○ 8月8日午後8時に華々しく開幕した北京オリンピックが今夜閉幕する。国威発揚、オリンピック開催の目論見としてはもう古いと評されようが中国はそれをした。
開会式の光りの演出は凄かった。例えば打ち上げ花火の大きな足跡が鳥の巣に向かって進んでいくあのシーン、上空からの映像が実はCGだったことが発覚した。でも凄い発想だと思った。
日本の選手はかつてのように日の丸の重圧など感じていないように見えた。まあ、それがあったとすれば野球や男子サッカーなど期待に反して不甲斐ない結果に終った団体競技の選手たちだろう。いや彼らにもそんな重圧などなかったかもしれない。
2大会連続で2冠を達成した北島康介にとって北京は自己実現の場ではなかったか。彼に限らない、私は多くの選手にその想いを感じた。
スポーツ競技は筋書きのないドラマだとよく聞く。なるほど確かにそう思わせる場面をいくつも見た。思い浮かぶままに挙げていくと、バトミントンで実力世界一の中国ペアを破った日本のペア(残念ながらふたりの名前が分からない)。3位決定戦で見せた谷亮子の豪快な一本勝ち。女子マラソン、まさかの途中棄権、土佐礼子の悲壮な表情。男子体操、吊り輪のフィニッシュで手がすべって落下した冨田。何回対戦しても勝利することができなかったアメリカを破って優勝した女子ソフトボール。上野選手の熱投、解説をしていた前監督の絶叫。個人記録のトータルだけで考えるとメダルに届かなかった男子400mリレー、何回も繰り返し練習したという絶妙のバトンリレー、強豪チームがバトンリレーで失敗して予選落ちというツキもあって獲ったメダル・・・。
華やかなオリンピックの陰で起こっているグルジア紛争や中国軍による発砲事件・・・。今回のオリンピックも本来の開催理念からは遠かった。
深刻だといわれている大気汚染、食の安全性、バス爆破などのテロ、大地震。開催前からいろいろあった中国でのオリンピックが今夜幕を閉じる。アルコールしながら閉会式をテレビ観戦するか。
1964年の東京オリンピックは戦後日本の復興を世界にアピールした大会だったというのが一般的な評価のようだが、この北京オリンピックに歴史はどのような評価を下すことになるのだろう・・・。
○「**「あの、今お読みになっておられるご本なんですが、それはひょっとしてディケンズじゃありませんか?」**
ピアノの調律を仕事としている彼はショッピングモールの大型書店で本を買い求め、カフェで読書に耽る。毎週火曜日の午前中の過ごし方だった。
閑散としたカフェの隣り合った席で、偶然にもまったく同じ本を読んでいた二人。そのことに気がついた女性が彼に声をかけたのだった。
不思議な巡りあわせに驚いた二人は初対面であるのにすっかり打ち解けて、昼食をとりながら最近読んだ小説や音楽について話し込んだのだった。
翌週の火曜日も二人は同じカフェで同じように過ごした。ある日女性は彼の手を握って告白をするのだが・・・。
『東京奇譚集』村上春樹/新潮文庫読了。
この文庫には5編の短編が収められている。この「偶然の旅人」はロマンチックに始まるが、そこは村上春樹、単なる恋愛小説ではもちろん終らない。奇譚の顛末を書いてしまうのは野暮だと思うのでこれ以上内容には触れない。
「品川猿」はときどき自分の名前を思い出せなくなってしまう女性が主人公。カウンセリングを受けつづけて、原因がやがて明らかに。タイトルと関係があるその原因とは・・・。
昨夏読んだ長編小説とはだいぶ雰囲気が違う作品ばかりだった。この作家の作品では長編のほうが私は好きだ。またいつか長編を読もう。