透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 1005

2010-06-01 | A ブックレビュー



 5月の本のレビュー。読了本は4冊。

『パスタマシーンの幽霊』川上弘美/マガジンハウス  雑誌「クウネル」に連載中の短篇を収録する2冊目の本。

最近電子書籍のことが話題になる。リアルなものとしての紙の本と画面上のバーチャルな本とは明らかに違う。頁をめくるときの手触り、かすかな音、帯、しおり・・・。川上弘美の小説、輪郭の曖昧な世界は紙の本が似合う。

『昆虫 驚異の微小脳』水波 誠/中公新書 なるほど!な実験によって実証される昆虫の微小脳の驚くべき能力。

『火の見櫓暮情』内藤昌康/春夏秋冬叢書 火の見櫓には人を惹きつける何かが潜んでいる。

『日本語作文術』野内良三/中公新書 こちらの考えていることが正確に相手に届く「達意」の文章はどうすれば書くことができるか。決起承展か・・・。東京から帰る電車の中で読了。

今日から6月、今夜読んだ本については次稿で。


学生設計優秀作品展

2010-06-01 | A あれこれ



■ 日曜日(5月30日)の日帰り東京の目的はこの作品展を観ることだった。建築を学ぶ学生たちの作品が明治大学駿河台校舎アカデミーコモンの会場に所狭しと展示されていた。

最近の建築は離散的なプラン(←過去ログ)がトレンドのようだ。建築を部分から発想する。建築を構成する要素(単位空間)を時には設計者の感性で、時には明快なアルゴリズム(数理的なルール)によって増殖させて全体を創る。

学生たちの作品にもこの傾向が表れていて、多くの作品がこのような方法論によって計画されていた。「全体」という概念が希薄だからファサードデザインなどはあまり関心が無いようだ。

既存の街並みにこのような方法で発生させた第3の空間、都市の隙間に組み込む空間が新たな意味を発生させる。

広大な敷地に自由に建築を発想し、形がどうの、ファサードデザインがどうのなどという議論はもはや過去のことなのだろう。

学生たちは社会の現状を彼らなりに捉え、社会に対して建築に何が可能かを考え、建築の可能性を信じて、「夢」を表現していた。

彼らのプロジェクトをリアリティーが無いなどとは評すまい。リアリティーが欠如しているのはむしろ過去の価値観に囚われている私の方かもしれないから・・・。