信濃美術館のカフェにて
○『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官栗林忠道』梯久美子/新潮文庫 。
8月15日、終戦記念日に感銘深い本を読み終えた。
硫黄島からの手紙の一節に心惹かれたというただそれだけの理由で著者は取材を始めたという。栗林中将が妻や子供に宛てた41通の手紙、どれもが愛情に満ちている。
**からだを丈夫にし、勉強もし、お母さんの言いつけをよく守り、お父さんに安心させるようにして下さい。**
**火薬の袋張りは容易の仕事じゃないらしいね。さぞ肩も張ることだろう。ほんとにお察しする。しかしあまり無理しないがいいでしょう。無理するとやはりからだに障るよ。**
栗林中将は多くの指揮官が採った一斉突撃による玉砕などという無策を捨て、冷静な判断をして地下壕にこもってゲリラ戦を展開するという戦法を採った。
留学経験のあるアメリカとの不条理な戦い、はじめから絶望的な戦場、極限的な状況でも常に冷静な判断を下して戦いつづけた栗林中将。
栗林中将の訣別電報の最後、辞世の歌一首
国の為重きつとめを果たし得で、矢弾尽き果て散るぞ悲しき
**最後に、私たち次世代のために、言葉に尽くせぬ辛苦を耐え、ふるさとを遠く離れて亡くなったすべての戦没者の方たちに、あらためて尊敬と感謝を捧げたい。** 著者はエピローグに次ぐ謝辞をこう結んでいる。
ここまで読み進んで涙があふれた。多くの人に読んで欲しいドキュメント。