透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 1203

2012-04-01 | A ブックレビュー



3月の読了本レビュー

『変な給食』 『もっと変な給食』幕内秀夫/ブックマン社

トンデモ給食オンパレード。栄養士が考える給食のメニューがなぜ、こんなことになってしまうのだろう、と思いながら掲載されている給食の写真を見た。ただし給食の写真は全国から送られてきた献立表をもとに、スタッフが食材を集め、実際に調理して撮影したものだという。本の帯には**あぶない給食現場を実況中継**とあるのに、間接取材に終始しているのは残念だ。実際に各学校を訪ねて給食の写真を撮り、子どもたちや保護者、先生、そして調理員や栄養士に直接取材して欲しかったと思う。

『幽霊』 『木精』北杜夫/新潮文庫

北杜夫の作品は「マンボウもの」に代表されるユーモア作品と「幽霊」や「楡家の人々」などの純文学作品とに大別される。読者もマンボウ派と幽霊派に分かれる。「幽霊」とその続編「木精」、共に4、5回目の再読。両作品に漂う寂寥感、孤独な翳りが好きだ。また読みたいと思う日が来るだろう・・・。

『「わかる」とはどういうことか 認識の脳科学』山鳥 重/ちくま新書



高校生のとき、この本を読んで以来 脳科学に関する本を時々読んできた。難しいけれど興味深い分野だ。

『気仙沼に消えた姉を追って』生島淳/文藝春秋

気仙沼出身の生島淳さんは、お姉さんを東日本大震災で亡くされた。生島さんは震災で行方不明になったお姉さんを探すべく気仙沼を訪れる。それは故郷気仙沼を知る旅でもあり、家族のことを知る旅でもあり、お姉さんの死を受け入れる旅でもあった・・・。

『20歳の自分に受けさせたい文章講義』古賀史健/星海社新書

「どう書くか」の前に「何を書くか」が問題。でもそれを教えてくれる本など無い・・・。

星海社新書は2011年の創刊。


 


262 安曇野市豊科踏入の火の見櫓

2012-04-01 | A 火の見櫓っておもしろい

 
262

3角形の櫓、円形の見張り台、6角形の屋根

 

すっきりした見張り台まわり。屋根を支える部材の構成が分かる。3本の柱の頂部を結ぶ横架材から腕木を持ち出し、先端に滑車をつけている。これはホースを引き上げるためのもの。滑車で引き上げたホースを直下のバーに掛けて干す。


撮影日120329


 


ホキ美術館 

2012-04-01 | A あれこれ

週末東京 その7








ホキ美術館@千葉市  撮影120325

 ドーダの建築。30メートルのキャンチレバーだぞ、ドーダすごいだろ。しかも筒状に閉じていないんだぞ、ドーダすごいだろ。日建はこんなことだってできちゃうんだぞ、ドーダすごいだろ。

2枚の鋼板と中骨からなるサンドイッチ構造の「プレート」で「日」を横にしたような断面を構成している。ただし、南側はプレートが上部のみで、下はガラスになっている(写真④)。ということで、外観上筒状に閉じていない構造だが、北側の壁と間仕切壁、床と屋根の各プレートで筒状に閉じたキールを構成して、構造的に成立させている。

構造的に高度な解析をしたんだろうな、と思う。でもデザイン的な必然性を感じない。なぜ、30メートルものキャンチレバー構造にしなくてはならなかったのか、分からない・・・。そこでドーダの建築、高度な構造解析力を自慢する(だけの)建築ではないかと思った次第。もちろん、すごいことは認めた上で。

*****

ホキ美術館は写実画専門の美術館で、コレクションは300点にもなるそうだ。細密に描かれた風景や女性の絵がリニア―な展示空間に並ぶ。写実画には画家の個性が出ないのでないか、どの作家の作品も同じようなものではないのか。実際に鑑賞する前は、こう思っていた。だが、違っていた。

作家の描画テクニックが違う、美意識が違う。1番すごいと思ったのは、島村信行さんの作品だった。構図が決まっている。着ている服の質感が超リアル。光のやわらかな扱いがいい。モデルが美人。

