透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

デザインの基本的な条件

2012-04-21 | A あれこれ



 生意気にも「デザインの基本的な条件」などというタイトルをつけてしまった。

ある建築材料のカタログに上のようなマークが表示されていた。その材料はリサイクル製品として長野、茨城、福岡の3県に認定されていて、3県の各マークはそのことを示している。

茨城県のマークはリサイクルのデザインとしてありふれてはいるが明快で分かりやすい。福岡県のマークはF(福岡のローマ字表記の頭文字)をデザインした立体的な円環でリサイクルを示している。

この2つと比べると、長野県のマークは「リサイクル感」に乏しい。信州リサイクル認定製品という文字がなければ、このマークがリサイクルに関するものであることが分かるかどうか。10人に聞いて10人とも正解するだろうか。おそらく否、だろう。勤務先で試してみたい。

山から伐り出した長野県産木材の利用促進のマーク? こんな答えをしたくもなる。デザイナーには失礼だが、矢印をくるっと描けば、はいリサイクルゥ~ といった安易な考えがなかっただろうか・・・。

長野県のリサイクルマークは、私には一方向の流れに見えてしまう。JISマークと同様の表現だ。リサイクルとリユース、この違いをも考慮したデザインは茨城。

マークのデザイン、いやマークに限ったことではない。デザインには伝えるべき情報が当然ある。その内容が明確に伝わらなくてはならない。そしてデザインは美しくなくてはならない。本稿で書きたいのはこのことだ。

以下、具体例を示す(以前書いた記事に手を加えて再掲する)。


某メーカーのカタログより

以前はドアに握り玉をつけることが多かったが、最近ではレバーハンドルが圧倒的に多くなった。確認するまでもないことだが、上の写真のレバーハンドルは下げる(時計回りに回転させる)という操作をする。ふたつを比較した場合、どちらがこの操作が分かりやすいか。どちらがこのことをより明確に伝えるデザインか。

回転させるという操作が視覚的に伝わってくるのは右だ。左はレバーハンドルが初めてという人なら手前に引いてしまうかもしれない。

繰り返すが、デザインには伝えるべき内容(情報)が明確に分かりやすく表現されていなければならない。小さな子供、ハンディを持った人、お年寄り、誰にも分かりやすいこと、これがデザインの基本的な条件だ。このことがデザインの世界で常識になるのはまだまだ先のことのようだ、少なくともこの国では。

こんなことを書かずに老人力の付いた自分の理解力の無さを嘆くべきか・・・・。