『春の数えかた』日高敏隆/新潮文庫 平成17年2月発行
■ 今朝(8日の朝)7時頃、自宅の外壁に掛けてある温度計を見ると氷点下3度だった。庭には霜柱が立っていた。鄙里の朝はまだ寒い、東京の桜は見ごろだというのに・・・。
でも、山際の木々の中でウグイスが鳴いていた。畑地の上空でヒバリが鳴いていた。春の到来を祝福するかのように鳴いていた。
どうやって小鳥たちは春を知るのだろう・・・。
この疑問の答えがこのエッセイの中にある。**小鳥が日長つまり一日のうちの昼の長さで季節を知ることは、半世紀以上前に実験的に明らかにされた。(中略)冬至を過ぎ、一月、二月と暦が進んでいくにつれて、日は長くなっていく。これもだれでも知っていることだ。小鳥たちもそれがわかっている。日の長さは季節の移り変わりのまぎれもない徴(しる)しなのである。**(219、220頁)
日長は気温とは関係ない。鳥のように恒温動物ならよいが、虫のような変温動物たちは、困るはずだ。虫たちは温度の積算をしているということもこのエッセイが教えてくれる。それもただの積算ではないという。ある一定温度(発育限界温度)より低い、極端に寒い日には、その温度を数えないのだそうだ。
サクラも積算という数学的手法によって春の到来を知るということは以前ラジオ番組(だったかと思う)で知った。このエッセイには**サクラが花の芽を作るのは、昨年の夏である。このときにもう、来年の花が作られはじめているのである。サクラの花は暑い夏に作られて、寒いときにふくらみ、暖かくなって開くのだ。**(34頁)とある。 サクラの用意周到な開花作戦!
松本城公園のサクラはまだつぼみ。 でも ♪ 咲いて散るよりつぼみでいたい などと演歌なことを考えているわけではあるまい・・・。