遥か北に、磐梯が青空に映える。会津本郷から高田へ、無数のイナゴの飛び交う、半ば稲刈りの済んだ畦道を歩いた。
たわわに豊かに実った静かな広い空間に、コンバインの音が響く。忘れかけていた昔のように小川が静かに流れ、きれいに敷き詰められたもみがらに、爽やかな風が吹き渡る。
畦に腰をおろししばしたたづむと、別の世界が広がる。紅色のイヌタデにルリシジミが輝き、ノコンギクにはキタテハ、ベニシジミが密を求める。夏の暑さを耐えた草々、草むらでコウロギが鳴いている。目にするすべてが秋の陽にうるわしく、どんな芸術作品も及ばぬ美しい造形が身近にあった。じきに訪れる寒い季節を前にした生き物の、精一杯の生活を静かに見つめた。
畑のリンゴも赤く色づき、三角のソバの実が黒く熟して来た。
年に一度めぐり来た秋を、心から観察してみたかった。雑踏を離れての、ぜいたくな、豊かなひとときだった。