透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「考現学入門」

2012-04-17 | A 読書日記


『考現学』 今和次郎/ちくま新書 

備忘録

考古学に対して考現学。非常に守備範囲の広い考現学。その中の路傍採集(これは藤森さんたちの路上観察学会につながる)は火の見櫓も対象。今さんはやはり江戸時代の喜多川守貞の仕事を意識していた(360頁)。

○東京銀座街風俗記録:洋服の色、シャツのカラー、ネクタイ、靴、帽子、髪型などの種類と比率。女性の歩き方(内マタ、直、外マタ)の調査などなど。

○郊外風俗雑景:住宅の和様比率、屋根葺き材の種類と比率、商店街の構成、看板、柵と垣根など。 

○下宿住み学生持物調べ、新家庭の品物調査。

○カケ茶碗多数(ある食堂の茶碗のどこが欠けているかの調査)、洋服の破れる個所などは今ではできない調査。

○住居内の交通図 「彼女はどの敷居を一日に何回またぐか?」という調査、住宅の間取りはいかになさねばならぬか、ということへの基礎的研究。類似の研究はいまでもある。

○机面の研究:机の上に置かれているもの(花、スタンド、本、辞書、用箋、ペン、インキ)とその配置統計。


新しい学問はその対象をよく観察することから始まる。対象をよく観察して統計的にまとめることが学問のスタート。考現学のモデルノロジオ、生物学のバイオロジオ(共にラテン名か?)に倣って火の見櫓の観察をヤグラノロジオとするか(笑)。