以前に同様の記事を記したが、今年の玄達瀬で起こっているバラシ連発について思うことがあるので、再度掘り起こしてみた。
■ラインの太さ■
玄達瀬釣行の釣果欄で「バラシ多数」という記事や、中には「15~16発バラシ!」という記事を見かけるが、殆どが7号ラインを使用しての話だと思われる。何度も根ズレが連発するのはハリスが細いからドラグでラインを送り出す必要に迫られるからであり、高切れを起こすのは、傷が入っているのは論外として、通常はラインとハリス強度バランスが合っていないからだ。
他の釣りスタイルであれば、メーターオーバーのヒラマサ狙いでは、例えばルアーでトップを狙う場合や活きエサを使う泳がせだと、リーダーやハリスは20号以上が当たり前であるのにも関わらず、完全フカセ釣りでは7号ラインに太くて10号ハリス、中には近場と同様の8号ハリスの人も居る。この現実を別スタイルの釣り人が知れば「無謀なことを…。」と言われても仕方が無いだろう。
しかしこれには事情があって、船上からオキアミを撒いて長距離を釣ることの多い完全フカセ釣りでは、あまりに太いラインは水流抵抗が大きくて使用出来ず、それに合わせるハリスもバランス上細くならざるを得ないのだ。だが、それでも現状の一般的なセッティングにボクとしては疑問を感じている。
実際に強度テストを行えば解るが、7号ラインに10号ハリスではバランス的に厳しくなって高切れのリスクが高まる。それが8号ラインだと10号ハリスが余裕で使えて展開が違うし、ましてや10号ラインでは12号ハリスが使えるので、次元が違うやり取りが可能なのに、ボクがこの釣りを知った20数年前から多くの釣り人が7号以外を使いたがらないのが現実だ。
実はこの夏、玄達瀬でボクは両極端な経験をしている。7/7のことだが、この日は最速で100mあたり2分前後というブッ飛び潮だった。それでも「あくまでも大型狙い」とばかりに当初は釣友と並んで10号ラインの仕掛を流し込んでいた。しかし、一向に埒が明かないので、堪らず、もしものために用意していた8号ラインを巻いていたリールに換装したのだが、そこから好転し、以後はボク一人がアタリを捉え続けていった。これはラインが細い分だけ水流抵抗が少ないので、ヒラマサを始めとする魚たちの浮上する位置に仕掛がウマく入り込んだためだが、これは誰にでも理解できる話だろう。
しかし、その逆があって7/16の釣行では最速で100mあたり3分前後という、速めの潮だったので、前回の教訓もあってボクは当初は8号ラインをセレクトしていた。しかし喰いが渋くてやや交通事故的にアタる状況だったものの、アタリを捉えるのは10号ラインの釣友の方で、こっちはほとんどアタリを捉えることが出来なかった。その後は慌てて10号ラインに換装したのだが、そこから先はポツポツと何がしかのアタリが拾えるようになっていった。
この2例から解るように、「如何にタナに入れるか」という方が重要であり、単にラインを細くしたからといって、入り易くなったり、太くしたから入り難くなるワケではないのだ。だから超ブッ飛び潮のように物理的に無理な場合を除いてラインをむやみに細くする必要がないことを理解しておいて欲しい。
■同調の話■
太いラインを使用するとなると、心配なのは「マキエサと同調しなくなるのでは?」という点になるだろう。よく言う同調とは、例えば発泡ウキを装着し、その沈み具合を目視して「マキエサと同じスピードで落ちてゆくから同調している。」と思っている人が多いと思う。しかし、現実を言うと他の釣り=例えばグレ釣りを経験していると解るのだが、1.5号という細さのラインと、そこに結んだ1.5号以下のハリスと伊勢尼5号という小バリを使用しても、上から撒いたマキエサと同調させるのは難しく、釣座からたった20m程度離れた5~6mのタナを探る場合でも、同調にはウキの浮力をシビアに調整したり、風を計算したり、ラインメンディングを駆使したりと、相当な技術が必要になる。この件についても、何度も過去のブログで触れているが、7号以上のラインを使って100m以上も流す完全フカセ釣りでは、同調するはずがなく、釣る側の甘い期待でしかないのだ。