建築に期待し、展示作品には期待していなかった。結果は逆になった。


 


あゝ 東京駅

2012-04-01 | A あれこれ

週末東京 その6

■ 1977年4月20日、外人記者クラブでの美濃部東京都知事(当時)のスピーチに対するひとりの女性特派員の質問が東京駅を保存する端緒となった、と言えるかもしれない。当時の新聞記事の切り抜きが手元にある。過去ログ

「東京駅の赤レンガは震災などをくぐり抜けてきた東京の名所。とりこわしてしまうのはどんなものか」

このような質問が出なければ、東京駅は「丸の内再開発構想」で解体され、新しい駅ビルに建て替えられてしまったかもしれないのだ。その東京駅で今秋の竣工をめざして復元工事が進められている。

東京駅にはとんがり屋根がいくつもある。なぜか・・・。西洋では天にまします神に少しでも近づきたいという願望が強くあって、それが建築デザインにも表現されている。で、西洋の建築デザインに学んだ東京駅の屋根はあちこちとんがらせてあるのだ。

この解釈が正解かどうか分からないが、とにかくあちこちとんがっている。「先端のデザイン」に注目して何枚か写真を撮った(120325)。






ガラスの超高層ビルに囲まれた東京駅。存在感が際立つ。


工事用仮囲いに掲示されている記事 撮影120325

東京駅が復元工事に至るまでには、いろんなことがあったんだな~。



繰り返しの美学な高架橋

2012-04-01 | B 繰り返しの美学

週末東京 その5





 先週末(24日、25日)東京した際、昌平橋を訪ねたのは、この繰り返しの美学な高架橋を見るためでもあった。JR中央線の神田駅と御茶ノ水駅の間にかつて万世橋駅があって、その跡地にレンガ造りのアーチが連なるこの美しい高架橋がある。

JR中央線の高架化が次第に郊外にまで進み、昔私が住んでいた国立あたりも数年前に高架化された。鉄筋コンクリート造の柱と梁でできた高架橋の味気ないこと、美しくないこと。カメラを向ける気など全く起きない。

写真の高架橋は明治末期に造られたものだという。地方にできた新幹線の駅舎は復元工事が進む東京駅に比べると全く見劣りがする、というか比ぶべくもない。駅舎、橋、校舎・・・。現代の建築物・工作物より戦前に造られたものの方がはるかに魅力的だ。

建築は文化的な営みだという考え方を捨て去った結果造られる舞台のセットのような見せかけだけの「張りぼて」が「本物」に優るわけがないのだ。


 


昌平橋の灯具

2012-04-01 | A あれこれ

週末東京 その4 


神田川に架かる昌平橋から聖橋方面を望む 撮影120324


昌平橋の親柱の灯具

 かぐや姫の歌にもなって有名な神田川は江戸時代の初期に流路が人工的に変えられている。NHKのテレビ番組「ブラタモリ」で初めてこのことを知った。神田川は本郷台地の先端を掘り割って造られた人工的な谷を流れているのだ。 

昌平橋は神田川に架かる橋のひとつ。「先端のデザイン」という観察ポイントにより、橋の親柱に設置されている灯具に注目した。とはいってもこのような灯具を観察する目を持っていないので、写真を載せるにとどめざるを得ない。

丹念に橋の歴史を紐解いて文章にする日は来るだろうか・・・。


 


旧新橋停車場のプラットホーム

2012-04-01 | B 繰り返しの美学

週末東京 その3


撮影120324

■ 再現された旧新橋停車場の駅舎とプラットホーム。説明板によると、プラットホームの全長は約150メートルもあったそうだが、再現されたのは駅舎寄りの25メートル。150メートルのプラットホームはこの長さの6倍、繊細なデザインのフレームの繰り返し。美しかっただろうな・・・。


 


今和次郎 採集講義展

2012-04-01 | A あれこれ

週末東京 その2


 今和次郎。藤森照信さんは『日本の民家』という本の背表紙にこの名前をはじめて見たとき、イマワ・ジロウと読んで先輩たちに笑われたそうだ。イマワ・ジロウではなく、コン・ワジロウという名前だ。

