透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「峠しぐれ」葉室麟

2017-12-10 | A 読書日記



■ 葉室麟の時代小説『峠しぐれ』双葉文庫を読み終えて、文庫のこのカバーは映画であればラスト、エンドロールが流れ出す頃のシーンを描いたものだと分かった。**しぐれに濡れながら、峠を上ってくる半平を見つめる志乃の目に涙があふれた。**(377頁)

岡野藩で隣国との境にある峠で茶店を営む半平と女房の志乃。小柄で寡黙な半平、目鼻立ちがととのった美人の志乃、歳は三十五、六。ふたりにはそれぞれ辛い過去があるが、それは読み進むにつれて次第に明らかになってくる。

峠の茶店にはいろんな事情を抱えた旅人がやってくる。旅人たちとの関わりの中から、次第に「事件」に巻き込まれていくふたり。

小説はいろんな読み方ができるが、この作品は母娘の絆の物語と括ってもよいだろう。

**志乃の顔を見た千春は涙ぐんだ目を向けて、
「母上、この見ず知らずの方がわたしを命がけで助けてくださいました」
志乃はうなずいて、お仙の傍に座り、手をつかえ、頭を下げた。
「お仙さん、ありがとうございます。このご恩は生涯忘れません」
お仙はうっすらと目を開けた。
「なに、盗賊が気まぐれでしたことさ。恩に着なくてもいいけど、ゆりのことは約束したからね、頼んだよ」
「わかっております。必ず、ゆりさんをお助けします」**(372頁)

志乃と娘の千春、盗賊お仙と娘のゆり。志乃は内山理名、千春は誰だろう・・・、お仙は真木よう子、ゆりは卓球選手の石川佳純をイメージした。若い女優は知らないなぁ。