透明タペストリー

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「空が青いから白をえらんだのです」

2017-01-21 | A 読書日記


『空が青いから白をえらんだのです』寮 美千子編/新潮文庫

 前稿に書いたようにラジオ深夜便の「明日へのことば」で奈良少年刑務所の詩の教室の様子や受講生が書いた詩が紹介された。受講生が書いた詩を寮 美千子さんが選んで本にまとめたことを知り、早速夕方丸善に出かけて買い求めた。運よく1冊だけあった。

本のタイトルになった「くも」という作品が最初に載っている。

空が青いから白をえらんだのです たったこれだけの詩だけれど、少年の母に対する思慕の情が伝わってきて涙してしまう。

「ぼくは、おかあさんを知りません。でも、この詩を読んで、空を見たら、ぼくもおかあさんに会えるような気がしました」(15頁) 今朝のラジオ番組で紹介された教室の仲間の語った言葉がこの本にも載っている。この感想を言った子はそのままおいおいと泣きだしたそうだ。

すきな色

ぼくのすきな色は
青色です
つぎにすきな色は
赤色です

この詩(18頁)もラジオ番組で紹介された。この詩について仲間が語った感想も印象的だった。

「ぼくは、Bくんの好きな色を、一つだけじゃなくて二つ聞けてよかったです」(19頁)こんなにも優しく思いやりのある感想を言う子がいったいどんな罪を犯したというのだろう・・・。


 


「くも」 明日へのことば  (再掲)

2017-01-21 | A あれこれ

■ NHKラジオの深夜番組「ラジオ深夜便」、この番組の4時過ぎからのコーナー「明日へのことば」を今朝(21日)聞きました。 


心をほぐす詩の授業 奈良少年刑務所での取り組み」というタイトルで作家で詩人の寮 美千子さんが番組のアンカー・中村 宏さんのインタビューに答えている様子が放送されました。

奈良少年刑務所の受刑者の少年たちに詩の授業をしたときの様子が語られ、彼らがつくった詩が紹介されました。何編か紹介された詩の中で「くも」という作品が印象に残りました。忘れないように枕もとに置いているメモ帳にメモしました。

くも

空が青いから白をえらんだのです

この詩を書いた少年は普段はあまりものを言わない子でしたが、詩を朗読してから、次のようなことを語り出したそうです。

今年でおかあさんの七回忌です。おかあさんは病院で「つらいことがあったら、空を見て。そこにわたしがいるから」とぼくに言ってくれました。おかあさんの最期の言葉でした。おかあさんは少年に分かるように、少年に見えるように白を選んだのでした。

おとうさんが体の弱いおかあさんをいつも殴っていたそうです。でも少年はまだ小さかったからおかあさんを助けてあげることができなかった・・・。この少年にはつらい過去があったのです。

空が青いから白をえらんだのです

この短い詩の意味、背景を知って、涙が出ました。重い罪を犯した少年たちは心を閉ざしています。でも詩を朗読した後、他の子が感想を言ってくれる・・・。自分の気持ちを受け止めてくれる人がいる。このことに気がついた子どもたちは固く閉ざしていた心の扉を開いて語り出すのです。

授業から詩の会のようになっていったそうです。授業を受けて、激しいチック症状がピタッと止まった子もいたそうです。言葉の力ってすごい、改めて思いました。

印象に残る番組でした。

寮 美千子さんは彼らの詩を本にまとめたとのことで、調べてみて新潮文庫に収録されていることが分かりました。 

ぜひ読んでみたいと思います。松本駅近くの丸善に出かけて探してみます。


◎ 奈良少年刑務所(旧奈良監獄)は明治末期に建設されたレンガ造の建築で重要文化財に指定されています。