィリピン、インドネシア、そしてタイやマレーシア、ベトナムもある。1990年前後に輸入量が多いのはインドネシアだ。しかし肝心の素材は、インドネシアではメルクマツだった。この木は、松脂(まつやに)採取のために植林された木だ。熱帯に自生している木ではない。松脂採取後は、使い道がなく立ち枯れるものを割り箸用に転用したのである》(同書)。
フィリピンの木も、マッチの軸用など、使い道がなくなった木を使っているし、そもそもジャングルの木ではない。熱帯諸国の木材輸出量に占める割り箸用材の比率は《インドネシアは0.8%、フィリピン0.6%、マレーシア0.0003%。逆に日本から見て、消費する木材に対する割り箸相当分の木材の量は、0.3%である》(同)。
また同書によれば、輸入割り箸は他の用途には使えないような木を用いており、使用量も木材消費全体の1%未満というわずかな量であるので、これをもって森林破壊とは、いかにも大袈裟である。
私は“マイ箸派”の主張のうち「中国製は安心できない」「1回使って捨てるのはもったいない」という部分には共感するが、だからといって“マイ箸”を持とうとは思わない。その都度洗うのは面倒だし、うっかり洗うのを忘れると次に使えない。洗い忘れたまま持ち歩くのは不潔だ。
私は、“マイ割り箸”を持ち歩くことを提案したい。これは田中淳夫氏も推奨しておられる。もちろん輸入物ではなく安全な国産で、奈良県人としては吉野杉(またはヒノキ)の割り箸を使いたい。
http://www.wood.co.jp/shinbun/no506.htm
吉野割り箸の製造工程。一部機械化されているが、手作り感が残る
(画像は、同僚のNくんから拝借)
吉野杉箸など国産の割り箸は、製材過程で排出される端材や間伐材で作られる。木材資源の有効活用であり、「エコ商品」である。最近は、伐採されず放置された山林が多いが、国産割り箸をどんどん使えば、植林→保育・間伐→主伐→植林というサイクルが回り出し、林業や山村が活性化するのである。杉やヒノキは木自体に殺菌作用があるので、防腐剤などは不要である。
国産箸は、安物の輸入割り箸のように1回きりで捨てるのでなく、ティッシュなどにくるんで持ち帰るのだ。良い材料で丁寧に作られた国産の割り箸は、洗えば何度か繰り返して使えるからだ。旅館などの使い捨て歯ブラシと、通常の歯ブラシとの違いのようなものである。手触りや香りが良く、安全・安心でゴミも減らせる。たくさんの割り箸を持ち歩き、一緒に食べる人に配れば、良いPRにもコミュニケーションにもなる。
私はこれまで外食の際、めぼしい割り箸をもらってきてストックしてある(食後「この割り箸、下さいね」というと必ず新品を持ってこられるので、最近は黙って持ち帰ることにしている)。すべて国産の良質な杉箸だ。ならまちの「旬彩 ひより」と「元祖はいばら肉 うし源」は吉野杉の角箸(かくばし)、八木の焼鳥屋「多恵」は上北山村の天削箸(てんそげばし)、夢しるべ風しるべの「黒川本家」「志まづ」と生駒の「三たて蕎麦 春知」は利休箸。
「がんこ難波本店」は杉の卵中(らんちゅう)で、これは国産材を中国で加工して逆輸入したもののようだ(『割り箸は…』に登場する)。「なら 鮨かねこ」と京都の「要庵(かなめあん)西富家」は正真正銘・下市(吉野郡)の「卵中」であった。
こういう良心的なお店ばかりなら“マイ割り箸”も必要ないのだが、残念ながらその数は少ないのである。先ほど、わが家の台所にしまってあった割り箸(出前や持ち帰り寿司についてきたもの)をひとつかみして調べてみると、すべてアスペン(ホワイトポプラ)や竹などの輸入物だった。安心して使えるとは言えない。
「国産割り箸は、なかなか手に入らない」という声も聴くが、冒頭写真のまん中はダイソーで買った国産杉箸で、5膳で105円だ。右端は「奈良町情報館」で買った川上村の天削箸で、10膳200円、左端は「なら 鮨かねこ」の高級な下市の卵中(推定で3膳200~300円くらい)。他にも吉野杉箸は、イトーヨーカドー奈良店で5膳298円、梅田の阪急百貨店で5膳472円だった。結構手近なところで売っているのだ。
イトーヨーカドーの箸売り場。ちゃんと日本製もある。
ぜひ皆さんには「“マイ箸”は森林破壊を食い止めるので、良いことだ」という先入観を払拭していただきたい。国産割り箸をどんどん使い、林野庁のいう「木づかい」で日本の森林を保全していただきたいと思う。そのため、ぜひカバンやハンドバッグに、国産割り箸を何膳かしのばせていただきたいと思う。
日本国内では、毎年約250億膳が消費されている。国民1人が年間200膳も使っている計算になるから、これは相当の数だ。割り箸の98%は輸入箸(うち99%が中国製)で、国産は2%の5億膳だけ。国産割り箸の大半は吉野で作られている。
私も安っぽい輸入箸は嫌いである。真っ直ぐに折れないときがあるし、荒削りなので削(そ)げが出ているものもある。サイズも短い。食べ物ではないが、この辺りが微妙に味に影響するように思う。その点、ちゃんとした店では国産の杉箸が出てくる。
最近目立つのが、竹の割り箸である。竹の割り箸はほとんどすべてが中国製だが、かつて有毒の漂白剤が残留していたことがあったし、最近でも防腐剤や防かび剤が検出されたという報道があるので、できるだけ使いたくない。
http://specialnotes.blog77.fc2.com/blog-entry-675.html
