透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

丑鼻

2011-07-29 | A あれこれ



林丈二「鏝絵は鏝絵だけど、あの名前を何て言うんだろう。無ければ決めたいんですよね。ああいうところについているあれの名前を」
藤森照信「あれ、名前が無いんですよ」
赤瀬川原平「ないの?鏝絵と言ったらもっと一般的な」
藤森照信「うん。一般的には鏝絵。あそこの丸いところの名前を今つけたら、それが日本の建築の中で公用語になっていくね」

昨年、2010年の4月3日に茅野市民館で行われた座談会ではこのように語られているが(「藤森建築展のカタログ」に収録されている)、あれには名前があった・・・。

川島宙次さんは『民家のデザイン』相模書房であれを「妻飾り」としていたので、私もそう書いてきたが、長野県では「丑鼻(うしはな)」という名前があることを最近知った(*1)。 

長野県地方の左官用語 土蔵の地梁(牛梁 写真③)は壁面から少し外に出ている。この梁端をいう(写真②)。左官は壁土で塗り込め、ここに家紋や屋号のほか、火除けのまじないとして水、龍などの鏝絵をつける。「丑鼻」についてはこのように彰国社の建築大辞典にもちゃんと出ている。

日本建築の部位にはきちんと名前がついているから、あれには名前が無いという藤森さんの発言には ?だったが、これですっきりした。

②梁端

③丑(牛)梁 桁行方向に掛っている梁


*1 第5回松本安曇野住宅建築展


「日本アパッチ族」小松左京

2011-07-29 | A 読書日記



 作家・小松左京氏が亡くなった。氏の代表作である『日本沈没』は壮大な思考実験だ。

**ついこの間まで、「本土決戦」「一億玉砕」で国土も失いみんな死ぬ覚悟をしていた日本人が、戦争がなかったかのように、「世界の日本」として通用するのか、という思いが強かった。そこで、「国」を失ったかもしれない日本人を、「フィクション」の中でそのような危機にもう一度直面させてみよう、そして、日本人とは何か、日本とはどんな国なのかを、じっくり考えてみよう、という思いで、『日本沈没』を書き始めたのである。** 氏は2006年、33年の時を経て刊行された『日本沈没 第二部』のあとがきにこのように書いている。

氏の死亡を伝える新聞記事に初期の代表作として『日本アパッチ族』が載っている。手元にあるのは角川文庫(写真)。奥付をみると昭和46年再販発行となっている。

鉄を食い、体も鉄化している「アパッチ族」が日本の軍隊(このSFでは日本は再軍備している)と対決して・・・。細部は忘れた。40年ぶりに再読してみるか・・・。