「Kちゃん、久しぶりだね」
「そうですね。U1さん、お仕事忙しかったんですか?」
「仕事は年中忙しいよ」
「そうみたいですね」
「ぼくはいつものブレンド」
「私はアイスコーヒーをお願いします」
「U1さん 朝ドラ見てますか?」
「おひさま、このところ毎朝見てる。数日前に陽子先生の伴奏で子どもたちが信濃の国を歌ってた」
「え、そうですか。丸山のおとうさんって、まつもと市民芸術館の芸術監督の串田さん」
「そう。串田孫一さんってKちゃん知らないかもしれないけれど、の息子さん」
「お名前は聞いたことがありますよ」
「そう、さすが」
「このごろ脱原発とかって、世間、じゃないか、政界か、にぎわしてますね・・・」
「そうだね。福島第1原発の事故を見ると、完全に脱原発かどうかは分からないけれど、脱原発依存というか、そういう方向に舵をきることに異を唱える人は少ないだろうね」
「そうですよね。世界的な流れですよね」
「日本の場合、工業立国を標榜して久しいけれど、そのためには電力の安定供給が欠かせないわけでさ、原発をいうなれば国策として進めてきたわけでしょ。で、まあ、何というか、国民もそのことを了解していたということになるんだろうね」
「というか、無関心だった・・・」
「そうだね。ぼくは原発が何基あるかなんてことすら知らなかったから。いままでは原発を進めるために、トラブルなどは公表しないとか、いろいろしてきたんだろうね。この間の九電のやらせメールなんて、もう当たり前」
「そうなんですね。ところで脱原発依存ということは、代替エネルギーですか、具体的には太陽光発電をもっと普及させるってことですよね」
「まあ・・・」
「え?違うんですか」
「う~ん、なんだか違うような・・・。それって消費電力を減らすというよりエネルギー源を変えるって考え方なんでしょ。ぼくは、「脱エネルギー大量消費社会」って長ったらしいけど、そういう社会を目指さないといけないんじゃないかってこの頃思うな。エネルギー消費をもっと少なく出来るような産業とか社会の構築。それとそのようなライフスタイルを目指すという個人の意識。だから単純に原発から太陽光へ、ってことでもないような気がする。まあ、それも必要なんだろうけど」
「時間がかかりそう」
「短期間でシフトできないと思うよ、確かに。30年、50年くらいのある程度長いスパンで考える必要があるでしょう。前にも話したかもしれないけど」
「ええ、以前聞いたことがあります」
「具体的には大量にエネルギーを消費するような産業から農林水産業へ少しシフトしてもいいのではないかって思うけれど。農業って最も太陽エネルギーを有効に利用する産業でしょ。でもないのかな温室栽培なんかを考えると・・・」
「でも確かに農業って太陽の恵みを最大限に活かす産業ですね」
「とにかく食料の自給率をもっと上げる必要があると思う。食料を輸入に頼っているって、やはり国として健全な姿じゃないと思うんだよね。社会や経済が地球的な規模で動くようになったけれど、もう規模を縮小することが出来るものは実行に移すべきなんじゃないかって思う。要するにグローバルからローカルへって、ことだけど。グローカルなんて言葉もあるけどね」
「その第1候補が食料・・・」
「そう、少なくとも食糧は国内ですべて賄うことができるようなところまで持っていかないと。曖昧な記憶だけど、カロリーベースでアメリカは130%近く、フランスもその位、イギリスは少ないけれど70%くらい。日本は40%そこそこ。地産地消が無理だとしても国内の流通に留める必要があると思うな」
「そうなるとバナナは食べることができなくなるんですね・・・。でもみかんはOKか・・・」
「そ、そうだね・・・。南国に旅行した時にじっくり味わって食べる。その方が有難味があるさ。温暖化でそのうち長野でみかんができるようになったりして。福島原発の事故って農産物や海産物にも相当な被害を出したでしょ」
「ええ、そして風評被害もひどいみたいですね」
「農業や水産業で頑張っていた若者だって、くじけるよね。せっかく少し1次産業の見直しが始まった、と思ったのに。罪深いよね、原発のトラブルって」
「そうか、そういう面も確かにあるますね」
「日本の場合、資源を輸入してそれを工業製品化して付加価値をつけて輸出するってことをずっとしてきたんだけど、海外に生産拠点を移すというような動きを見ると、いままでの話と矛盾するかもしれないけれど、もう国という概念も希薄になってきたね・・・。トヨタもソニーもパナソニックももう日本の企業じゃないよね」
「国のあるべき姿って・・・、よく分からない・・・。これからはどういう国をめざしたらいいのかしら、ね」
「まあ、日本はもっと貧乏でいいよ。国土の大きさを比較すれば分かるよ。背伸びしちゃいけない。もっと身の丈にあった、そういう暮らしをするべきだね」
「いつかU1さんがいつか言ってた、清貧の暮らし」
「そう、それ。 ♪ボロは着てても 心は錦~ぃ って、ね」
「私には無理かな・・・。でももう少し、涼しく暮らす工夫はしてもいいかもしれない」
「冷えたビールを飲むとか?」
「でも、それって電気使いますよね。昔のように井戸水でスイカを冷やしておくとか、お庭に打ち水するとか・・・」
「簾をかけたり、グリーン・カーテンもいいかもね」
「昔の暮らしにヒントがありそうですね」
「そう。昔の人たちってすごいって思うことが多いよね」
以下省略