■ 「君を乗せる舟」を読み終えた。久々のハイペース。
表題作「君を乗せる舟」は収録されている6編の最後。北町奉行所定廻り同心の不破友之進の息子・龍之進が両国橋の欄干にもたれて水の流れを見つめていた。初恋の人が真っ白な花嫁衣装で舟に乗り、嫁入りする様子を見ていたのだった。偶々通りがかった伊三次に声を掛けられて、**「わたしは舟になりたいと思いました」**(318頁)と答える。ああ、いいなあ、この純情。**「いいですねえ、そいつは。惚れた女を乗せる舟になりてェなんざ、坊っちゃんでなけりゃ、言えねェ台詞だ」(中略)「どうです、うちへ寄りやせんか。飯でも一緒に喰いやしょう」**(319、20頁) と優しい伊三次。
「おんころころ・・・・・・」で伊三次の息子・伊与太が疱瘡に罹る。
**伊与太が死ぬ?あどけない笑顔が消える?
そんな馬鹿な。そんなことはある訳がない。**(185頁) 子煩悩な伊三次。こちらもどうなるのかハラハラしながら読み進んだ。この物語には明暦の大火が出てきて、原因とされる「振袖」のことが語られる。この大火の死者数には諸説あるが、ここではおよそ十一万人となっていた。
おんころころ せんだり まとうぎ そわか タイトルは伊三次が寺で祈った経文から。
このシリーズは変化に富んでいて今後の展開が楽しみだ。毎日読まなくては・・・。