結局は、マキエサが海中の様々な流れに翻弄され、紆余曲折しながら複雑なスロープを滑るように流れて行き、その先にある、溜まり易い位置と本命魚が浮上して来る位置がシンクロして、そこがポイントとなる。そしてそこにサシエサが落ちてくるから食ってくるのだとボクは解釈している。7/7の最後の一投はマキエサが切れて、サシエサのみで流していたが、これに中マサがアタってくれた。これは「同調はしていないが、マキエサが溜まる位置に届けば喰う」の証拠になると思う。
マキエサの溜まる位置にサシエサを届けるためには、沈み過ぎであればプラス方向の発泡ウキでの浮力調整、浮き過ぎであればマイナス方向のオモリ調整は必須となる。だが、極端な話をすると、その位置に至るまではエサ盗りに見つからない限り、前後左右どこから到達しても良いとボクは考えている。
■「隣と合わせる」の難しさ■
「仕掛や浮力設定を釣れた人に合わせる」という考えがあるのだが、これも甘い考えのようにボクは思っている。
フロロカーボン製品では最大手の、クレハのホームページに標準直径に関する記述があるが、その中には、同じ号数表示でも実際はメーカーによってかなりのバラツキがあって、そのほとんどが強度を稼ぐために太い側にブレが出ている点について記されている。中には一つ上の号数を超えた製品もあるようだが、それほどの違いがあるのなら、隣の釣り人と号数を合わせても、ラインの製造メーカーが違えば沈み具合は違ってくる。
他の要素としては、リールのフリー回転性能の違いも大きく、これは同じ製品であっても、メンテナンス状況の違いやグリスの落ち具合、それに新品時からの個体差も有る。
他にもロッドの長短や調子、装着ガイド数の違い、ハリスのメーカー違いやハリの号数や本数、長さの違いでも条件は変わってしまうのだ。
上記の理由から、隣と同じにするのは困難な話であり、それを追ったが為に、逆に失敗する可能性もあることを知って欲しい。ボクの場合は、隣でヒラマサのアタリが出たら、「あくまでも目安としての」距離を確認することと、浮力調整が「プラス方向なのか、マイナス方向なのか」という判断をするための、発泡ウキやオモリサイズの確認だけに留めている。後はそれを自分の流し方に応用するだけで、袋小路に入った時以外は同じにすることはない。
結果、周りの細いライン&ハリスに対してワンランク以上太いセッティングのボクが釣り負けていない場面は相当な回数になる。
■再び?太糸のススメ■
要は多少仕掛が太かろうが、魚の出る位置にハリの付いたサシエサを落とし込めれば基本的に正解なワケだ。(例外的にワザとズラす場合もあるが…)そのためには、周りに左右されずに自分の釣りに徹することが重要だ。ボクの場合は外してしまうこともあるが、「それも釣りであり、簡単に釣れ続けても飽きるだけだ。」と、自分を言い聞かせて日々チャレンジしている。
一部の船では「太いタックル・セッティングでは喰わない。」という声が上がったり、中には怒り出す船長も居るそうだが、偉そうなことは言いたくはないが、玄達瀬に案内する側ももう少し研究の余地があると思う。ボクの知る限り、太糸を推奨している船はいつもの晴海丸さんを始め、SAKAE丸さんくらいと少数派だ。
誰だってバラす事はあるし、ボク自身も例外ではない。だが、このままハリスのヒゲを生やしたヒラマサを増やし続けて、無駄に殺すのは問題アリだとは誰でも理解できると思う。15本掛けて1本しか獲れなかったという記事を見る度に、「7号ラインで15打数1安打であれば10号ラインだと8打数5安打だったかも知れない。」と、ボクは残念に思っている。要は歩留まりの問題なのだが、掛けた後のゲット数を確実に増やす方が釣り人にとってもヒラマサにとっても得策だということを皆さんにも理解して頂きたい。
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