タレントの伊東四朗もマイ箸派であるが、《森林伐採による環境破壊に反対する意思表示ではなく、中国などから輸入されている割箸に対する不信感(例えば漂白されているなど)によるものである》(Wikipedia)という。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E6%9D%B1%E5%9B%9B%E6%9C%97
しかし“マイ箸派”の「割り箸は熱帯雨林の破壊である」という批判は、見当外れである。 田中淳夫著『割り箸はもったいない?』(ちくま新書)に詳しい。
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/7f716fdca4be8bc08b677f2be4371650
《熱帯地域で割り箸を製造し日本に輸入していた国は、パプア・ニューギニアのほか、フィリピン、インドネシア、そしてタイやマレーシア、ベトナムもある。1990年前後に輸入量が多いのはインドネシアだ。しかし肝心の素材は、インドネシアではメルクマツだった。この木は、松脂(まつやに)採取のために植林された木だ。熱帯に自生している木ではない。松脂採取後は、使い道がなく立ち枯れるものを割り箸用に転用したのである》(同書)。
フィリピンの木も、マッチの軸用など、使い道がなくなった木を使っているし、そもそもジャングルの木ではない。熱帯諸国の木材輸出量に占める割り箸用材の比率は《インドネシアは0.8%、フィリピン0.6%、マレーシア0.0003%。逆に日本から見て、消費する木材に対する割り箸相当分の木材の量は、0.3%である》(同)。
また同書によれば、輸入割り箸は他の用途には使えないような木を用いており、使用量も木材消費全体の1%未満というわずかな量であるので、これをもって森林破壊とは、いかにも大袈裟である。
私は“マイ箸派”の主張のうち「中国製は安心できない」「1回使って捨てるのはもったいない」という部分には共感するが、だからといって“マイ箸”を持とうとは思わない。その都度洗うのは面倒だし、うっかり洗うのを忘れると次に使えない。洗い忘れたまま持ち歩くのは不潔だ。
私は、“マイ割り箸”を持ち歩くことを提案したい。これは田中淳夫氏も推奨しておられる。もちろん輸入物ではなく安全な国産で、奈良県人としては吉野杉(またはヒノキ)の割り箸を使いたい。
http://www.wood.co.jp/shinbun/no506.htm
吉野割り箸の製造工程。一部機械化されているが、手作り感が残る
(画像は、同僚のNくんから拝借)
吉野杉箸など国産の割り箸は、製材過程で排出される端材や間伐材で作られる。木材資源の有効活用であり、「エコ商品」である。最近は、伐採されず放置された山林が多いが、国産割り箸をどんどん使えば、植林→保育・間伐→主伐→植林というサイクルが回り出し、林業や山村が活性化するのである。杉やヒノキは木自体に殺菌作用があるので、防腐剤などは不要である。
国産箸は、安物の輸入割り箸のように1回きりで捨てるのでなく、ティッシュなどにくるんで持ち帰るのだ。良い材料で丁寧に作られた国産の割り箸は、洗えば何度か繰り返して使えるからだ。旅館などの使い捨て歯ブラシと、通常の歯ブラシとの違いのようなものである。手触りや香りが良く、安全・安心でゴミも減らせる。たくさんの割り箸を持ち歩き、一緒に食べる人に配れば、良いPRにもコミュニケーションにもなる。
私はこれまで外食の際、めぼしい割り箸をもらってきてストックしてある(食後「この割り箸、下さいね」というと必ず新品を持ってこられるので、最近は黙って持ち帰ることにしている)。すべて国産の良質な杉箸だ。ならまちの「旬彩 ひより」と「元祖はいばら肉 うし源」は吉野杉の角箸(かくばし)、八木の焼鳥屋「多恵」は上北山村の天削箸(てんそげばし)、夢しるべ風しるべの「黒川本家」「志まづ」と生駒の「三たて蕎麦 春知」は利休箸。
「がんこ難波本店」は杉の卵中(らんちゅう)で、これは国産材を中国で加工して逆輸入したもののようだ(『割り箸は…』に登場する)。「なら 鮨かねこ」と京都の「要庵(かなめあん)西富家」は正真正銘・下市(吉野郡)の「卵中」であった。
こういう良心的なお店ばかりなら“マイ割り箸”も必要ないのだが、残念ながらその数は少ないのである。先ほど、わが家の台所にしまってあった割り箸(出前や持ち帰り寿司についてきたもの)をひとつかみして調べてみると、すべてアスペン(ホワイトポプラ)や竹などの輸入物だった。安心して使えるとは言えない。
「国産割り箸は、なかなか手に入らない」という声も聴くが、冒頭写真のまん中はダイソーで買った国産杉箸で、5膳で105円だ。右端は「奈良町情報館」で買った川上村の天削箸で、10膳200円、左端は「なら 鮨かねこ」の高級な下市の卵中(推定で3膳200~300円くらい)。他にも吉野杉箸は、イトーヨーカドー奈良店で5膳298円、梅田の阪急百貨店で5膳472円だった。結構手近なところで売っているのだ。
イトーヨーカドーの箸売り場。ちゃんと日本製もある。
ぜひ皆さんには「“マイ箸”は森林破壊を食い止めるので、良いことだ」という先入観を払拭していただきたい。国産割り箸をどんどん使い、林野庁のいう「木づかい」で日本の森林を保全していただきたいと思う。そのため、ぜひカバンやハンドバッグに、国産割り箸を何膳かしのばせていただきたいと思う。
割り箸はもったいない?―食卓からみた森林問題 (ちくま新書 658)田中 淳夫筑摩書房このアイテムの詳細を見る |