『道教の世界』菊池章太/講談社選書メチエ
■ 本書を読了したが、道教の世界へ入り込むことができたとは到底思えない・・・。ただ道教の世界が実に広くそして深いことだけは分かった。**道教にたずさわる研究者の領域はじつに多様である。中国哲学、宗教学、東洋史、文化人類学、民俗学、中国文学、演劇史、東洋医学を専攻する人もいる。**(178頁) 本書にもこのような記述がある。
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腹の虫がおさまらない、虫のいどころが悪かった、虫が知らせる、浮気の虫、疳(かん)の虫。この「虫」って一体何だろう・・・。これは道教の三尸(さんし)、人の体なかにいるといわれる鬼神の類なのかもしれない。
**この虫は人が早く死ぬのを望んでいる。死ねば思いのままに浮遊して供物をあさることができる。そこで干支の庚申の日になると体から出て、人の寿命をつかさどる神様のところへ行く。その人が犯した罪科(つみとが)を告げ口しに行く。**(125頁) 長生きしたいなら庚申の日に眠ってはいけない。三尸が体から出られないように見張りをする。これを道教では守庚申と呼ぶ。やがて庚申信仰は仏教の中に取り入れられて、日本では青面金剛が祀られるようになる。この辺りの事情が本書の第五章 民俗/医療/日本文化 に詳しい。このことについては既に知っていたから、本書で復習することになった。
**道教は体系としては日本に伝わっていない。しかし民俗のなかには道教とも中国とも意識されずに入り込んでいるものもある。むしろそうしたところに道教という宗教の本質にかかわるものがあると思う。**(177頁)
庚申塔 長野県東筑摩郡朝日村にて
路傍に祀られている庚申塔、身近な石塔の背景には宗教の長い長い歴史があり、しかもアジアにまで繋がっている・・・。本書を読んでこのような感慨にひたることになった。このことだけで良しとしよう・・・。