今和次郎は、巾広い分野にわたって一般庶民の暮らしを丹念に観察し、詳細なスケッチを描いた。東京美術学校図案科卒業というだけあって、スケッチはいきいきとした線で的確に対象を捉えている。

24日(土)の午前中、パナソニック汐留ミュージアムで開催されていたこの展覧会を観た。

会場には大変な量の作品が展示されていた。今和次郎は「考現学」の創始者として知られているが、1927年の秋、新宿の紀伊國屋書店で「しらべもの展」を開催した際、「考現学」と命名したそうだ。会場にその時の様子を撮った写真が展示されていて、そこに添付されていた説明文に書かれていた。考古学があるなら、考現学があってもいいではないか、と考えたかどうかは分からないが・・・。

『おじさん図鑑』 なかむらるみ/小学館 という本がよく売れている。おじさんたちを観察していくつかのタイプに分類し、それぞれの特徴を捉えたスケッチを載せたおもしろい本だが、今和次郎はその始祖とも言える存在(いや、江戸時代の浮世絵師にもいたか・・・)。それから藤森さんたちが始めた路上観察も今和次郎は「路傍採集」として既にやっていた。

何にも興味・関心を抱き、自分の目で細部までじっくり観察し、それを自分の手で詳細にスケッチする。これが大切だということを改めて認識した。スケッチ、しなくちゃ。




今和次郎はなんと火の見櫓も観察していた! 会場に展示されていた火の見櫓のスケッチが収録されている文庫本『考現学入門』ちくま文庫を買い求めた。 この本は読み終えてから取り上げたい。


「20歳の自分に受けさせたい文章講義」

2012-04-01 | A 読書日記

週末東京 その1



 「何」を書くか、「どう」書くか。

「何」を書くか。相手に伝えたいこと、主張したいことを書く。これは技術的な問題ではないから、人から教えてもらうことはできない。でもこれが一番重要なことだろう。

「どう」書くか。文章の書き方の指南書は多い。先週末(3月24日)上京する際、電車の中で読んだ『20歳の自分に受けさせたい文章講義』古賀史健/星海社新書も「書く技術」に関する本。著者の古賀さんがプロのライターとして実践してきた文章の書き方を伝授するという内容。

説得力のある、わかりやすい文章を書くにはどうすればいいか。本書を読んで、なるほどと思ったことを以下にまとめておく。

○映画やテレビドラマなどの映像表現を参考にした序論、本論、結論という構成。俯瞰的な遠景による導入、序論。半径数メートルの映像、近景による本論。そして再びカメラを退いた遠景、つまり客観的な視点に立った結論。

先日観た「戦火の馬」は確かにイギリスの緑の大地の俯瞰的な遠景に始まり、紅色に染まる夕景の大地に主人公の家族が立つシーンで終わった。オーソドックスな表現だった。あのような構成を意識するということか。でもいきなり近景からスタートする映画だってあるよな・・・。サスペンスは、唐突に近景で始まることが多い。要は伝えたい内容に相応しい表現法を使えばいいのだ、と理解しておこう。

○マトリョーシカ人形のような論理構造。「主張」、「理由、「事実」 文章の3要素を常に意識する。 3層構造の文章。

○理路整然としすぎた文章には、付け入るすきがない。読者が議論のテーブルに参加できるように「寄り道」をする。

適度な冗長性も文章には必要ということなのかな。このことは文章の性格、どんな文章なのかにもよるだろう・・・。

○「何を書くか?」ではなく「何を書かないか?」 野菜ジュースとオレンジジュース。野菜ジュースはニンジンなのか、リンゴなのか、セロリなのか、何を飲んでいるのか分からない。伝わる文章はオレンジジュース。本当に書きたいことは何か、自己分析の作業が必要だ。

でもオレンジのことだけでなくリンゴにも触れたいし、セロリのことも同時に書きたい・・・。発散型人間には難しいなぁ。