■ 一昨日(6月30日)、安曇野市の新本庁舎基本設計プロポーザルの公開プレゼンテーションが行われた。山下設計と地元設計事務所のチームを押さえて、内籐廣さんと地元設計事務所のチームが設計者に選ばれた(7人の審査員によって行われた投票はこの2JVに集中し、4:3となった。この結果が最終結論となった)。
内籐さんたちの提案したシンプルな扇形のプランは計画予定地の西から北に広がる北アルプスの眺望を意識すると共に西側に隣接する老人施設に背を向けない配慮をした結果導き出されたものだと理解した。変形敷地に対してフィットする形でもあるのだろう。既存の施設と一体となって新たな屋外環境を創出できるか、という観点からも妥当な配置に思われる。
新しい庁舎は積極的に木質化(構造は免震RC造)することが提案されていた。木を使うことで親和性を得るというものだった。内装にはもちろんのこと、外装にも積極的に木を使う提案がなされていた。唐松(樹種はこれからの検討課題としていた)の角材の縦型ルーバーを外壁に取り付けるというものだ。
地上部5層の外壁に取り付けられた木製縦型ルーバー、そしてフラットルーフ・・・。外観の印象は昨年(2010年)完成した和光大学の新総合棟によく似ている。この稿を書いていて、外壁に木製ルーバーを付けた実施例が東京は表参道にあることを思い出した。記憶が間違っていなければ設計者は隈研吾さん。
内藤さんたちの計画案は街路景観(ストリートビュー)には唐突、ボリュームが大きくて馴染んでいないという印象を持った。そう、いまのところ街路には歓迎されない形。
外壁に凹凸が無いマッシブな形状は景観にはあまり馴染まないが(低層部を配したり、建物を分節したりしてスケール的に街路に馴染ませるという提案もあった)、外皮面積が少なく、省エネ建築でイニシャルコストの面でも有利なはずだ。
長々と書かないでまとめてしまおう。
この提案はふたつのジレンマを抱えている。これは今日の建築に共通する課題に一般化されるといってもいい。
①西から北に積極的に開いて安曇野の風景を取り込みたい・・・、でもそうすると西日をモロに受け、特に夏の冷房負荷が増す・・・。
②マッシブな形にして省エネ化したい、特に熱の出入りを積極的に押さえたい・・・、でもそうすると周辺の環境に馴染まない・・・。
「安曇野のコンテクスト(総合的な文脈)に同調するサスティナブルな建築」 さてどんな建築ができるだろう・・・。